電車の優先席で老人に怒鳴られた妊婦 夫に話すと？ 共感力のない反応に「つらすぎる」【作者インタビュー】

■怖い思いをした妻への夫の言葉に、さまざまな声

　妊娠中の女性の災難話を描いたエッセイマンガがTwitterで話題です。ヤチナツさん（@11yc4）の友人はもうすぐ妊娠5か月。彼女が平日の日中、すいている電車の優先席に座っていると、高齢の男性が現れ「お前、何優先席座ってんだよ！」と怒鳴られました。ショックを受けた友人は車内で涙。帰宅後、その出来事を夫に話すと……。

　このときのことを描いたエッセイマンガ『もらい事故と家族の対応』がTwitterで公開されると、読者から「怒鳴った老人は最低だし、共感力に欠けた夫の言葉がひどい」「今欲しい言葉はそれじゃない」「赤ちゃんに何かあっても同じこと言えるの？」「危機感がなさすぎる」「男性の会話は議論だから、女性のように感情の共有は難しいんじゃないかな」「早めに話し合わないと大きなすれ違いになる」などの声があがりました。Twitter投稿は2.6万いいねの反響が集まっています。

　作者のヤチナツさんに、お話を聞きました。

ーー『もらい事故と家族の対応』のエピソードをマンガに描こうと思ったきっかけを教えて下さい。

　日常のなかでは、けっこうニュースになる話だったので、マンガ映えしそうだったからです。

ーーご友人の電車での出来事と、ご友人のご主人の反応について、ヤチナツさんはどのように思いましたか？

　電車の出来事については、気を付けていても、こうしたもらい事故は起こるので、今まで以上に気を付けて生きるしかないよなあ、と再確認しました。電車がすいていたら優先席には座らず変な人に絡まれるリスクを減らす必要はあると思うんですが……あくまで優先席なので、絡むジジイが100％悪い……と同じところをぐるぐる回ってしまいますね。（電車で様子がおかしいおじさんたちのケアまでは私はまだ踏み込めないです……）

　ご主人の反応については、さすがに「ひどーい」と思いました。でも育ってきた環境も考えてきた事柄も備わっている機能も全然違うし、「他人は自分を傷つけて当然の存在」と心に刻んでいる妻の諦めと強さは分かります。

　また、男性の特権主義の話にもつながるな～と。外を歩いていて怖い思いをしたことがない人が多いんだろうと思います。でも昨今フェミニズムの考えが広まってきたこともあり、こういった認識の差はこれから少なくなっていく可能性が大きいと期待してます。

　いくら他人と分かり合えないとはいえ、家庭のなかに味方がいないのは本当に苦しいです。（家庭の意味！）目に見えて血が流れていなくても、心の血を流している人の回復を手伝ってから初めて次に進めることを、納得できなくても理解してほしいですね。

ーー作品に対する反応で、特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。

　ほとんど読んでないですが「我が家すぎた」というDMはもらいました。ひどい話だな～と思ってたので、他にもこんな家庭がいっぱいあるんだ……と驚きました。伸びしろしかないですね。あとジジイに下痢の呪いをかけてくれた人もいました。共感力の高いフォロワーさんが多くて幸せです。

単行本『女性に風俗って必要ですか？』1巻が発売中（新潮社）

ーー単行本『女性に風俗って必要ですか？』1巻が発売中です。お話のあらすじや見どころなどをご紹介いただけますか？

　女性向け風俗店の裏方として働くことになったアラサー女性の、ちょっぴりエッチなお仕事コミックエッセイです。知らなかったことだらけで知的好奇心が刺激されます。そして、こういうテーマが苦手な人でも楽しめるシンプルな線とポップな表現になってます。

　今回のエッセイマンガと無理やりつなげるようですが、女性の見えない心の傷にもアプローチしている作品です。1巻には家庭内のすれ違いについてのお話も収録しています。もちろんこうしたメッセージを無理に受け取らなくても、単純にドタバタコメディとしても楽しんでいただけたらうれしいです。

ーーマンガやその他で、現在のご活動内容や、今後の活動のご予定などについて教えて下さい。

　目の前の仕事とプライベートでやるべきことを粛々とやっているだけですね。今はちょうど確定申告をして2023年度の税金に愕然としてやる気を失っているところです。気持ちを立て直して、節税して、元気にマンガを描いていきたいです。

（マグミクス編集部）