「昭和おじさん向け」2023年冬アニメ・3選 「昔のほうが良かった」とは言わせない?
マグミクス / 2023年2月17日 17時10分
![「昭和おじさん向け」2023年冬アニメ・3選 「昔のほうが良かった」とは言わせない?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_138448_0-small.jpg)
■選り抜き、原作に忠実、大胆な再構成……三者三様の再アニメ化3選
10代の多感な時期に浴びたコンテンツが、今の自分の原点になっているという実感は、人生を歩き続ける原動力になります。『うる星やつら』『BASTARD!!-暗黒の破壊神』『トライガン』の3タイトルは、いずれも昭和の後期から平成初期にかけてマンガの歴史に刻まれた名作で、影響を受けた人も多いでしょう。令和の今、若かりし頃と向き合うきっかけをくれるリメイク3作品を考察します。
●『うる星やつら』
小学館創業100周年を記念した『うる星やつら』の再アニメ化は、選び抜かれた原作エピソードを4クールに凝縮して放送中されている (C)高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会
アップテンポで楽しい曲調、ラブコメ基調の歌詞、ドタバタギャグを予感させるアニメーション、ドギツいくらいに鮮烈な色彩……“原作の良質なコンセプトムービー”それが令和版『うる星やつら』のOPとEDに抱いた印象です。
1978年に「週刊少年サンデー」で連載開始した『うる星やつら』は、3年後からアニメ版が放映されています。当時のアニメ版は原作を自由に解釈して育て上げた、オリジナル要素が強めの内容でした。今回のリメイクでは、素材の味をそのままに極上の腕前で料理している、忠実な作りになっています。
キャラクターを軸にエピソード毎をまとめ直して、わかりやすさを重視している構成は、初見でも入りやすい見事なアレンジです。また、ラムが諸星あたるにキスをしたときの「ちゅ~~」や電撃の「ビリビリ」、藤波竜之介が殴った時の「ばきっ」など、マンガの描き文字が、キャラクターの声で愛嬌たっぷりに読み上げられる演出は『うる星やつら』らしいお茶目さで、アニメならではの表現で肉付けされているのです。
昔の名作を今の作画クオリティで、現代を代表する声優の演技で映像化する、それだけでも嬉しくなります。友引町から宇宙まで幅広く暴れ回るラムたちは、本当に変わらない『うる星やつら』のままですね。
●『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』
「ダーク・シュナイダー…本当に復活しやがった!」作中のセリフを借りるなら、当時からの読者としてはまさにこんな気分です。ダーク・シュナイダーは、かつて最強の邪悪な魔法使いとして君臨するも、15年の時を経て封印から解き放たれた俺様主人公です。けれども作品まで10年以上も休載した状態で令和に蘇るなど、一体誰が予想し得たでしょうか。
「週刊少年ジャンプ」の誌面をエロス&バイオレンスでブッちぎった往年のダークファンタジー『BASTARD!!』がコンプライアンスの厳しい令和にそのまま復活し、原作にあるアクの強さをそのまま忠実に映像化されています。
主演の谷山紀章さんが連発するキメッキメの裏声は、まさにダーク・シュナイダーにピッタリです。さらに彫像のような裸体や露出度の高い美少女たち、背景・クリーチャーに到るまで高密度に描き込まれた造形美も、原作の絵柄をハイレベルに映像化した姿そのものに仕上がっているのです。
ピンチからの圧勝を繰り返す、王道全開の大迫力ファンタジーバトル展開も健在。もちろん、服だけを溶かすスライムの場面だって映像化されています。顧客が本当に必要だったものを「これが欲しかったんだろう?」と全部お出ししてくる現代の職人たちの仕事ぶりたるや……感服です!
1998年放送のTVアニメ、2010年の劇場版アニメに続いて3度目の映像化となる『TRIGUN STAMPEDE』 (C)2023 内藤泰弘・少年画報社/「TRIGUN STAMPEDE」製作委員会
●『TRIGUN STAMPEDE』
25年前にアニメ化した際は連載中だったためにできなかったことを、今度こそやり遂げるためのリメイクだ───筆者は『TRIGUN STAMPEDE』を見ながら、そう確信しました。
2話の冒頭でラジオから流れる「地獄のようなこの星で生き残った俺たちは、果たして幸運だったのか」水すらも貴重な灼熱の星・ノーマンズランドで、懸賞金600万$$を懸けられた賞金首“ヴァッシュ・ザ・スタンピード”の活躍を描くSFアクションです。
ちなみに1998年版のTVアニメでヴァッシュを演じた小野坂昌也さんが、このラジオDJの声をあてているのも、旧ファンには嬉しいリップサービスです。
映像がフル3DCG、ヴァッシュが移民宇宙船団に乗っていた子供であることが1話から明かされるストーリーの再構成など、大胆な捉え直しは、それでも作品の本質を外しません。
莫大な懸賞金を狙って、善良な市民である妊婦のローザはヴァッシュに銃を突きつけて「大人だけなら幾らでも諦めたさ」と言い放ちます。悪党のネブラスカも、他人には暴力もいとわない一方で、事あるごとに「息子が馬鹿になったらどうすんだ!」と口にします。
この世界の住人たちは酷く乾いているにもかかわらず、ヴァッシュは不殺の信念を貫いて、悪人であっても命を救おうとします。そんな殺伐とした世界で“希望”を求める作品のテーマが、原作の終盤には詰まっています。原作完結後の再アニメ化ということで、原作のテーマがどのように映像化されるのかが今から楽しみです。
* * *
新作で昔の印象に負けないものを作るためには、丁寧さとセンスの問われる作りが求められます。それは、キャラも展開も大胆に再構成した『TRIGUN STAMPEDE』だけのことではありません。オリジナルに忠実ながらも時代に逆らった『BASTARD!!』や、ひと味だけ変えてきた『うる星やつら』も同じです。好きな作品ともう一度過ごせる時間にどっぷりと浸かり、新しく味わい直してみるのも一興かもしれません。
(かーずSP)
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