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最初は全然違う? 人気マンガの構想段階のウラ話 「今となっては読んでみたい」

マグミクス / 2023年2月22日 17時10分

最初は全然違う? 人気マンガの構想段階のウラ話 「今となっては読んでみたい」

■全く違うテイストの作品になっていたかも

 ヒットした数々のマンガの背景には、作者の生み出したアイデアに編集担当のアドバイスが加わっていることも少なくありません。

 たとえば『鬼滅の刃』の初代担当編集者の片山達彦さんは、同作の代名詞とも言える「呼吸」の名称に関して、吾峠呼世晴先生がもともと決めていた「鱗滝式呼吸術」を「ダサい」と一蹴し、その結果、「○○の呼吸 〇の型」という現在の形が生まれています。また、片山さんは連載10話も行かないうちに担当変更となりますが、その前に吾峠呼世晴先生とその時点での『鬼滅の刃』の全体の大まかな流れや登場人物を、話し合って決めていました。

 このことは、公式ファンブック「鬼殺隊見聞録・弐」に収録されている描き下ろしマンガ『鬼滅の土台』で明かされ、『鬼滅』ファンの驚きを呼んでいます。もし片山さんがいなければ、『鬼滅の刃』は大きく違う作品になっていたかもしれません。

 このほかにも、ヒットしたマンガには、初期のアイデアとして全く異なる設定やストーリーが作られていたケースも見られます。今回は、構想段階のままなら、全く違うものになっていたかもしれない作品の一部を紹介します。

●新連載のアイデアは「将棋かボクシング」の2択だった『3月のライオン』

 将棋マンガ『3月のライオン』(作:羽海野チカ)は、2007年より「ヤングアニマル」で連載がスタートし、アニメ化や実写化も果たしました。作者の羽海野先生はそれまで、美大を舞台にした恋愛マンガ『ハチミツとクローバー』を描いていたこともあり、新作が青年誌である「ヤングアニマル」で連載されると発表された際は、「一気に掲載誌の雰囲気が変わり過ぎじゃない?」「一体どんな作品になるんだろう」と驚く声も少なくありませんでした。

『3月のライオン』は、若くしてプロ棋士となった孤独な少年・桐山零が偶然出会った3姉妹と交流を深めていく物語ですが、連載を立ち上げた編集者・友田亮氏は、展示即売会「COMITIA」のインタビューで、当初は「全く異なるジャンル」も羽海野先生の連載候補に上がっていたことを明かしています。

『ハチミツとクローバー』の連載が終盤に差し掛かった頃、次に何を描けばいいのか悩んでいた羽海野先生に対し、友田氏は「羽海野先生は一対一の勝負モノを描くといい」という思いから「将棋かボクシング」と答えたといいます。そこで将棋に興味を持った羽海野先生との間で、『3月のライオン』の雛形となるアイデアが生まれ、連載に至りました。ちなみに「将棋が強くて孤独な少年の物語」という案は、友田氏が出したとのことです。

『ハチミツとクローバー』では、ヒロイン・はぐみが全身全霊で創作活動に打ち込むシーンもありましたが、そんな「戦い」を描く才能から「将棋かボクシング」のアイデアにつながったのかもしれません。もしも羽海野先生がボクシングの方を選んでいたら、全く別の描いたマンガになっていたでしょうが、今となってはそちらも気になります。

■曾祖父がいなければ生まれなかった作品?

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●先祖の活躍が誕生のきっかけ? 『ゴールデンカムイ』

 昨年22年に完結した後も、アニメの放送や実写映画化の予定で話題になっている『ゴールデンカムイ』は、作者の野田サトル先生がさまざまな想いを込めて描いたマンガです。「コミックナタリー」での映画評論家・町山智浩さんとの対談によると、前作のアイスホッケーマンガ『スピナマラダ!』が終了した後、次回作の構想を考えていた野田先生が「『次は猟師の話を描かないか』と提案されて、熊谷達也さんの『銀狼王』という小説を渡された」ことが『ゴールデンカムイ』誕生のきっかけだったとのこと。

『銀狼王』の主人公の名前は二瓶で、偶然にも『スピナマラダ!』の鬼のアイスホッケー部監督・二瓶利光と同じ名字でした。運命を感じた野田先生は二瓶監督のキャラデザをそのまま受け継いだ初期の名物キャラ、猟師の刺青囚人・二瓶鉄造を生み出しています。

 野田先生は最初はこの二瓶を主人公にした、北海道が舞台の猟師グルメマンガの構想も考えていたそうです。しかし、『ゴールデンカムイ公式ファンブック 探究者たちの記録』によると、野田先生は連載の準備で以前から興味を持っていた曽祖父・杉本佐一氏のことを詳しく調べます。もともと屯田兵だった彼が日露戦争では第七師団・歩兵27連隊乗馬隊、いわゆる「北鎮部隊」に所属し、二〇三高地の戦い、奉天会戦にも参加していました。そしてある時、杉本佐一氏は所属部隊がロシア軍に囲まれた際に援軍を呼ぶために奔走して、敵に囲まれた500人近くの仲間の命を救ったそうです。

『ゴールデンカムイ』の主人公・杉元佐一に関しては、野田先生は「あくまで名前を借りただけ」「曽祖父とは別人と考えている」と語っています。しかし、曽祖父の存在が、日露戦争帰りの若者を主人公にするアイデアにつながったのは確かなようです。杉本佐一氏の実際の日露戦争での活躍がなければ、今の人気主人公「不死身の杉元」の勇姿もなく、別ジャンルの狩猟グルメのみのマンガになっていたと考えると、なかなか想像しづらいものがあります。

 その後、野田先生はグルメと狩猟から始まったアイデアにアイヌや埋蔵金伝説、土方歳三や脱獄王、さまざまな変態たちなどいろんな要素を足していき、綿密な取材に基づいたうえで、現在の「和風闇鍋ウエスタン」の『ゴールデンカムイ』が生まれました。

●担当編集の一言で、妖怪退治から新撰組へ……『銀魂』

 TVアニメ化、実写化どちらも成功し、連載終了後も根強いファンのいるマンガ『銀魂』(作:空知英秋)も、もともとはさまざまな変遷を経て連載に至った作品です。

 空知先生は『銀魂』を連載する前、呪い屋の女子高生と魔人を描いた読み切り『しろくろ』を発表していました。『しろくろ』が収録された『銀魂』2巻のコメントによれば、『しろくろ』をもとにした連載作品を妄想するも、担当編集が放送中だった大河ドラマ『新撰組!』の影響からか、「新撰組のことしか喋らなくなった」ことから変更となったようです。

 また、『銀魂』といえば、万事屋がSF的世界観の江戸でドタバタを繰り広げるコメディ作品ですが、当初は「剣術修行のために上京した永倉新八が土方たちに出会い、真選組の一員となって悪い天人を倒す」というストーリーでした。連載前の『銀魂』の構想に関しては、単行本6巻で各キャラの設定が、銀魂公式ファンブック「広侍苑」で当時のネームの一部が掲載されています。

 ちなみに、連載前の『銀魂』の土方(十四郎ではなく歳三)のキャラデザは主人公・坂田銀時の元となり、主人公・新八も銀時のもとで働く志村新八の原形になっているほか、真撰組の紅一点キャラの沖田の見た目は新八が推すアイドル・寺門通へ、傘で戦う設定は神楽へと引き継がれています。

 空知先生は「大河に便乗まる出し」という理由から大幅な変更を行ったとのことですが、もしも真選組を中心とした初期のストーリーで連載されていたら、それはそれで面白かったのかもしれません。

(田中泉)

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