映画『キングダム』 中国が舞台の「戦国もの」が人気爆発の理由とは
マグミクス / 2019年4月27日 11時10分
■日本の4倍、550年続いた「戦国時代」が舞台
『キングダム』は、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて現在も連載されている原泰久原作の漫画作品で、第17回手塚治虫文化賞、マンガ大賞受賞作品。54巻までの累計発行部数が4000万部を突破した名作です。
時は、紀元前245年の春秋戦国時代、中国という国が統一によって形作られる以前のお話です。戦災孤児の少年、信(しん 演:山﨑賢人)と漂(ひょう 演:吉沢亮)は、いつか天下の大将軍になることを夢見て奴隷としての仕事をしながら日夜剣術の鍛錬をしていました。そんなある日、漂の元に王都の大臣である昌文君(しょうぶんくん 演:高嶋政宏)が現れ、漂を王宮で召し抱えたいと伝えられます。信と漂、別々の道を歩み始める若き2人の運命とはいかに……? というストーリーです。
ここで説明しておきたいのが、「春秋戦国時代」という時代です。日本で戦国時代というと、1467年の応仁の乱から1603年の江戸幕府の成立までの約140年の出来事ですが、中国では「春秋戦国時代」と呼ばれる、紀元前770年から紀元前221年のおよそ550年間のことです(春秋戦国時代を前半と後半に分け、「春秋時代と戦国時代」という言い方もあります)。
多くの日本人が知る「三国志」は、後漢の末期から三国時代の180年~280年頃ですので、春秋戦国時代は三国志よりも昔の話です。
三国志の年代は、日本では卑弥呼の時代に相当します。日本で狩猟採集が行われていた当時、中国では国の覇権を争い、血で血を洗うような戦乱の時代だったのです。その期間も550年と日本の戦国時代の4倍と長いものです。
『キングダム』とは、主人公が生きる戦国時代を、秦という国が中国史上初めて統一し、始皇帝が誕生する物語です。『キングダム』は、とにかく主人公が熱く、熱血スポ根の主人公のような性格なのです。
■スクリーンを埋め尽くす"圧倒的リアリティ"
奴隷という低い身分から天下の大将軍を目指し立身出世していく設定や、熱血で猪突猛進型の主人公が成長していく様は、今現代の日本の漫画では、珍しいものではありません。ではなぜキングダムはこれほどまでに多くの人びとを魅了してやまないのでしょうか?
まず一つは先述した通り、圧倒的スケールがあります。日本で10万の兵同士がぶつかり合うような大規模な戦争は、世界大戦を抜くと、天下分け目の決戦と呼ばれた関ヶ原の合戦くらいなものでしょう。しかし、「キングダム」が舞台とする中国の歴史では、1国の内乱で「8万の兵」という言葉が平気で出てきてしまうのです。
しかも、「それでもまだ少ない。相手は20万。後ろに控えるのは60万」。それも7カ国あるうちのひとつの国。やはりスケールが違います。
そして、この圧倒的なスケールは現代の映像化に向いています。16:9のワイドスクリーンで万と万の大軍勢同士がぶつかり合う様は、見ていて爽快の一言です。「テレビがワイドになっていくと、トリオ芸人のテレビ露出が増えた」というのは有名な話で、横に広くなった分、その隙間を埋めたくなるのが、人間の性なのです。
そういう意味では、これほどまで映画に向いている作品が他にあるだろうかと思えます。広大な中国の大地と建造物、圧倒的な大人数でのド派手なアクションが繰り広げられるのですから。
もうひとつの要素はリアリティでしょう。リアリティはリアルとは違います。リアルは現実という意味で、リアリティとは現実味や現実のようであることを指し、リアルとリアリティは似て非なるものといえます。春秋戦国時代は中国で実在した時代です。主人公の信も李信(りしん)という実在の人物ですし、秦が中国を統一し、秦王が始皇帝になることも歴史的な事実です。
「数千数万という大軍を相手に数十人で策を駆使して破る」といったことや、「天下の大将軍が一振りで何十人も吹っ飛ばす」と言った描写は、日本の戦国時代の武将たちがやっていたら無理のあることだろうと思いますが、中国史のなかの出来事だと思ってみれば、なぜか割り切れるものなのです。
なぜか違和感なく納得できてしまうーー中国史を舞台にすることで、すんなり入ってくるのです。春秋戦国時代という、日本人にはあまり馴染みのない時代を舞台にすることも一役買っていることでしょう。
三国志を題材にした映像作品やゲームは数多くあります。漫画『キングダム』は春秋戦国時代を日本で一躍有名にした作品で、アニメやゲームにも展開されています。
後に春秋戦国時代が三国志のように日本で愛され続ける題材になるとすれば、その礎(いしずえ)が今回の映画『キングダム』かもしれません。大陸の歴史を舞台とした圧倒的スケールを、映画館で楽しんでもらいたいです。
(二木知宏)
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