「心エグられた」スクウェアRPGの三大トラウマイベント 恋人の変わり果てた姿に絶望
マグミクス / 2023年4月5日 21時5分
■感情を揺さぶるスクウェア産RPGのトラウマ
名作と呼ばれるRPG作品には情緒を揺さぶる感動的なシーンがつきものですが、一方でプレイヤーの精神をえぐるような「トラウマイベント」も多々見受けられます。今回は1990年代に発売されたスクウェア(現スクウェア・エニックス)のRPG作品のうち、多くのプレイヤーに絶大なトラウマを植え付けたイベントシーンを3つご紹介します。
※記事の内容上、本文中にゲーム作品のネタバレ記述を含みます。あらかじめご了承ください。
●得体の知れない“缶詰工場”
「空腹は最高のスパイスと言われている通り、お腹が空いてる時は何を食べても美味しく感じるものです。しかし、特に気にせず口に含んだ食材の原料が想像を絶するものだったとき、果たして人は正気を保っていられるのでしょうか。
1998年2月11日発売の『ゼノギアス』(PlayStation)は、科学・宗教・哲学・社会情勢……等々、さまざまな題材が複雑に絡み合ったストーリーが印象深いRPG作品です。同作品に登場する国家「神聖ソラリス帝国」において、プレイヤーが操るフェイ(主人公)たちは食料生産を担う研究施設「ソイレントシステム」へ足を踏み入れます。
探索の傍ら、フェイとエリィ(ヒロイン)のふたりは施設に置かれていた缶詰を手に取ると、空腹を満たすために口へと運びました。ところが同行者のシタンは「私は遠慮しておきます」とやや意味ありげに伝え、その場で缶詰を食さなかったのです。不思議に思ったふたりでしたが、その理由はすぐに身をもって味わうことになりました。
食事を終えて調子を取り戻したフェイとエリィ。しかし、施設内で缶詰の製造過程を目の当たりにし、不吉な予感が次第に高まっていきます。
そこへシタンから告げられた衝撃の事実。缶詰に使われていたのは人型モンスターの死体、正確には人体実験の末に捨てられた“人間の成れの果て”。つまり、ふたりは知らない間に人肉を食べてしまっていたのです。
知られざる科学文明の暗部、あえて内容物を伝えず、缶詰を食べさせた後に理由を明かしたシタンの振る舞いも含め、『ゼノギアス』屈指のトラウマシーンとして広く知れ渡ることになりました。
●敵将と熱愛に溺れる幼なじみ
主人公のそばで寝食を共にし、時には将来を誓い合う仲へ発展することもある幼なじみ系ヒロイン。この図式はジャンルや媒体を問わず数多くの作品で見受けられる一方、「主人公とくっつかないまま別の誰かを好きになる」といったパターンも存在します。
それならまだしも、「想い合っていたはずの主人公をないがしろに扱い、眼前で新たな恋人とイチャつく幼なじみ」というのは、プレイヤーにとって相当なトラウマだと言えるでしょう。
その最たる例こそ、1996年2月9日発売の『バハムートラグーン』(スーパーファミコン)で描かれる「ヨヨの心変わり」です。
同作品の舞台・カーナ王国で時間を共有し、成長するにつれていつしかお互いを意識し合っていたヒロイン・ヨヨと主人公・ビュウ。しかし敵国の襲来を受け、ヨヨはビュウと離れ離れになってしまうのです。
自国は壊滅し、敵国の手中で監禁されたヨヨ。そこに手を差し伸べたのは、あろうことか敵であるはずの将軍・パルパレオスでした。身内を亡くし、知らない場所で孤独にあえいでいたヨヨ。彼女の心は自然とパルパレオスへと傾いていき、主人公を想う気持ちは次第に薄れていったと思われます。
その心理状態をよく表しているのが、主人公と再開後もとどまるところを知らないヨヨとパルパレオスの熱愛シーンです。本編にて同じ釜の飯を食べる関係(仲間)になった主人公と敵将のパルパレオス。そこには主人公ではなく、パルパレオスを選んだヨヨの姿がはっきりと描かれています。
主人公の前で仲睦まじスキンシップを交わすのは序の口で、「パルパレオスを想うがあまりかつての仲間を邪険にする」、さらには「ヨヨの寝室を訪ねるとパルパレオスがせわしなく応答する」……といった生々しいシーンも多数収録。作中でヨヨが発する「大人になるって悲しいことなの……」というセリフは、主人公と一心同体であるプレイヤーを激しく揺さぶり、その心情に「淡い期待を寄せていたヒロインが別の男性に取られる」という最悪なトラウマを植え付けました。
■主人公の恋人を襲った悲劇の結末
1995年2月24日発売『フロントミッション』(画像はリメイク版) (C)1995, 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by Forever Entertainment S.A.
●宿敵に利用された恋人の身体
大国間のにらみ合いや植民地問題、軍需産業の暗部をシミュレーションRPGへと見事に落とし込んだ『フロントミッション』(スーパーファミコン)。1995年2月24日の始動からナンバリング作品が多数リリースされている人気シリーズで、スーパーファミコン版は後に「フロントミッション・ザ・ファースト」へと名称を変えて複数のリメイク版が誕生しました。
そんな第一作目でプレイヤーを驚愕させたのが、「カレンデバイス」と呼ばれるアイテムです。同シリーズでは兵士が乗り込む機動兵器「ヴァンツァー」が一般化していますが、カレンデバイスはヴァンツァーに取り付けるCPUとして登場。作中では、主人公が数度相まみえる宿敵・ドリスコルのヴァンツァーへ搭載されています。
上述の通り、『フロントミッション』ではゲームを進めるにつれ、戦争の陰で暗躍する支配階級の蛮行が明るみになっていきます。優れた兵士の経験をそのままCPUへ転用する、つまり「人間の脳を取り出して部品の一部にする」という非人道的な企みもその一部。
主人公は敵対国の実情を探る一方、かつての任務中に行方不明になった恋人のカレンを血眼で探していたのですが、願いもむなしくカレンが生体CPUへ利用されたことを作中で知ってしまいます。
「どこかでカレンにまた会えるかもしれない」という微かな希望を胸に生きてきた主人公。しかし現実はあまりにも酷く、目に入ってきたのは物言わぬ機械の一部と成り果てたカレンの姿でした。そこに追い打ちをかけるのが、ゲーム終盤のミッションで主人公を待ち構えていたドリスコルです。
「ここにはカレンもいる。一年前のままだ」、「カレンは、おまえなどにはもったいないほど素晴らしい女だ」。主人公をあざ笑い、辛苦に耐えて歩み続けたプレイヤーの心情を逆撫でするには十分すぎるセリフだと言えるでしょう。ドリスコル撃破時に映し出される入手メッセージ「アイテムを入手しました カレンデバイスBD-6Kr」が醸し出す寂しさも含め、『フロントミッション』を語る上で欠かせないイベントとして挙げられます。
(龍田優貴)
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