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アニメ『デビルマン』最終回の「珍事」から50年 話が2つあった背景に「野球」の影響?

マグミクス / 2023年3月31日 6時25分

アニメ『デビルマン』最終回の「珍事」から50年 話が2つあった背景に「野球」の影響?

■急きょ作られた「もうひとつの最終回」

 本日2023年3月31日は、TVアニメ『デビルマン』の38話「妖獣ドリムーン 月は地獄だ」が放送されてから、ちょうど50年目となります。本放送時、テレビ朝日及び系列局では最終回として放映されましたが、それ以外の地方局では39話「妖獣ゴッド 神の奇跡」がラストを飾っており、最終回がふたつ存在するという、極めて珍しい事例となっています。

 なぜ『デビルマン』には最終回が2回もあるのか。その理由は、かつてアニメを見たい子供たちをさんざん苦しめた、プロ野球が大きく関わっています。

 本放送時、関東圏での『デビルマン』はNET(現:TV朝日)で土曜の20:30からお茶の間を賑わせていました。つまり、プロ野球の放送時間と重なります。特に1972年の7月22日には「プロ野球オールスターゲーム第1戦」がNETで放送される予定となっていたため、その分を最初から除き、『デビルマン』は3クール38話が制作されることになっていました。

 しかしNETや系列局以外の地方局ではオールスターが放送されなかったため、1話分の放送枠が空いた状態となっていました。そこで穴を埋めるために「妖獣ゴッド 神の奇跡」が制作される結果となったのです。

 脚本を務めた辻真先先生によると、ドリムーンで宇宙規模にまで話を膨らませて最終回としての体裁を整えたと安心していたら、急きょもう一度最終回を作ることになったとのこと。そんな状況でありながらデビルマンに対する最後の敵として神を意味するゴッドを登場させ、不動明を牧村美樹の前で変身させるなど、非常に見ごたえのある展開となっているのは、さすが辻先生……としか言いようがありません。

 結局、「ドリムーン」が最終回として放送された地域の人が「ゴッド」を観たのは、再放送時のこととなりました。『デビルマン』は1970年代から80年代にかけて数え切れないほど再放送が行われているため、今となっては最終回として「ドリムーン」を観たことがある方はむしろ貴重な経験をした人といえるでしょう。

■1つめの最終話「ドリムーン」もかなりの強敵だった

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 さて、そんなドリムーンですが38話の冒頭で、引力で月を操り地球へと接近させるという離れ業(わざ)を見せています。もともとは最後の敵として考えられていただけあって、とんでもない能力です。月の質量はMLという単位で表示されますが、1 MLは7.34581±0.00073 × 1022 kgとなっています。わかりやすい数字に直すと約6755京トンになるため、具体的な感覚をつかむのは不可能といえるでしょう。ドリムーンの持つ力がどれだけ凄まじいのかが見て取れます。

 月が近寄ってきたことにより、世界中が大混乱に陥ります。南アメリカでは海が干上がり、逆に日本では潮位が大幅に上昇、東京や大阪、札幌、広島など主要な都市が水浸しになってしまったのです。

 そこかしこで家が浸水していますが、不動明は1人用のゴムボートを使って差し入れをしていますし、アルフォンヌ先生はのんびり釣り糸を垂れています。明だけでなく、一般人もデーモン族との戦いで起こるさまざまな異常事態に慣れっこになっているのかもしれません。

 当初は敵の正体がつかめなかった明でしたが、美樹との会話の中で、引力を操るドリムーンが今回の事態を引き起こしたことに気付きます。デビルマンに変身して必死になってドリムーンの姿を探し回り、ドリムーンが月にいることを察知しますが、デビルマンといえど月へ向かうのは難しいことでした。

 もはや地球には帰れないかもしれない。美樹の寝顔を見ながら決意を固めた明は再びデビルマンに変身し、遥か彼方の月へと飛び立ちました。

 しかしドリムーンは月にはおらず、人工衛星のなかに潜んでいたのです。人工衛星の軌道は地上から200kmから1000kmの「低軌道」と約3万6千キロ付近の「静止軌道」のふたつが存在しています。仮に静止軌道だったとしても、地球と月の距離である38万4400 km(ある程度は近づいていますが)に比べればはるかに近距離。デビルマンにとっては好都合な状況となりました。

 激闘の末にデビルマンは難敵ドリムーンを撃破し、太陽の光に迎えられて美樹の待つ地球へと帰還します。話のスケールとしては確かに最終回としての体裁は保っていますが、ゴッドの登場する回を知っていると、やはり少々物足りない感はあります。やはり最後は、明と美樹には一緒にいて欲しいものです。

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