『刃牙』武神・愚地独歩の信念が伝わる名言 「ネタ化」したブチギレ台詞も？

■普段はお茶目で愛妻家な「ドッポちゃん」

　格闘マンガ『刃牙』シリーズは1991年に掲載が始まってから、長く人気を博して来ました。超人的な強さとアクの強い性格のキャラが多数登場しますが、なかでも特にインパクトの強い主要キャラのひとりが、最強の空手協会「神心会」の創始者・愚地独歩です。

　記念すべき『グラップラー刃牙』の第1話で、主人公・範馬刃牙よりも先に登場した名物キャラ・独歩は作中の数少ない既婚者で、意外にも愛妻家です。妻・夏江からは「ドッポちゃん」「私のスーパーマン」と呼ばれるなど愛されており、養子の克巳や、弟子たちからも尊敬されています。

　そして、その圧倒的な空手の腕前で、「武神」「虎殺し」「人食いオロチ」の異名で呼ばれるほどの伝説を打ち立ててきました。空手の基本の型全てを1日1000本こなし、それを数十年続けるなど、空手に人生を捧げてきた男です。

　そんな独歩は、空手に関する名言を数多く残してきました。2巻では裏社会で喧嘩空手を磨いていた弟子・加藤清澄に対し、「オレの空手は…ぴすとるの10倍スリリングだぞ……」と宣言して、実際に加藤を空手で圧倒。腹筋の操作で睾丸を身体の内側まで引き上げており、「金的」の攻撃すら効かないという超人ぶりも見せました。

　その後、いよいよ刃牙の「地上最強」の父・範馬勇次郎が登場し、因縁のある独歩は勇次郎と地下闘技場で戦います。最強クラス同士による激闘のなかで、ありとあらゆる格闘技を身に付けているという勇次郎は、琉球王家に伝わる武術「うどんでい」の「天下無敵の歩法」で近付いてきました。観戦していた本部以蔵から「逃げろ」と言われた独歩ですが、冷や汗をかきながらも「オレの空手は後退のネジをはずしてあるんだよ…」と、一歩も引かない姿勢を見せます。

　この名言通り、独歩は磨き上げてきた自分の空手を貫きました。背中の「鬼の貌」を出した勇次郎の本気の攻撃を喰らって、片目を失い、心肺停止にまで追い込まれましたが、「武神」の名にふさわしい戦いぶりで、勇次郎からも称賛されています。

　その後、独歩は「地上最強の男」を決める「最大トーナメント」に参加し、3回戦で合気の達人・渋川剛気と対戦。達人同士の戦いで互いにギリギリの状態になり、独歩と渋川は勝負を決めようと、互いに「必殺の間合い」まで近付いていきます。そんな接戦のなかで独歩は「計算もクソもないッッ、全てを肉体に委ねる」「五十五年間　今日（こんにち）この瞬間（とき）まで　音を上げずに俺についてきた　おまえを信ずる」と、名言を残しました。

　半世紀も空手に身を捧げてきた男の信念が伝わる言葉です。結果としては、より長く「武」に関わってきた渋川がわずかな差で勝利しましたが、負けた独歩の格も落ちない名勝負でした。

　2部『バキ』では、独歩は「最凶死刑囚」のひとりで、中国拳法最強の「海王」の称号を持つドリアンと対戦。最初の戦いでは、ドリアンの火を噴きかける攻撃を「廻し受け」で華麗にさばき、不敵に笑いながら「矢でも鉄砲でも火炎放射器でも持ってこいやァ…」と言い放ちます。その後、遊園地でドリアンと再戦した際には、独歩は催眠術までかけられながらもドリアンを圧倒し、「武の神様はケチでしみったれなんだ　あれもこれもどれも全て差し出すものにしか本物はくれねぇよ」と、空手一筋に生きた男の誇りを現す名言を残しました。

　そんな空手への誇りが強い独歩は、4部でクローンとして現代に蘇った剣豪・宮本武蔵と対戦します。戦う前に、実力を示すために石材やビール瓶を難なく破壊し、木材を足刀で斬った独歩ですが、武蔵からは「武と云うよりは舞　舞踊だな」「しかし何故石や木を……？」と言われてしまいました。そして、独歩は「なんだァ？てめェ……」と怒りをあらわにします。

　この場面は、「週刊少年チャンピオン」掲載時には「独歩、キレた！！」とストレートな煽り文が付けられ、改変のしやすさもあって、ネット上では秀逸な「コラ素材」としてよく使われるようになりました。次の話で独歩が武蔵にあっさり敗北したこともあり、ネタ化されてしまいましたが、それも独歩の人気ゆえでしょう。「なんだァ？てめェ……」のセリフと独歩の怒りの表情は、公式のLINEスタンプでも使用されています。

　今回紹介した以外にも多数の名言を残した独歩は、現在連載中の5部『バキ道』では久しぶりに地下闘技場で戦い、すでに2勝をあげています。これからも武神・愚地独歩の活躍、名言に期待したいところです。

（LUIS FIELD）