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『サザエさん』の「お隣さん」は2代目? 消された初代・伊佐坂家の謎

マグミクス / 2023年4月11日 6時25分

『サザエさん』の「お隣さん」は2代目? 消された初代・伊佐坂家の謎

■伊佐坂先生に髪がある!?

 磯野家の隣人といえば誰? と問われれば、『サザエさん』を見ている人ならば即座に「伊佐坂先生」と答えるでしょう。昭和の頃の『サザエさん』(あるいは火曜日の『まんが名作劇場 サザエさん』)に親しんでいた人なら「浜さん一家」と答えると思います。

 しかし、昭和40年代に『サザエさん』を見ていた世代、つまり今、50代、60代の人たちにとって、磯野家の隣人といえば、まず思い浮かぶのは「初代伊佐坂家」なのかもしれません。

 現在、磯野家の隣に住んでいる伊佐坂家は、作家の伊佐坂難物先生、妻のお軽さん、長男で浪人生の甚六さん、長女で女子高生の浮絵さんという4人家族。ハチという犬を飼っています。初代伊佐坂家は、現在の伊佐坂家とまったく同じ家族構成、まったく同じ名前でありながら、見た目がまったく異なるという一家でした。以下、詳しく見ていきましょう。

 初登場は1970年8月30日放送の「巨匠イササカ氏あらわる」。タイトルでわかるとおり、初代の伊佐坂難物先生も二代目の伊佐坂先生と同じく恋愛小説家でした。ハゲている二代目とは違い、頭髪はかなりあり、ワッチ帽がトレードマーク。和装が基本で、パイプと紙巻きタバコの両方をたしなみます(サザエが拝借してタバコを吸う場面もありました)。

 連載の依頼をすべて断るほどの売れっ子で、どうしても連載を引き受けてほしい出版社が、隣人で仲の良いサザエを編集者として雇ったことも。三河屋の三平さんも伊佐坂先生の小説の大ファンです。かなりの有名人でもあり、雑誌の座談会に出席したり、テレビ番組に出演したり、偽物が現れたりすることもありました。

 伊佐坂先生の妻・お軽さんは、フネと女学校時代の同級生。30年ぶりの再会を喜んだ後、ワカメを見て「お孫さん?」と勘違いしますが、今よりもずっと早婚早産だった昭和40年代なら無理もありません。

 メガネに和装というルックスは二代目のお軽さんと一緒ですが、顔にほうれい線がなく、フネよりもかなり若く見えます。サザエと一緒にレオタードを着て、美容体操に励むこともありました。気持ちも若かったようです。

 甚六さんと浮絵さんは、なんと初登場時、カツオとワカメと同じぐらいの小学生でした。ただし、隣家に小学生がふたりもいるのはお話を作り辛かったのか、それとも単なる手違いだったのかわかりませんが一度しか登場しませんでした。

■初代伊佐坂家はクセ強?

伊佐坂家はもともと『似たもの一家』の主人公だった。『サザエさんうちあけ話/似たもの一家』(朝日文庫)

 浮絵さんが久しぶりに登場したのは、71年10月24日放送の「としごろ民宿」。大学生として再登場した浮絵さんは、ポニーテールにジーンズ姿で肩にジャンパーをかけて「オーッス」と挨拶するなど、けっこうヤンチャな印象でした(初登場時も甚六を大声で「アニキ!」と呼ぶなどヤンチャな小学生でした)。

 さばけた性格の分、サザエたちには進んでいると思われていたようで、姿が見えなくなったら「駆け落ちしたんじゃないか」と疑われ、男友達のプロポーズの練習台になったら「学生結婚をするのでは」などと勘違いされてしまいました。伊佐坂先生とバーと居酒屋をハシゴして酔い潰れてしまったこともあります(今ならこのような描写は難しいでしょう)。カツオやワカメにとっては、「憧れのお姉さん」というより「翔んでるお姉さん」だったと思います。

 甚六さんも久しぶりに登場したときは浪人生になっていました。メガネはかけていませんが、ニキビ面は二代目と一緒。カツオたちと一緒に遊ぶことはなく、声も低めの落ち着いたお兄さんでした。

 その後、見事に大学合格しますが、大学生になっても浪人生の頃の勉強癖が抜けず、キャンパスライフをエンジョイしている姿は描かれませんでした。それにしても、妹の浮絵さんが大学生になっているのに、兄の甚六さんはまだ浪人生だったなんて……。甚六さんの心労がしのばれます。

 ペットも今とは違います。トムという名の犬で、お軽さんが「人間並みですわね」とさりげなく誇るほど賢い犬でした。お使いをこなすのは当たり前、留守番を任されたらクーラーの効いた部屋で休むことも。

 こうして振り返ってみると、かなり個性の強い一家だったことがわかります。それゆえストーリーに絡ませにくかったのか、庶民的だったお軽さんだけは何でもない場面で「お隣の奥さん」として顔を見せていましたが、伊佐坂先生、浮絵さん、甚六さん、トムは普段のエピソードにはあまり登場しませんでした。

 磯野家の隣人として仲良く過ごしていた伊佐坂家ですが、78年5月7日放送の「突然のお隣さん」で浜さん一家が引っ越してきたことによって姿を消してしまいます。お別れの様子などは描かれていません。どのような事情があったかはわかりませんが、個性の強い伊佐坂家が、日常的なホームドラマを志向していた『サザエさん』の世界にマッチしないと判断されたのかもしれません。

 85年に浜さん一家が引っ越して、磯野家の隣に二代目の伊佐坂家が引っ越してくると、まるで上書きされるかのように初代伊佐坂家の存在もなかったことにされてしまいました。『サザエさん』の特番に登場することもありません。

 とはいえ、『サザエさん』公式サイトに「初代の伊佐坂先生」という記述があるように、まったくの黒歴史というわけではないようです。配信されている過去の『サザエさん』では往時の伊佐坂家の活躍ぶりを見ることができるので、機会があったらぜひご覧になって懐かしんでみてください。

(大山くまお)

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