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『装甲騎兵ボトムズ』放送から40年 主人公とメカはロボットアニメの「常識」を粉砕?

マグミクス / 2023年4月1日 6時10分

『装甲騎兵ボトムズ』放送から40年 主人公とメカはロボットアニメの「常識」を粉砕?

■「主人公機」でない言葉がタイトルになった理由

 本日2023年4月1日は、1983年にTVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』が放送開始した日。今年で40年になります。現在まで人気が続く作品の魅力について振り返ってみましょう。

 まず本作を知らない人が誤解する点として、『ボトムズ』の主人公ロボは「ボトムズ」という名前ではないことが挙げられます。ボトムズとは、「Vertical One-man Tank for Offence & Maneuver-S(攻撃と機動のための直立単座型戦車)」の略称。さらに、パイロットの命よりも効率を重視した最低のマシンであることから付いたスラング「Bottoms(最低の奴)」と設定されていました。

 つまりボトムズは作中に登場するアーマードトルーパー(略称AT)という、人型兵器の俗称となります。本来のロボットアニメなら主人公ロボの名前がそのままタイトルになりますが、その点からも『ボトムズ』は普通の作品と違ったといえるでしょう。

 この『ボトムズ』の主人公がキリコ・キュービィー。無口で不愛想、それまでのロボットアニメの定番だった熱血タイプの主人公とはまったく異なるタイプの主人公です。しかし、このキリコのキャラとしての魅力が、本作が人気となった要因のひとつでした。実際、キリコは1983年のアニメグランプリでは男性キャラクター部門1位に輝いています。

 キリコは外見的な性格は確かに冷たい感じがあって主人公的なタイプではありませんでしたが、内面的には仲間を大切に思い、思慮深くやさしい一面を秘めていました。戦いのなかで出会った「パーフェクトソルジャー(PS)」のファンタムレディを「フィアナ」と呼び、純愛を貫く姿はまぎれもなく主人公たる姿です。

 このキリコを演じたのが郷田ほづみさん。たいへんむずかしいキリコという役どころを、初主演作にもかかわらず絶妙に演じています。今では声優として有名な郷田さんですが、当時は人気お笑いトリオ「怪物ランド」の一員としても知られていました。この怪物ランドが中心となった深夜バラエティ番組『ウソップランド』が、同じ年の秋から放送されたこともあって、当時は声優というよりもそちらで一般的には話題になっていたこともあります。

 本作は人気ロボットアニメ作品らしく、放送終了後にもいくつかの続編や外伝が製作されました。ここで特筆するのは、続編にあたる作品のほとんどの主役がTV版と同じキリコだったこと。他のロボットアニメで考えると、主役交代や世代交代をするのがほとんどですが、本作は一貫してキリコを中心とした作品となっています。

 それは、キリコにそれだけの魅力があるという点と、『ボトムズ』という作品のメインストーリーがキリコなくして語れないという点にあるのでしょう。そう考えると、主人公ロボの名前を廃した『装甲騎兵ボトムズ』というタイトルは、まさしくキリコが主人公であり続ける作品のタイトルに相応しい作品名なのかもしれません。

■量産型の機体に乗ることで描けた「リアル感」

主人公のキリコと、座り込むスコープドッグが描かれる、TVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』キービジュアル  (C)サンライズ

 それでは、タイトルには名を残さなかった主人公ロボについても振り返ってみましょう。

 この作品の主人公ロボにあたるのが、キリコが愛用した「ATM-09-ST スコープドッグ」です。その最大の特徴は、作品世界ではもっともポピュラーなATであり、どこにでもある一般的な量産機であること。つまりロボットアニメ定番の「主人公の乗る強力な特別機」ではありません。

 むしろ「やられメカ」にあたる存在であり、キリコのスコープドッグが敵の同型機と戦う姿は頻繁にみられました。そういった点では、『機動戦士ガンダム』における「MS-06 ザクII」と同じ存在ともいわれ、リアリティを追求した80年代のロボットアニメの主人公機として、ひとつの到達点ともいえるかもしれません。

 作中での扱いもATらしいリアルさを追求した描写が数多く見受けられます。たとえばスクラップのなかから使えるパーツをつなぎ合わせて1台のスコープドッグを作り出すこともたびたびありました。こういった風に簡単に作れることから、キリコがスコープドッグを乗り捨てるという場面もあり、より作品をリアルな感じを描けたわけです。

 この主人公が量産型のやられメカに乗ることで、よりその強さが描けるということにもなりました。敵のPSが使う「ATM-09-GC ブルーティッシュドッグ」や「XATH-02 ストライクドッグ」といった高性能機に互角以上の戦いを見せることで、キリコのテクニックが尋常でないことを示せるわけです。

 また、キリコがスコープドッグに乗り続けている理由も、「使い慣れているから」というシンプルな理由でリアリティを増していました。そういう点ではリアルを追求しながら、より強力な後継機に乗り込む他のロボットアニメとは一線を画していたのかもしれません。

 そういった点では、主人公メカとは思えないほどヒーロー性の薄いデザインであるスコープドッグも、キリコという存在によって『ボトムズ』の主役ロボというポジションを不動のものとしているわけです。

 近年ではJR南武線・稲城長沼駅前にて、実物大のスコープドックが展示されていました。4メートルほどの巨大でないサイズで比較的作りやすかったという理由があるにしても、実物大が製作されるほどの人気と注目度があるということでしょう。

 この他にもキリコの普段着ているのが、作中でも一般的なパイロットスーツという点も注目するポイントです。主人公のパイロットスーツと言えば、スペシャル感があるのが普通。一般兵士と同じものということは、実際の世界ならともかく、アニメの世界ではほぼありえません。

 なぜなら、ヘルメットまでかぶって顔を見せないと、絵的には誰が誰だかわからなくなります。あくまでキリコは一般兵士という部分を貫くということなのでしょうが、それが作品のリアリティをより高めていました。

 そんなリアリティのある作品感が多くのファンの心を引き付けたのは当然かもしれません。しかも、リアルさを前面に出したロボットアニメでは珍しいことに女性ファンも少なからずいました。その理由はやはりキリコというキャラの魅力なのでしょう。そういう点では他のロボットアニメにない作風が、本作の成功の原因だったと思います。

(加々美利治)

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