物議を醸したジャンプ漫画の最終回 「終わる終わる詐欺」「実は10年経ってました」
マグミクス / 2023年4月17日 12時25分
![物議を醸したジャンプ漫画の最終回 「終わる終わる詐欺」「実は10年経ってました」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_149405_0-small.jpg)
■面白い・面白くないではなく「衝撃」の最終回
2023年で創刊55周年を迎える雑誌「週刊少年ジャンプ」では、これまで数多くの人気マンガが連載されてきました。これまで数々のマンガが「感動の最終回」を迎え、「終わってほしくない」「もっと読みたかった」と完結を惜しむ声も出ています。
一方で、読者が思わず困惑してしまう「衝撃のラスト」を迎えた最終回もありました。たとえば、80年代を代表する伝説のギャグマンガ『3年奇面組』から続く『ハイスクール!奇面組』は、有名な「夢オチ」とも取れるラストで、今でも語り草になっています(これから起きる「正夢」を見ていたとも受け取れるラストです)。
今回は『ハイスクール!奇面組』の後にもいくつか出てきた、読者が困惑した「衝撃のジャンプマンガの最終回」を紹介します。
●最終ページの「みかん」にもメッセージが?『シャーマンキング』
1998年から2004年に渡って連載されていた『シャーマンキング』(作:武井宏之)は、霊能力者(シャーマン)の少年・麻倉葉がシャーマンの頂点を決める戦い「シャーマンファイト」で、強敵たちと戦っていく物語を描いた作品です。同作では味方・敵を問わず個性豊かなキャラクターたちが登場しますが、人類への怒りと憎しみを抱く敵キャラ・ハオは特に人気がありました。
そんな『シャーマンキング』の最終回では、ハオの元に向かう葉と仲間たちが、道中で一泊する様子が描かれています。同じ頃、地上で葉を待つヒロイン・恐山アンナはハオについて「このお話のお姫様は執念という魔王にとらわれた」と、物語の語り手・小山田まん太に語ります。アンナの言葉に噴き出したまん太は、その夜「プリンセスハオ」を救おうとする葉たちの夢を見た……という形で物語は幕を閉じるのでした。
唐突かつ意味不明な終わり方に読者は「どういうこと?」「いつの間にか終わった」とざわつきました。さらに最終ページにはなぜかみかんが描かれていますが、これは物語が「未完」であることを表していると言われており、いろんな意味で衝撃を与えています。
その後、『シャーマンキング』は350ページ以上にわたるストーリーの続きの描き下ろしを含めた完全版が発売、2020年には完全新作でアニメ化されています。さらに葉とアンナの息子・花が主人公の『シャーマンキングFLOWERS』をはじめとする新作や外伝の連載も始まっており、今もファンに愛される作品となっています。
●「俺たちの戦いはジャンプGIGAからだァァ!!」『銀魂』
アニメや実写映画、ゲームとメディアミックス作品も人気のマンガ『銀魂』(作:空知英秋)は、ジャンプ本誌で2004年から2018年まで連載されていました。SFや時代劇の要素を持ちながら、ギャグ展開を見せたかと思えば、人情味あふれる名ゼリフが登場したりと、カオスな作風も人気の理由です。
あらゆるパロディを堂々と行い、読者にも心配されるほどふざけ倒していた同作は、2018年の「週刊少年ジャンプ38号」で、扉ページにて「重大発表!!!最終回まで残り5話!!ラストスパート、お付き合いください!!」と告知されていました。
しかし、告知通りに終わらないのが、『銀魂』です。最終章の『銀魂』は、地球の破壊を目論む「虚(うつろ)」との壮絶な戦いの果てを繰り広げるという、これまでにない王道の少年マンガ的な展開を見せていました。
そして、作中で2年を経て、神楽に娘(?)の神流(かんな)が産まれていたり、新しい江戸の総理大臣として桂が就任していたりと、それぞれのキャラクターに大きな変化が訪れているなか、最終回の六百九十八訓「最終回を超えて行け」が始まります。虚復活の兆しから、バラバラになっていた万事屋の3人の銀時、新八、神楽が立ち上がり、彼らを中心に『銀魂』のメインキャラたちが集結、壮大な戦いが繰り広げられようとするのですが……。
しかし、アイドル・寺門通が突然、『テニスの王子様』作者の許斐剛先生が自ら歌った「テニプリっていいな」の歌詞を歌い出すと、桂が「ページが足りん」と白状し、最終ページでは、銀時が「俺たちの戦いはジャンプGIGAからだァァ!!」と宣言して、「週刊少年ジャンプ」本誌での『銀魂』は終わりを迎えます。約14年も連載していたのに、最終回で作者自作の歌詞を載せた『テニスの王子様』のパロディをして終わる、という衝撃のラストとなりました。
さらに、『銀魂』は「少年ジャンプGIGA」にて3回に渡って連載されるも、それでも完結できずに「銀魂公式アプリ」でついに完結しています。一部では「終わる終わる詐欺」とも称されていたように、『銀魂』はすんなり終わる方が読者のイメージとは異なる形だったのかもしれません。ジャンプ本誌最終回での、「銀魂は今週をもってジャンプを去りますが全然終わってません」「ゴリラ(近藤勲の結婚)から5回で話をまとめるのはゴリラには無理でした」などの、作者・空知英秋先生のコメントも話題を呼びました。
■まさかの「バッドエンド」の最終回も?
●まさかのオチ?『ピューっと吹く!ジャガー』
アニメ映画には豪華すぎるキャストも登場? 画像は『ピューと吹く!ジャガー いま、吹きにゆきます』ポスタービジュアル (C)2009「ピューと吹く!ジャガー」FLASH MOVIE 製作委員会
2000年より10年に渡って連載されていたギャグマンガ、『ピューっと吹く!ジャガー』(作:うすた京介)もまた、衝撃の最終回を迎えた作品です。
ミュージシャン志望の酒留清彦(通称・ピヨ彦)が、独特の風貌が特徴的な謎の笛吹男・ジャガージュン市(通称:ジャガー)に振り回される不条理ギャグマンガの同作は、シュールな笑いで人気を集めていました。『ピューっと吹く!ジャガー』は「突如として劇中劇が始まる」「メインキャラクターが一切出ない回がある」など、フリーダム過ぎる展開も数多く見られましたが、それは最終回も変わりません。
最終回直前の話でのジャガーの本物の父・ジャガージュン吉との再会も束の間、実の親細い線が並んだようなジャガーの目が、ずっと「閉じた状態」だったことを明かされ動揺するピヨ彦。そんななか、ジャガーはさらに「マンガがリアルの時間の流れとリンクして、作中でも10年経っていたこと」を告げます。26歳だと思っていたハマーは35歳になってハゲ散らかし、ピヨ彦も28歳になっていましたが、ジャガーはまだ20歳でした。
驚くピヨ彦の前で、ジャガーは特徴的な髪型に見せたカツラを外し、変装のために被っていた顔の皮をはがし……といったところでマンガは完結します。
その他のうすた京介先生の作品『すごいよ!マサルさん』の最終回は、唐突に「第2部・地獄校長編」が開始して1話のみで完結、『武士沢レシーブ』の最終回はダイジェストと年表を使って伏線を回収するという奇抜なものとなっています。最終回こそ、破天荒で唯一無二な「うすたワールド」の真骨頂が発揮される場なのかもしれません。
●ジャンプ作品としては信じられない「バッドエンド」『PPPPPP』
2021年から2023年にかけて連載されていた音楽マンガ『PPPPPP』(ピピピピピピ)(作:マボロ3号)は、最終回の展開が衝撃過ぎたあまり、Twitterで関連する言葉が次々トレンド入りする状況となっています。天才ピアニストの音上楽音(おとがみ・がくおん)を父に持つ7つ子たちをめぐる物語の同作は、バトルやギャグ作品が主流のジャンプにおいて異彩を放ち、注目を集めていました。
7つ子のなかで、唯一父譲りのピアノの才能に恵まれなかった主人公・園田ラッキーが兄弟たちとピアノで戦いながら、ピアニストを目指すストーリーは、一見すると「ジャンプらしくない」かもしれません。しかし、王道のバトル展開があるほか、演奏者によって異なる幻覚「ファンタジー」が表れる設定など、「週刊少年ジャンプ」らしい要素は随所に散りばめられていました。
人気の歌い手・AdoさんもTwitterで「面白い」と絶賛、単行本の帯にもコメントを寄せており、さらに「次にくるマンガ大賞 2022」でコミックス部門で5位に選ばれるなど、メディアでの期待も決して低くなかったのですが……。
そんな『PPPPPP』の最終回は、ラッキーのモノローグから始まります。そして、ラッキーのなかに存在していた「天才のラッキー」の人格が「凡人のラッキー」の人格から主導権を奪った後、楽音を殴って終わり……という結末を迎えます。
凡人のラッキーにとってはまさに救いがなく、「バッドエンドにも程がある」「ショック過ぎる」など、終わり方を嘆く声も急増し、「バッドエンド」がトレンド入りする珍事を招きました。アニメ化を期待するAdoさんのツイートもあったように、メディアミックス化を期待するファンも多かった分、凡人ラッキーの報われない結末が賛否両論となったのも仕方ないといえるでしょう。
(田中泉)
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