『ぬ～べ～』の最恐トラウマ回 「見開きで衝撃」「進撃の巨人にも影響？」

■一度見たら忘れられない衝撃のビジュアル

「週刊少年ジャンプ」で連載されていた、学園ホラーコメディ『地獄先生ぬ～べ～』（原作：真倉翔・作画：岡野剛）は、ギャグ要素満載の読みやすい作品でありながら、油断しているとさまざまなタイプの恐怖が襲いかかってきます。そのため、ファンの間でたびたび話題に上がるのが「どの回が1番怖かったか」というテーマです。今回は、大人になった今でも思いだして夜道が怖くなるような、トラウマ級のエピソードをご紹介します。

「Aがきた！の巻」は、子供に深い恨みを持つ怪人「A」がぬ～べ～の生徒たちの前に現れるエピソードで、初期のトラウマ回として知られています。

「A」とは、赤いマントに大きなシルクハットを被り、仮面で顔を隠した奇妙な怪人で、「赤が好き？白が好き？それとも青が好き？」と子供たちに尋ね、答えが赤なら「血まみれにして殺す」、白なら「全身の血を抜いて殺す」、青なら「水に沈めて殺す」という凶悪な殺人鬼です。ぬ～べ～の生徒たちにも同様の質問をして襲いかかり、恐怖に陥れます。

　ラストの演出の影響で、作中の出来事なのか、現実でも起こり得ることなのか、境目が曖昧になるような雰囲気が感じられ、ネット上でも「妖怪や幽霊ではなさそうなところが怖い」「下校の時間が嫌になった」と、子供時代の恐怖を思い出す声が多く上がっていました。

「人食いモナリザの謎の巻」に登場する「人食いモナリザ」は、衝撃的なビジュアルが読者の強いトラウマとなったようです。図工室に飾られたモナリザの絵から巨大な顔が飛び出し、夜中に学校へ忍び込んだ生徒たちを襲います。描かれたあのポーズのまま飛び出してくる様子はシュールで、ある種の可笑しさも感じるのですが、口裂け女のような口元と剥き出しになった歯や牙、カッと開かれた目は恐ろしく、人間がぱっくり食べられてしまうという噂も納得の迫力がありました。

　各所のインタビューで『ぬ～べ～』に影響を受けたと語っている『進撃の巨人』の作者・諫山創先生も、小学生時代に読んだこの回がトラウマだったそうで、自身が描く巨人のコンセプトも「人食いモナリザ」から来ていると分析しています。読者の間では、「寄生虫の巻」や「泥の巻」とともに、「『ぬ～べ～』は視覚的に気持ち悪い回がトラウマ」「ビジュアルが本当にきつい」と、怖い場面が脳裏に焼きついてしまう人が続出したようです。

　視覚的な恐怖といえば、「見開き」を使って驚かされる演出も『ぬ～べ～』あるあるです。「見たら死ぬ！海難法師の巻」はそのうちのひとつであり、大きなトラウマを残すエピソードとなりました。海で亡くなった死者の集合体である「海難法師」は、見たら死ぬ妖怪として紹介されています。

　その設定上、ぬ～べ～でも相手をすることが難しく、完全に成仏させられないところが恐怖心を煽るのですが、社に祀られている鎮魂の像を解放し、どうにか封印しようと試みるのでした。その封印直前の見開き2ページこそ、背筋が凍るトラウマ必至の場面です。

「赤いチャンチャンコの巻」などでも同様の手法が用いられており、「結局、見開きドッキリ系が一番怖い」「夢に出てきそう……」というコメントが上がっていました。ページを開いたら突然「ドーン！」と現れる妖怪や幽霊のドアップに、根深いトラウマを植え付けられた人は多いのではないでしょうか。

『ぬ～べ～』では都市伝説系のエピソードも人気が高く、なかでも「メリーさんの巻」は最恐回といわれています。「メリーさん」はいじめが原因で自殺した少女の霊で、生前から強い霊能力を持っていたことが起因して悪霊と化してしまった存在です。標的にした子供に手足のない人形を渡し、1週間以内になくなった部位を見つけられなければ、標的からその部位を引きちぎるという恐ろしい悪霊でした。

　除霊が不可能、幻覚を見せてくる、殺意が高く狡猾な性質、悲しい境遇など、一度見たら記憶に残ってしまう要素がてんこもりな上、前後編に渡ってしっかりと描かれたエピソードなので、ストーリーだけでもじわじわと追い詰められるような怖さがあります。さらに、遠目には真っ白な姿をしたメリーさんがドアップで映し出されるシーンでは、長い前髪の間から覗く奇妙な瞳や、可哀想なほど傷だらけになった顔が露わになり、思わずゾッとしてしまいます。

　重たい余韻を残すラストもなかなかに後味が悪く、「圧倒的トラウマ」と名高いエピソードとなりました。

（椎崎麗）