【韓国アニメ時報】テコンドーから始まる「コリアンヒーロー像」の系譜
マグミクス / 2019年4月24日 11時28分
■発祥国ならでは? 初期のヒーローは"テコンドーの達人"
今回は韓国のアニメや特撮のヒーローについて取り上げたいと思います。もちろん前回取り上げた『テコンV』をはじめとしたロボットアニメの主役もヒーローであることには変わりがありません。
さて、韓国アニメのヒーローといえば、韓国初の長編劇場用アニメ『ホン・ギルドン』(1967年)が挙げられるでしょう。ホン・ギルドンは小説に描かれたヒーローで、韓国では非常に親しまれた存在です。
アニメ以外にもドラマや映画で何度も描かれており、最初の劇場用長編の題材としては非常に相応しいものだったことでしょう。
初期の韓国アニメの『黄金鉄人』(1968年)は、等身大のヒーローが活躍する作品で、韓国アニメ史上初めてロボットが登場したことでも知られています。
1971年には『鉄腕アトム』の影響を受けた『稲妻アトム』が作られました。またラジオドラマをアニメ化した『テコン童子 マルチ アラチ』(1977年)やその続編『電子人間337』(1977年)も、テコンドーで戦う主人公が人気だったといいます。
1978年には、初のスーパーヒロインもの『飛べワンダー姫』が作られています。アンドロイドが活躍する『宇宙少年ケシー』(1979年)や『科学忍者隊ガッチャマン』の影響の強い『太極少年白いハゲワシ』、『機動戦士ガンダム』のキャラクターに似すぎている『宇宙黒騎士』、バットマンを彷彿とさせる『黒い星と黄金バット』といった作品が生まれています。
1982年に韓国国内でプロ野球が開幕すると、アニメでも野球ものが積極的に作られます。『トッコタク 太陽に向かって投げろ』シリーズ(1982年)や、孤児院の野球チームが活躍する『黄金の腕』(1983年)、人気漫画を映画化『恐怖の外人球団』(1986年)もヒーローものに含めてもよいと思います。
純粋なアニメ作品ではありませんが『ウレメ』シリーズも忘れ難い作品です。当時の韓国で大人気コメディアンであったシム・ヒョンレが主役を演じ、主人公のエスパーマンは『忍者戦士飛影』の鳳雷鷹にそっくりなメカなどに乗って戦うというものです。エスパーマンは実写ですが、巨大ロボットの活躍シーンなどはアニメーションで描かれます。同作品は大ヒットし、1986年から1993年までのべ8作品が制作されました。
■"青"がリーダー? 韓国では"鉄板"の戦隊ヒーロー
『獣電戦隊キョウリュウジャーブレイブ』(東映)
韓国アニメのヒーロー像をふり返る時、日本の影響を受けた特撮番組も重要になってきます。
1988年には『ウレメ』と同じシム・ヒョンレの主演の『スパークマン』という実写映画が作られました。製作は日本の下請けなどを行っていた大元動画。この作品は東映のメタルヒーローとスーパー戦隊に多大な影響を受け、宇宙刑事風のヒーローが巨大ロボットに搭乗して戦います。
日本の実写作品が韓国に輸入されたのは、1989年の『超新星フラッシュマン』が最初とされています。以降、日本の特撮番組が韓国で人気となりました。
スーパー戦隊が『パワーレンジャー』に姿を変え、吹き替えで韓国国内でTV放送されています。韓国版『獣電戦隊キョウリュウジャー』は大ヒットし、現地オリジナル版のドラマ『パワーレンジャーダイノフォース ブレイブ』として制作されました。
現在では、番組だけでなくヒーローショーも開催されているといいます。”戦隊もの”は韓国で鉄板のコンテンツなのです。
最近の作品では、『最強戦士ミニ特攻隊』(2014年)を紹介したいと思います。かわいい動物たちが変身しチームを組んで戦うアニメで、スーパー戦隊の影響下で作られた作品といっていいでしょう。”戦隊もの”との共通点は、それぞれの戦士が固有の色のついた戦闘服をまとい戦う点です。4人の戦士はチームとして戦い、追加戦士も登場。巨大ロボットにも搭乗するといった共通点もあります。
しかし、そのまま戦隊ものを流用しているわけではなく、変身するのは動物であるという点や、「ミニ」というタイトルにもある通り、変身しても背は小さいままです。
また、戦隊ものといえば(例外はあれど)赤いヒーローがリーダーなのですが、『最強戦士ミニ特攻隊』では青がリーダーとなっています。こうした細かい点の違いもあります。
他にも『地球勇士ベクターマン』(1998年)をはじめ、韓国のテレビではスーパー戦隊の影響下で作られた実写作品が多くあります。2002年には『環境戦隊ゼンタフォース』という家族がヒーローに変身するシリーズが作られ、韓流ブームに乗って日本でも放送されました。
同じく戦隊ものの影響下で作られた中国のテレビシリーズ『神獣金剛』や『巨神戦撃隊』と比べてみても面白いです。このように韓国には、日本から多大な影響を受けつつ、独自に変化してきた”ヒーロー像”の歴史があるのです。
(かに三匹)
(かに三匹)
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