昭和特撮のあるある「勘違い」 「スペシウム光線の構え方」「V3は3作目」
マグミクス / 2023年3月5日 6時10分
■勘違いしてもしょうがない?
特撮ヒーロードラマは、いつの時代も子供たちを夢中にさせますが、大人になるとその設定などで「意外な勘違い」をしていたことに気付く人が多いようです。ネット上にも「実はこんな勘違いをしていた」という、さまざまな声があがっています。もしかしたら、あなたも勘違いしていないでしょうか?
●「初代ウルトラマンから活動制限時間は3分」の勘違い
「ウルトラマンの地球での活動時間はわずか3分」というのは、特撮ファンならずとも多くの人がなんとなく知っているお約束です。歴代ウルトラ戦士たちは、タイムリミットが近付いてくると、胸の「カラータイマー」が青から赤に変わって点滅を始めます。同時に鳴る「ピコン、ピコン」のアラート音は、切迫感をこれでもかと煽りました。
ただ、よくある勘違いが、「初代ウルトラマンから制限時間は3分だった」というものです。実は、初代『ウルトラマン』が放送された時期には、まだ明確に「3分」という数字は設定されていませんでした。
一例を挙げると、『ウルトラマン』放送直前当時の「週刊テレビガイド」1966年6月24日号では番組の設定に関して「ウルトラマンの胸に赤ランプがつくと、彼の超能力もあと30秒で消滅するのだ!」という説明があり、カラータイマーの色が変わると危険信号というのは同じなものの、3分という数字は書いてありません。また、当時のTBSの宣伝資料「ウルトラマンあらすじ集」には、「最初は青色で三分間、途中黄色に変わったときが注意信号で、赤色になるとあと三十秒ですべての力を失う危険信号になっている」と説明があったようで、この言葉通りだと活動可能時間は3分を超えています。
肝心の本編でも「短い時間しか戦えない」ことは語られつつも、特に「制限時間3分」の説明はなかったのですが、放送当時から、「ウルトラマンが活動できる時間は3分」と認識している人は多かったようです。その原因には、円谷プロにも出入りしていたSF研究家の編集者・大伴昌司さんが、『ウルトラマン』放送開始1週間前の、7月10日発売「週刊少年マガジン27号」にて、「ウルトラマン3分間の決戦」という、ウルトラマンがネロンガを倒すまでの3分間の時間経過を描いた図解を企画して載せたことが関係していました(著:大野茂「サンデーとマガジン 創刊と死闘の15年」参照)。
この設定がひとり歩きしたからか、のちに『帰ってきたウルトラマン』第1話にて、正式に「ウルトラマンのエネルギーは地球上では3分間しか持たない」とナレーションが入っています。というわけで、公式に「制限時間3分」になったのは『帰ってきたウルトラマン』から、となりますが、これはもう勘違いしてもしかたがないかもしれません。
●「スペシウム光線のポーズは腕をL字に構える」の勘違い
ウルトラマンの必殺技といえば「スペシウム光線」です。ポーズをとるように言われたら、誰もが右腕を垂直に、左腕を水平に組み合わせるでしょうが……ここで、「L字」に組んでしまったら、それは勘違いです。
スペシウム光線を出すポーズは、右腕と左腕を手首でクロスさせるのが正しい構え。右手の方ににマイナス、左手にプラスのエネルギーを集積させて、両手を交差することでスパークさせて放つ技なので、クロスしないと何も出てきません。右胸の前で構え、左手は敵側から見て手前にクロスさせるのもポイント。左手の指先を右手の肘につけるL字ポーズは、ウルトラセブン最大の必殺技「ワイドショット」です。
■ウルトラセブンはなぜセブン?
胸文字が「エコ」と読まれがちなダイデンジンがジャケットに登場したDVD「電子戦隊デンジマン Vol.6」(東映ビデオ)
●「ウルトラ兄弟は全員実の兄弟」の勘違い
ウルトラの父がいて、ウルトラの母がいて、そしてウルトラ兄弟と呼ばれる戦士たちがいたら、みんな「実の兄弟」だと思いがちですが、それは勘違い。「兄弟」の名は、ウルトラの父のもと「銀河の平和を守る」という志を同じくした、同志的な意味合いでのくくりで使われています。「お笑いを追求する阿佐ヶ谷姉妹」「美を追究する叶姉妹」のようなことでしょうか。
特にくくられることの多い「ウルトラ6兄弟」は、ゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック(帰ってきたウルトラマン)、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウです。
●「ウルトラセブンは7作目」「V3は3作目」の勘違い
「ウルトラセブン」を「ウルトラマンセブン」だと思い込んでいた、というのはもはや古典的勘違いですが(TVテロップでも時々見かけます)、「セブン」と名が付いているので7作目だと思っていたという人もいるようです。『ウルトラセブン』は、『ウルトラマン』に続いて制作された、初期の作品でした。ではなぜセブンなのかというと「6人のウルトラ警備隊と協力して戦う、7番目の仲間」という意味なのだそうです。
数字に関する勘違いは、仮面ライダーシリーズにもありました。ネット上には「仮面ライダーV3は3作目だと思っていた」「仮面ライダー2号という番組があったと思っていた」などの声がありましたが、『仮面ライダーV3』はシリーズの2作目で、仮面ライダー2号は第1作目の『仮面ライダー』に途中から登場したキャラクターなのです。数字ってややこしいですね。
●「死神博士は柳生博」の勘違い
仮面ライダーシリーズの大人気悪役・死神博士は、天本英世さんが演じていましたが、なぜか「演じているのは柳生博さんだと思っていた」という勘違いもありました。確かに、顔の形も髪型も似ているかもしれません……。特に子供の目には、見分けがつかなかったのでしょう。
柳生さんが死神博士だと思っていた人は、死神博士がクイズの司会をしたり、学園ドラマに出たりしていたと思っていたのでしょうか。なんだか微笑ましい死神博士です。
●「デンジマンの巨大ロボ・ダイデンジンの胸の文字はエコ」の勘違い
スーパー戦隊シリーズの勘違いといえば、圧倒的に多いのが『電子戦隊デンジマン』に登場する巨大ロボ・ダイデンジンの胸文字です。おそらくほとんどの子供がカタカナの「エコ」と読んでいたことでしょうが、正しくは頭文字であるアルファベットの「D」。これは変形するロボだからかと思ったのですが、実はデンジマンたちの胸のマークも「エコ」に見えるので、うっかりデザインだったのかもしれません。
特撮ドラマはさまざまな勘違いを生んでいますが、なかには「大人でも特撮好きな人がいること知らなくて、恥ずかしいから小学校卒業と同時に特撮も一回卒業しちゃった」というような声もありました。これはちょっと寂しい勘違いです。大人になっても特撮好きはたくさんいますから、卒業なんかしないでずっと特撮を愛していきたいですね。
(古屋啓子)
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