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『ガンダム』なぜシャアは総帥になっても「大佐」なのか 大将を名乗らないワケ

マグミクス / 2023年3月12日 6時10分

『ガンダム』なぜシャアは総帥になっても「大佐」なのか 大将を名乗らないワケ

■大佐が実質的に一番偉いジオン軍

 人気キャラクターが多い『機動戦士ガンダム』のなかでも、シャア・アズナブルは別格のキャラクターと言っていいでしょう。例えば、月刊「ガンダムエース」誌で現在連載中の作品でも、『機動戦士ムーンガンダム』と『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』の双方で、ラスボス級の扱いを受けているほどです。

 これほど存在感があるのは、彼が革命家ジオン・ズム・ダイクンの子でありながら、父の権力を奪ったザビ家への復讐により、シャア・アズナブルを名乗った過去。そして、父の名を継ぐべきかの迷いもあり、エゥーゴではクワトロ・バジーナを名乗ったものの、指導者ブレックスの死により、自分の立場と向き合わなくてはいけなくなった葛藤。

 そして、ニュータイプとしても操縦者としても越えられない、アムロ・レイへの複雑な感情なども入り混じって「物語の起点」になっているからだと思えます。

 そんなシャアですが、エゥーゴのクワトロとしてダカールで演説をし「ジオンの赤い彗星シャアで、ジオン・ズム・ダイクンの息子キャスバル・レム・ダイクン」だとカミングアウトしています。

 その後、シャアはエゥーゴを脱退し、ネオ・ジオン総帥となります。普通に考えれば「本名であるキャスバル・レム・ダイクンを明らかにした」のですから、以後もキャスバルを名乗るものです。にも関わらず、彼は以後も「シャア・アズナブル」を名乗り続け、周囲もジオン公国軍の階級である「大佐」と呼び続けるのです。

 ネオ・ジオンのトップである総帥となっているのですから、軍隊で言えば、一番上の階級である「元帥」とか「大将」を名乗れるはずですが、そうしないのです。なぜなのでしょうか。考察していきます。

 そもそも、シャアが所属していたジオン公国軍とは、不思議な階級制度を持つ軍隊です。独裁者ザビ家のギレン・ザビが「大将」、その弟のドズル・ザビが「中将」、妹のキシリアが「少将」、末弟のガルマが「大佐」と、ザビ家で高い階級を独占しています。

 将官でザビ家以外なのは、ホワイトベース隊に撃破されたコンスコン、名家サハリン家のギニアス・サハリンと、欧州制圧軍指揮官であるユーリー・ハスラー、アフリカ方面軍司令官のノイエン・ビッター、ギレンの側近であるトワニングが准将であるくらいです。

 不思議なのは、地球方面軍司令官はガルマ大佐なので、ギニアス、ユーリ、ビッターは階級で下回る者に指揮されているようにも思えます。

 ガルマは名目上の司令官で、実質的な司令官は姉であるキシリア少将ではありますが、彼女とて同格の少将を指揮していることになります。通常の軍隊では、同一階級でも士官学校卒業の順位や、卒業年度で序列がありますが、キシリアは24歳ですから、ユーリたちより年下で、先任ではあり得ません。そして、オデッサの戦いを実質的に指揮していたのは、キシリアの側近であるマ・クベ大佐でした。

 つまり、ジオン軍では「階級」より「ザビ家との関係性」の方が優先されるということです。そして、1年戦争時ではザビ家以外で中将以上のジオン軍人は存在しません。

 シャアが20歳の若さで「大佐」となったのは、ザビ家が中将以上の蓋をしているジオン軍で、実質的に「ほぼ最高の地位」であるということです。とはいえ、シャアは「ネオ・ジオン総帥」になったのですから、大将を名乗ろうと、問題はないようにも思えます。それができない理由は「ネオ・ジオンが寄せ集めの集団」だからではないかと思われます。

 シャアが総帥になった時点のネオ・ジオンは「反地球連邦」の巣窟であり、その構成員には、元エゥーゴも、ティターンズも、ジオン公国も、ハマーンやグレミーのネオ・ジオンに参加していた者たちも含まれていると思われます。

 そうした者を束ねる上で、シャアは「私は私利私欲でネオ・ジオンを率いているわけではない」という意志表示として、自分の階級を「大佐」に据え置いたのではないでしょうか(先述した「ザビ家の蓋」があるからか、ネオ・ジオン参加者に、シャア以上の階級を持つ者はいなかったのでしょう。通常の軍隊のように将官が多数いるなら、ネオ・ジオンにも多数参加するはず。ジオンが特殊な軍隊ということです)。

 また、そうなった理由は、エギーユ・デラーズにも原因があるのかもしれません。1年戦争時に「大佐」であったデラーズは、『機動戦士ガンダム0083』で中将に昇格しています。ジオン軍の総指揮権を持つギレンが1年戦争時に亡くなり、ジオン公国は消滅したのですから、デラーズは勝手に中将を名乗ったとしか考えられません。

 そうしたこともあって、デラーズは「勝手に俺たちの上に立った奴」として、ジオン残党からの評判が悪かったのでしょう(アクシズ艦隊が、彼の「星の屑作戦」に参加せず、中立を守った辺りでもそれは伺えます。アクシズ先遣艦隊の指揮官であるユーリー・ハスラーでも少将、デラーズより下ですから)。アクシズにいたシャアはそれを教訓として、自分の階級を「大佐でいい」としているのではないでしょうか。

 そして「キャスバル・レム・ダイクン」を、あまり名乗りたがらない理由は、ネオ・ジオン内でザビ家を支持する勢力への配慮だと思われます。彼らはミネバ・ラオ・ザビという仰ぐべき幼主が別におり、いつでも反乱分子に成り得ますが、彼らを排除して成立するほど、ネオ・ジオンは強力な勢力ではないということです。

「私はジオン・ダイクンの子ではあるが、守るべきはダイクンのスペースノイド独立の志であり、独裁を敷くつもりはない。そして、たまたま、このような立場にいるが、諸君らと同じ一兵士でもある。だから、私は今でも『赤い彗星』シャア・アズナブルだ」

 というようなことを言って、それぞれの派閥を納得させているのかもしれません。

 実際、シャアの前にネオ・ジオンを率いたハマーン・カーンや、それに反乱を起こしたグレミー・トトは階級を名乗っていませんでした。彼らも「守るべきはジオンの精神で、私はたまたまこのような立場にいるだけ」と表明していたのかもしれませんし、もしそうであるなら、シャアもそれを踏襲するしかなかったということです。

 さまざまな政治的しがらみの中で、ダイクンの子として苦しむシャア。彼が開放されるのは、モビルスーツに乗り「赤い彗星」である時だけだったのかもしれません。

※本文の一部を修正しました。(2023.3.13 10:40)

(安藤昌季)

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