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ジャズを知らずとも熱くなる映画『BLUE GIANT』 初心者ドラマー「玉田」視点で味わう王道展開

マグミクス / 2023年2月26日 9時10分

ジャズを知らずとも熱くなる映画『BLUE GIANT』 初心者ドラマー「玉田」視点で味わう王道展開

■石塚真一氏のベストセラーコミックのアニメ化

 観ているだけで心が揺さぶられ、体温まで上がって感じられる。そんな熱いアニメーションに、出会ってみたいと思いませんか。人気漫画家・石塚真一氏のベストセラーコミックを劇場アニメーション化した『BLUE GIANT』は、まさに熱気あふれる作品です。良質のライブコンサートを体験したような、心地よい高揚感を味わうことができます。2023年2月17日に公開されるや、映画レビューサイト「フィルマークス」で「初日満足度」1位となっています。

 山岳救助を題材にした『岳 みんなの山』の大ヒットで知られる石塚氏が、かつて米国留学中にハマった音楽がジャズでした。「世界一のジャズプレイヤー」を目指す若者・宮本大を主人公にしたマンガ『BLUE GIANT』は、シリーズ累計900万部を超える大ベストセラーとなっています。演技力で定評のある山田裕貴さん、間宮祥太朗さん、岡山天音さんら若手俳優をボイスキャストに起用してのアニメーション化です。

 ジャズのことをまったく知らない人でも、十分に楽しめる内容です。特に今回の劇場アニメ版は、原作の第4巻~10巻にあたる「東京編」が描かれており、テナーサックスの練習に明け暮れる大(だい)に感化され、平凡な大学生・玉田俊二がドラムを叩き始めるという、「始まりの物語」です。ジャズ初心者の玉田の視点に立つことで、観客も一緒にジャズの世界に足を踏み入れることになるのです。

■ジャズ初心者の玉田がキーパーソンに

 仙台の河原で炎天下の日も雪の日も、欠かさず練習に打ち込んできた宮本大(CV:山田裕貴)。彼が東京に上京し、天才的ピアニストの沢辺雪祈(CV:間宮祥太朗)と出会うことから、物語は大きく動き始めます。

 大はサックスを吹き始めてから、3年ちょっとしか経っていません。でも、大には「世界一のジャズプレイヤーになる」という意欲と、人を圧倒する音量、そして表現者としての「華」がありました。4歳からピアノを弾いている雪祈は、大の演奏を聴いて、すぐにその実力を認めます。

 しかし、大きな問題がありました。大と雪祈がライブステージに上がるには、リズムセクションであるドラムが必要です。ジャズに興味を持つ同世代の若いドラマーは、なかなか見つかりません。

 大は高校時代の親友・玉田俊二(CV:岡山天音)のアパートに居候していたのですが、大学生の玉田は自分がやりたいことが見つからないという悩みを抱えていました。ジャズに熱中する大のことを羨ましく感じていたのです。

 まったくの初心者ながら、玉田はドラムセットを購入し、音楽教室に通い、大と雪祈の練習に参加することに。才能ある2人の演奏に圧倒されながらも、リズムだけは懸命にキープしようと奮闘します。

 大の自由奔放な演奏は猛烈に熱いのですが、大汗を流し、指をボロボロにしながらも、必死で喰らいつく玉田の一途さもまた熱いのです。失敗を重ねながらも、玉田がライブごとに成長していく姿が、とても感動的です。才能のない人間を見下すクールな雪祈も、玉田の情熱だけは認めざるを得ません。

■バトルシーンは「セッション」 個性や即興性が重視される世界

ジャズの頂点を目指す主人公・大のバンドに加入する、ドラム初心者の玉田 (C)2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 (C)2013 石塚真一/小学館

「世界一のジャズプレイヤーになる」。そんな野望を持ち、故郷の仙台から旅立った宮本大。無鉄砲な主人公を仲間たちがサポートし、ジャズシーンで快進撃していく『BLUE GIANT』は、少年マンガの王道的ストーリーが展開されます。

 少年マンガの必須要素であるバトルシーンの代わりとなるのが、ライブステージでのセッションです。大のサックス演奏は、ベテランプレイヤーや耳の肥えたジャズファンだけでなく、ジャズのことを知らない一般のお客たちも大興奮の渦へと巻き込んでいきます。

 大、雪祈、玉田の18歳トリオが目指すのは、日本のジャズプレイヤーたちにとっての「武道館」であり「東京ドーム」でもある、ジャズの名門ライブハウス「So Blue」のステージです。しかも3人は、10代でその夢を叶えようとします。友情、葛藤、挫折……、さまざまな要素が盛り込まれ、3人のバンド「JASS」の音はより熱く、より深い音色になるのでした。

「王道的少年」マンガと紹介しましたが、大人の音楽であるジャズが題材になっているだけに、夢や勢いだけの物語にはなっていないのも本作の魅力です。

 ジャズの世界では、プレイヤーの技量はもちろん、個性や即興性も重視されています。本作の見どころは、ライブシーンでの各パートのソロ演奏です。どれだけ熱く、どれだけ個性的で、かつ自由度の高い演奏を披露できるか。大たちは演奏を通して、自分の内面とも向き合い、大人のプレイヤーへと成熟していくことにもなるのです。

■上原ひろみが書き下ろした「JASS」のナンバー

 ロックバンドと違い、ジャズプレイヤーたちはある程度のキャリアを積むと、それまで一緒に組んでいたプレイヤーとは別れ、別のプレイヤーと演奏することが多いのも特徴です。新しいプレイヤーと組むことで、さらに高い次元を目指すわけです。ジャズの世界が、大人っぽく感じられる要因のひとつでしょう。

 ジャズ初心者の玉田も、そのことは理解しています。自分にはない才能を持つ大や雪祈は、いつかは自分のもとから去っていくことを自覚しています。それでも玉田は、彼らと一緒にトリオを組めたことを後悔していません。10代の限られた時間とはいえ、ドラム演奏に身も心も捧げ、ステージに立つ者しか味わえない熱さを体感することができたからです。

 コミックでは聴くことができなかった「JASS」の演奏ですが、世界的なピアニストである上原ひろみさんが音楽を担当し、劇中曲「First Note」「N.E.W」「WE WILL」を書き下ろしています。どの曲も熱いです。大音量で楽しめる劇場で、ジャズの熱さにぜひ触れてみてください。

※映画『BLUE GIANT』は、2月17日より全国ロードショー
原作/石塚真一 監督/立川譲 脚本/NUMBER8 音楽/上原ひろみ
出演/山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音
演奏/馬場智章(サックス)、上原ひろみ(ピアノ)、石若駿(ドラム)
配給/東宝映像事業部
(C)2023 映画「BLUE GIANT」製作委員会 (C)2013 石塚真一/小学館

(長野辰次)

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