麦わらの一味に母がいないのは「冒険を描く」ため？ 作者の発言で別の考察も誕生

■「母親」と出会って冒険が終わる？

『ONE PIECE』の麦わらの一味のメンバーは、母親がすでに亡くなっているか、その存在がほぼ描かれていません。読者にとっては不可解でも、実は母親を描かないことについて作者の尾田栄一郎先生本人が意図を明かしています。

　まず、一味の母親が描かれた例を挙げると、ロビンの母親であるニコ・オルビア、ウソップの母親であるバンキーナ、サンジの母親であるヴィンスモーク・ソラ、ナミの育ての親だったベルメールは、いずれも幼少の頃に死別しています。例外として挙げるなら、チョッパーの面倒を見て、「バカ息子」と呼んで見送ったDr.くれはや、ルフィの育ての親・ダダンが生存していますが、実の母親たちは死亡、もしくは詳細不明という状態です。

　また、一味以外でも、しらほし姫の母・オトヒメ王妃や、エースの母であるポートガス・D・ルージュも過去に死亡しており、敵であるドフラミンゴも、父・ホーミング聖のせいで天竜人の地位を失った後8歳で母を亡くし、その怒りで10歳の時に父を殺して、その後海賊になっています。

　ちなみに、2008年に発売された北米版「週刊少年ジャンプ」での特集記事で、読者からルフィの母親像について質問された尾田先生はまず、その生死について「生きていると思う。これについては今でも悩んでるけど（笑）」と語り、「ストーリーに登場するなら、すごい屈強な女性じゃないかな」「屈強で、典型的な中年女性のパーマをした女性」と語りました。

　この回答で、ルフィの母親についてさまざまな憶測が飛び交っていますが、未だ謎に包まれたままです。まず、ルフィの父・ドラゴンの人物像がまだ謎に包まれているため、どんな女性と結婚しそうかという点も絞り切れません。

　一方の父親はというと、ドラゴンは革命軍のリーダーで、これからの活躍が期待されており、ウソップの父・ヤソップも赤髪海賊団の幹部で、実力者であることが描かれ、息子と再会する展開も予想されます。サンジの父・ジャッジは、息子をないがしろにした酷い男ではありますが、まだ生存しており、科学者として過去に無法な研究チーム「MADS」していたことも明かされているため、今後の重要なカギを握っていそうです。

　尾田先生は単行本78巻のSBS（質問コーナー）で、「どうして母親が死んでいたり不明のキャラクターが多いのか」という質問に対し、「冒険の対義語は母だからです」と、回答しました。またルフィ役の田中真弓さんは、尾田先生に「なぜ母親を描かないのか尋ねたことがある」とたびたびインタビューで語っており、「母から離れることで冒険ができるんです。僕は冒険物語を描きたいので母親は描きません」という返答に、「なるほど」と納得したといいます。

　ネット上では「冒険の対義語が母親なら、父親は冒険の過程で越えるべき存在なのかな」「冒険の対義語の母って、『故郷』とか『安心できる場所』って意味にもとれると思う」「冒険を描きたかったから、帰るべき場所をあえて描かなかったのか」などの声が上がっていました。

　ちなみに、78巻の後、作中では85人もの子供を持つ最強の母親、四皇のビッグ・マムとの戦いが描かれています。彼女は子供たちを血縁で縛り、「来る者は拒まず、去る者は殺す」と傘下の者たちにも自分からの離脱を許さない存在であり、ファンの間では「これもある意味『冒険の対義語』的存在だと思う」と言われているようです。

　また、一部では尾田先生の「冒険の対義語は母親」という発言から考察が始まり、「もしかすると、『母親に会ってルフィの冒険が終わる』という意味では」「実はイム様（世界政府を裏で牛耳る謎の存在）は、ルフィの母親かもしれない」「ラスボスはルフィの母親で、最後は母vs息子の戦いになる」「イム様は女性の身体を乗っ取って長い年月を生きており、現在はルフィの母親に乗り移っている。だからドラゴンは妻を救おうと革命軍を率いている」など、いろんな説も誕生しています。

　ただ、イム様のシルエットは前述の「屈強で、典型的な中年女性のパーマをした女性」とは違うため、この説の根拠は薄いかもしれません。それでもイム様がいる聖地マリージョアの「パンゲア城」には、「凍結された巨大な麦わら帽子」が保管されていることもあり、ルフィとイム様に何かしらの関係がある可能性は高そうです。

「冒険の対義語が母親」であるなら、最終章で麦わらの一味の冒険が終わるとき、何らかの形で「母親」が描かれるのでしょうか。完結に向けて注目が集まっています。

（マグミクス編集部）