『仮面ライダーV3』放送開始から50年 子供たちが共感した、ライダーマンの「弱さ」
マグミクス / 2023年2月17日 6時10分
![『仮面ライダーV3』放送開始から50年 子供たちが共感した、ライダーマンの「弱さ」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_138810_0-small.jpg)
■シリーズ人気を決定づけた『仮面ライダーV3』
「変身、ブイスリャー!」
宮内洋さんのそんな叫び声が忘れられないのが、特撮ドラマ『仮面ライダーV3』です。変身ブームを呼んだ『仮面ライダー』の後続番組として、1973年2月17日から1974年2月9日まで全52話がテレビ放映されました。
当時26歳だった宮内さんは「東映」所属の俳優だったこともあり、東映制作のアクション特撮ドラマの主人公に抜てきされ、はりきっている様子が画面ごしに伝わってきました。普通なら「変身、ブイスリー!」と言うはずの変身シーンですが、録音スタッフと相談した上で響きのよさから「ブイスリャー!」になったそうです。
仮面ライダーが現在まで続く人気シリーズになることを決定づけた『仮面ライダーV3』の放送50周年を記念し、宮内さんが演じた風見志郎ことV3の奮闘を振り返ります。
■社会問題にもなった「ライダースナック」
黒いイメージの強かった仮面ライダー1号と2号に比べ、仮面ライダーV3は鮮やかな赤と緑が基調となり、ド派手な印象がありました。ライダー1号の「技」とライダー2号の「力」をあわせ持った、新しいライダーです。バージョンアップした新ヒーローに、テレビの前の子供たちはワクワクが止まりませんでした。
第1話と第2話には、ライダー1号こと本郷猛(藤岡弘)、ライダー2号こと一文字隼人(佐々木剛)も出演し、V3誕生に花を添えました。悪の組織「デストロン」に両親と妹を惨殺されたという悲しみにV3は耐えながら、「デストロン」が放つ改造怪人たちと戦います。
宮内さんのヒーローらしいルックスと体を張ったアクションシーンで、『仮面ライダーV3』は『仮面ライダー』に匹敵する人気を博します。バイクを走らせながら変身ポーズを決めるなど、スタントマンなしでのアクションに、宮内さんは次々と挑みました。
当時の子供たちの間では、カルビー製菓が発売する「仮面ライダースナック」についている「仮面ライダーカード」を集めることが大流行していました。カードだけ抜き取って、スナックは食べずに公園などに捨てられることも多く、社会問題になっていました。
パッケージを変えた「V3スナック」も発売されたのですが、残念なことに『仮面ライダーV3』放映中の1973年7月で販売終了となってしまいました。サクラの花の形をした、あの甘いスナックの味が懐かしく感じられます。
■V3とは異なる、親近感を感じさせたライダーマン
V3とともに活躍したライダーマンを立体化した、「S.H.フィギュアーツ ライダーマン」(BANDAI SPIRITS)
シリーズのクライマックスを大いに盛り上げたのは、第43話から第51話に登場した「ライダーマン」です。デストロンの大幹部「ヨロイ元帥」の陰謀によって、右手を失った天才科学者・結城丈二(山口豪久)の変身した姿です。ヨロイ元帥を憎んでいるものの、長年の上司であったデストロン首領への未練が残っているという複雑なキャラクターでした。
マスクを被っていても、口とあごが露出しているのが「ライダーマン」の特徴でした。脳以外は全身が改造人間であるV3に対し、ライダーマンは生身の人間が強化服を着用しているという設定です。V3に比べると、弱々しい感じがしました。
実際にデストロンの怪人と戦っても、ライダーマンは勝つことができません。義手となった右手に取り付けたアタッチメントを取り替え、もっぱらロープアームを使って人質を救出することが多かったように思います。ヨロイ元帥への復讐という私怨から戦っているため、V3の足を引っ張ることも少なくありませんでした。
でも、ライダーマンの「強くない」ところに子供たちは魅了されました。V3みたいな完全無欠の正義のヒーローにはなれなくても、がんばればライダーマンにはなれるんじゃないのか。そんな手が届きそうな親近感が、ライダーマンにはあったのです。「弱さ」や「人間くささ」が魅力になっているヒーローは、とても新鮮に思えました。
■対照的だったふたりのヒーロー
V3役の宮内洋さんとライダーマン役の山口豪久さんは、劇中では当初は対立する関係だったことから、撮影現場ではお互いに目を合わせないようにしていたそうです。おふたりのプロ意識を感じさせます。
やがてV3とライダーマンは共闘し、デストロンと戦うことになります。ストーリーの展開につれ、宮内さんと山口さんも仲を深めていったそうです。
宮内さんは「仮面ライダーV3』終了後、同じく石ノ森章太郎原作の特撮ドラマ『秘密戦隊ゴレンジャー』や『怪傑ズバット』で活躍します。ファンの子供たちがいる前では、タバコを吸ったり、立ち小便をしないなど、正義のヒーローのイメージを大切にしていることで知られています。山口さんも1974年に『電人ザボーガー』に主演しますが、残念なことに1986年に亡くなっています。41歳の若さでした。
最終回を翌週に控えた『仮面ライダーV3』第51話で、V3がライダーマンに捧げた言葉「君は英雄だ。おれは君にライダー4号の名を送るぞ」が、今でも感慨深く思い出されます。
完璧なヒーローだったV3と、人間としての弱さを抱えながら戦い続けたライダーマン。対照的なふたりのヒーローがいたことで、『仮面ライダーV3』は忘れられないシリーズになったように思います。
(長野辰次)
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