『ダイレンジャー』放送から30年 「善悪を超越した」最強キャラ、前代未聞の最終回
マグミクス / 2023年2月19日 6時10分
![『ダイレンジャー』放送から30年 「善悪を超越した」最強キャラ、前代未聞の最終回](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_138709_0-small.jpg)
■当時の格ゲーブームから生まれた新戦隊
本日2月19日は、1993年にスーパー戦隊シリーズ第17作となる『五星戦隊ダイレンジャー』が放送開始した日。今年で放送30年目になります。
『ダイレンジャー』のモチーフは「中国拳法」でした。これには当時の『ストリートファイターII』をはじめとした「格闘ゲーム」が、子供から大人まで人気だったことが大きく影響しています。前年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』がRPG(ロールプレイングゲーム)からスタートして「恐竜」をモチーフにしたのと同様で、当時の格ゲーブームに合わせたモチーフでした。
この中国拳法から発展してオリエンタル要素が加えられるようになり、『水滸伝』から「○○星」といった呼び名、『三国志』からキャラクターの名前を引用するといった部分を組み込みます。これには前作『ジュウレンジャー』が西洋神話から着想を得たことと、異なる印象を与える役目もあったようです。
このためか、放送前に噂になったタイトル名に『中華戦隊チャイナマン』というものがありました。筆者も当時聞いたことがあります。これはどうやら情報流出を調査するために意図的に作られた仮名だったそうで、本来の仮タイトルは別にありました。ちなみにこの仮名は後に『非公認戦隊アキバレンジャー シーズン痛』(2013年)でパロディとして使われています。
そういったオリエンタル要素から、オープニングで戦隊メンバー全員が自転車に乗る映像が使われていました。これは当時の中国の一般的な移動手段のイメージが自転車だったことによるものです。そのため、現在ではわかりづらいオマージュになったと言えるでしょう。
わかりづらいと言えば、本作は『バトルフィーバーJ』(1979年)より始まるスーパー戦隊シリーズの15作品記念作と銘打たれてスタートしました。それは当時、『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)と『ジャッカー電撃隊』(1977年)は正式にシリーズには含まれなかったからです。
しかし、本作放映中に『ゴレンジャー』と『ジャッカー』を含んだ「超世紀全戦隊」というシリーズ名が生まれ、後の『超力戦隊オーレンジャー』(1995年)の劇場版において「戦隊シリーズ20周年記念」と明記されて以降、現在のようなカウント方式となりました。
本作の人気は高く、オモチャ売り上げこそ当時の戦隊では一位だった前作『ジュウレンジャー』には及ばなかったものの、関連商品すべての売り上げでは前年の120%以上を記録しています。
それほどの人気を得た『ダイレンジャー』。その魅力は何と言っても、硬軟双方に印象的なドラマがあったからだと考えられるでしょう。感動的なシリアスなドラマと、シュールな魅力あふれるコメディタッチの融合。現在でも十分に通じる作品でした。
■当時は前代未聞の最終回とは?
『五星戦隊ダイレンジャー』DVD第1巻(TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D))
シリーズ15周年記念と位置付けられていたことから、本作にかけるスタッフの意気込みは強いものだったと言われています。
前述したように中国拳法をベースにしているため、アクションもそれに合わせたものになりました。そのため武器は定番の剣と銃だけでなく、ロッドやそれに付けるアタッチメント「ヤイバー」といった武器も装備しています。
戦隊で定番の名乗りポーズにも中国拳法の型を取り入れており、歴代でもかなり難解な動きになりました。ちなみにこの名乗りポーズを終盤で変身前の役者陣が演じたこともあり、後の戦隊では定番の流れとなっています。
こういった激しいアクションも魅力的ですが、それだけでなくギャグも取り入れた見せ方にも隙がありません。前述したロッドで戦闘員の股間を殴打することで知られるシシレンジャーの使った必殺技「天幻星・霧隠れ」は、総武線や自転車の幻で相手を攻撃するシュールな技でした。他にもキバレンジャーの「吼新星・乱れやまびこ」も幻のシュールさで、アクションシーンに一味加えています。
このキバレンジャーは、前年のドラゴンレンジャーに続いて追加戦士として加わった、戦隊史上初となる小学生が変身するメンバーでした。ちなみに後のシリーズでも小学生が戦隊メンバーに加わったことがありますが、設定と役者の実年齢共に、キバレンジャーになる吼新星・コウが最年少記録を保持しています。
ドラマを重視した本作の中盤以降は、メインキャラそれぞれに因縁のある相手を用意し、そのキャラを主に担当する脚本家が執筆するという方法を取っていました。これにより各キャラの深掘りができ、多くのドラマが生まれています。
この他にもこれまでになかったパターンとして、善悪を超越した存在である大神龍の登場により、ダイレンジャーと敵組織ゴーマとの一時的な休戦という一風変わった展開がありました。この大神龍は戦隊シリーズ全体から見ても異質な存在で、並び立つ存在がいないという点からシリーズ最強と位置付ける人も少なくありません。
また、その最終回は前代未聞の展開でした。詳細な話はネタバレとなるので割愛しますが、ダイレンジャーとゴーマの戦いは一応の決着はついたものの、50年後に孫の代が戦うというものです。善と悪は永遠に戦い続ける運命。一見するとギャグにも思える深いテーマを描いた最終回でした。
この最終回があったことから、当時のファンの間からは「50年後には『五星戦隊ダイレンジャー2』だ」と言われたこともあります。その50年後も半分以上過ぎて残り21年。はたして『ダイレンジャー2』が本当に始まるのか気になるところです。
(加々美利治)
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