藤井聡太も苦戦必至？ 『こち亀』の「特殊すぎる」将棋 「駒7500枚」

■将棋の駒をよく失くす両さんが、代わりに使ったものとは！？

　現在の将棋界は、藤井聡太竜王を中心に大きな盛り上がりを見せています。将棋のルールはいまいちわからないという人であっても、少年マンガの主人公のように飛躍する藤井竜王の活躍は耳に届いているはずです。

　しかし、そんな藤井竜王であっても、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下『こち亀』)に描かれている、「変わり将棋」には度肝を抜かれることでしょう。136巻収録の「変わり将棋王両津！！の巻」では、両津勘吉が婦警の擬宝珠纏（ぎぼし・まとい）と将棋対決をします。

　実は将棋の腕に自信のある両さんですが、頭のいい纏には勝てない様子。アツくなりやすい両さんは、負けるたびに将棋盤をひっくり返すので、その度に駒を紛失してしまいます。そして、失くした駒の代わりとして、目薬・消しゴム・5円玉など好き勝手なアイテムを代理駒として使い始めた両さん。すると勝負が進むにつれて、段々どれがなんの駒の代理だったかわからないカオスな状況に……。

　ただ、そんな奇策を尽くしても、両さんは纏に勝てませんでした。負けず嫌いの両さんは、纏の代理駒が小さくて目立たないからだと考えます。両さんが新しく選んだ代理駒は、針、髪の毛、透明のプラ板などの非常に見えにくいものでした。挙句の果てには、全て代理駒で将棋を始めたのです。

　こうした姑息な手を尽くしても、結局負けてしまった両さん。これは根本からやり直そうと、中川の紹介で将棋の先生に弟子入りします。

　しかしさすがは『こち亀』というべきか、そこで登場する師匠も一風変わった、「トンデモ将棋」をたしなむ人でした。囲碁盤を使った「囲碁将棋」や、ミニカーを使った「ミニカー将棋」といった謎将棋を学ぶことになります。しかも師匠と対決して勝つたび、授業料として5000円を請求される謎のシステムでした。

　とはいえこうした修行のおかげなのか、ついに両さんは纏に勝利。しかし、それは駒の高さが50cm以上ありそうな「厚底将棋」で、纏が負けたのも「見づらさが原因のミス」でした。一時は纏に勝てたと喜ぶものの、纏に「わけのわからないゲーム」と言われて「むなしい　将棋で勝った気がしない」と我に返る両さんなのでした。

『こち亀』では将棋がテーマの話は意外に多く、その後も将棋ネタが数多く登場します。163巻収録の「中将棋の巻」では、両さんが独自の将棋ルールを開発。「会社将棋」と名付けたその将棋は、両さんが会社の階層制度で駒を作ったものです。王将が社長、歩兵が平社員になっており、社長の近くには「イエスマン」が多く、さらに「美人秘書」「愛人」の駒もあるという生々しいものでした。

　駒の動きも両さんが独自で考え、「美人秘書が敵陣に入ると愛人になり、全方位20マスまで自由に進める」というとんでもないルールも存在します。他にもキャバ嬢、奥さん、弁護士の駒が登場するのですが、少年誌らしからぬ設定に、思わず中川も止めに入るのでした。

　また、この「中将棋の巻」において、両さんは「中将棋」と呼ばれる、江戸時代から遊ばれていた将棋を知ることになります。通常の将棋は9×9のマス目ですが、中将棋は12×12マスで行われ、普通の将棋にはない駒も登場します。通常の将棋よりもダイナミックな動きができるため、両さんは中将棋の魅力にハマりました。

　ここまでなら従来からある将棋なのですが、両さんは「中将棋」のサイトにあった駒が多すぎる「大々将棋」なども見て、仰天。そして、「中将棋の巻」の次の話「将棋革命の巻」にて、本来の将棋の駒を4セット使った「大々将棋」を考案します。

　将棋盤自体も2枚セットで広くなり、4枚ある王将のうち3枚は「影武者」という複雑な将棋で、歩の数が異常に多いのが特徴です。「これなら守りの陣形は作れないだろ！」と豪語する両さん。ひたすら相手を攻める戦法を駆使して、いつも将棋で負けてばかりいた部長や纏相手にも勝利しました。ただ、vs纏戦では、「王将4枚全部の裏に影武者と書いておく」という卑怯な手を使っていましたが。

　ちなみに『こち亀』のなかで一番駒の数が多かったのが、「中将棋の巻」のオチで出てきた「超無限級会社大将棋」です。駒の数7500枚と「世界一駒の多い将棋」を作ったものの、「駒が多すぎて動き方が覚えられない」「隙間がなくて駒が動かせない」といった欠陥が見つかり、対戦が200時間にまで到達するというオチでした。

「遊びの天才」両さんなら、たとえ藤井竜王が相手でも、奇々怪々なオリジナル将棋ではいい勝負になる……かもしれません。

（LUIS FIELD）