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40年前の春に激突した「三大アニメ映画」 勝負は「売上」だけで測れなかった?

マグミクス / 2023年3月13日 18時40分

40年前の春に激突した「三大アニメ映画」 勝負は「売上」だけで測れなかった?

■雑誌がこぞって特集 前評判はほぼ互角だった

 今からちょうど40年前。一部のファンから「1983年3月のアニメ映画戦争」と呼ばれた出来事がありました。後に大きな影響を残した映画作品どうしの熾烈な競い合いがあったのです。

 当時は『宇宙戦艦ヤマト』と『機動戦士ガンダム』によるアニメブームの後、アニメ作品がひとつのコンテンツとして一般にも認識されるようになったころでした。70年代ころまでは「アニメは子供向けの作品」というイメージでしたが、この頃には高校生や大学生といったハイティーンに向けた作品が増えていました。

 つまり客層がより広がったということで各社もいろいろなアニメ作品を世に出すようになってきて、これ以前にも多くのハイティーン向けアニメ作品が世に出て話題となっていました。そして、偶然にもアニメファンが注目する3つの作品が1983年3月に集中することになります。

 そのひとつが3月12日に松竹富士系で公開された『クラッシャージョウ』でした。『ガンダム』を制作した「日本サンライズ」による初の全編新作画の劇場アニメです。さらに『ガンダム』でキャラデザインと総作画監督だった安彦良和さんの初監督作品で、監督・キャラデザイン・脚本・絵コンテ・作画監督の5役を兼任していました。

 もともと『クラッシャージョウ』は高千穂遙さんの書いた小説で、安彦さんはそのイラストを担当しています。そういったことから当時のアニメファンには知名度は高く、アニメ化を望む声も多い作品でした。

 もうひとつは同じく3月12日から東宝東和系列で公開された『幻魔大戦』です。当時の邦画で常に話題となっていた角川映画による角川アニメーション映画第1作でした。もとは平井和正さんと石森章太郎(後の石ノ森章太郎)さんの共作によるマンガ作品で、平井さんによる小説もあります。

 この作品のキャラデザイン原案は漫画家の大友克洋さんで、この作品への参加でアニメ制作に興味を持つこととなって、後に国内外で高い評価を受けることとなった劇場アニメ作品『AKIRA』へとつながりました。

 そして、最後の1本が1982年夏公開予定だったのが延期されて1983年3月12日に再延期、それでも間に合わずに翌週3月19日に東映洋画系列で公開となった『宇宙戦艦ヤマト 完結編』です。

 この頃の『ヤマト』には往年の人気はなかったものの、根強い一定数のファン層は存在していました。実在の戦艦大和の最期と重なるような演出が事前から話題になっており、タイトルとあわせて「最後のヤマト」という雰囲気を前面に出していた作品となっています。

 この3本の話題作の前評判はどれも甲乙つけがたく、事前の各アニメ雑誌の特集も平均化するとほとんど横並びという感じでした。そのため、結論から言えば3作品すべて見たアニメファンも少なくなかったと思います。しかし、「配給収入」という数字は正確に出るわけで、意外な結果が出ることになりました。

■単なる「数字」では測れない 当時のファンによる評価

1983年春に公開された『宇宙戦艦ヤマト 完結編』を収録した、「EMOTION the Best 宇宙戦艦ヤマト 完結編」DVD(バンダイビジュアル)

 実はこの3本以外にも、春アニメ映画は何本か公開されていました。まずは前月の2月11日に東宝系で公開した『うる星やつら オンリー・ユー』です。

 当時大人気だった『うる星やつら』の初劇場版オリジナル長編アニメで、こちらもアニメ雑誌などで大きく扱われていました。TV版のノリを長編で製作した雰囲気は、多くのファンを満足させます。

 また当然としてハイティーン向けの作品ばかりだけでなく、純粋な子供向け作品も公開されました。子供向け映画の定番だった「東映まんがまつり」も3月13日に公開されています。

 この時のメインは、やはり当時人気の高かった『Dr.スランプ アラレちゃん』から『ほよよ!世界一周大レース』でした。この他にも併映で『バッテンロボ丸 お化け飼う少女』、『科学戦隊ダイナマン』、『まんがイソップ物語』が東映系列で公開されています。

 そして、春休み映画の定番となりつつあった長編映画『ドラえもん』シリーズ第4作として、『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』が3月12日から東宝系列で公開されました。

 TVシリーズと違って感動的な作風がメインとなる長編映画シリーズですが、本作は特にその傾向が強いと言われています。同時上映は『忍者ハットリくん ニンニンふるさと大作戦の巻』『パーマン バードマンがやってきた!!』で、『パーマン』は4月からのTVシリーズに先駆けた第0話となっていました。

 こういった作品群のなかで、『幻魔大戦』が10億6000万円を記録、1983年の邦画配給収入でも8位に入る好成績となります。続いて『宇宙戦艦ヤマト 完結編』が10億1000万円、『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』が10億円でした。

 『クラッシャージョウ』は6億6千万円とかなりの差がありましたが、それがそのまま内容の評価に直結するものではありません。なぜなら、その年のアニメ作品の人気をファン投票で選ぶ「アニメグランプリ」の第6回で、『クラッシャージョウ』は1983年のグランプリ1位に輝いたからです。

 この年は『超時空要塞マクロス』の1位が本命視されていましたが、それを抑えての1位は興行成績とは違ったファン視点の人気の高さによるものでしょう。ちなみに主人公であるジョウは男性キャラクター部門で10票差という僅差で2位に終わっています。1位は『装甲騎兵ボトムズ』のキリコ・キュービィでした。

 いつの時代も数字だけでは推し量れないことがあるもの。1983年3月のアニメ映画戦争で競った3作品は、後の世に与えた影響を考えればどれも素晴らしい作品だったと筆者は思います。

(加々美利治)

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