パパと子どもが主役のグルメマンガ3選 「今ある幸せ」読んで噛みしめる?
マグミクス / 2019年6月9日 15時0分
■ 家族と料理を愛する「理想のパパ」といえば、やっぱり――!
年々、題材の幅を広げつつ増加しているグルメマンガは、異世界のグルメ事情や、ドキッとするほどおいしそうに食べる女の子を描いた作品、恋愛に絡めた作品など、スポットの当て方もさまざまです。
なかでも特に読んでいてあたたかい気持ちになるのが、「さまざまなな事情で、思いで、子どものために料理を作るパパ」を描いた作品です。今回は、そんな親子の日常を描いたグルメマンガを3作品ご紹介します。
そのようなグルメマンガでもっとも知られている作品といえば、やはり1986年に第1巻が発売された『クッキングパパ』(うえやまとち/講談社)でしょう。
主人公は、娘と息子2人の子どもがいるパパ、荒岩一味。普段は「金丸産業」という会社に務め、真面目で堅物な主任として黙々と仕事をこなしていますが、彼にはちょっとした秘密があります。
それは、「料理と家族が大好き」ということ。会社の人には奥さんが作ったと話している美味しそうなお弁当も、実は自身の手作り。新聞社に勤め多忙を極めている妻・荒岩虹子を助けるべく、定時でいったん自宅へ戻り、子どもに食事を与えてから会社に戻る生活を送っている、とても家族思いのパパなのです。
発売から30年以上経っているため時代を感じるシーンも多いですが、いま読んでも十分楽しめる定番作品です。また、細かい分量などは書かれていませんが、登場する料理のレシピも分かりやすく記載されています。普段は家事や育児、料理をしないパパも、本書を読めば家族の一員として何かしてあげたくなること間違いなしです。
一方、料理をしたことがないのに、離婚や死別などの理由で、子どもに食べさせていかなくてはならなくなった、といったストーリーのグルメマンガもあります。『パパと親父のウチご飯』(豊田悠/新潮社)と『甘々と稲妻』(雨隠ギド/講談社)は、そのような境遇のパパたちが一生懸命料理に取り組む作品です。
■苦手な料理に一生懸命な姿に、思わずキュンとする?
『パパと親父のウチご飯』第1巻 (C)豊田悠/新潮社
『パパと親父のウチご飯』は、それぞれの事情で突然シングルファーザーになってしまった千石と晴海、その子どもたちの同居生活を描いた作品。千石は、料理はできますが子どもと自分の味覚の違いに悪戦苦闘。晴海にいたっては包丁にトラウマがあり、料理の経験もまったくありません。
そんなことはお構いなしの子どもたち、千石愛梨と晴海清一郎は選り好みが激しく、自分が食べたいものしか食べようとしません。
でも、それでもやっぱり家族であり、父親です。子どもたちを笑顔にしたい、ちゃんと栄養のあるものを食べさせたいと考え、2人とも親子で料理教室に通い始めます。そうして少しずつ子どもたちとの距離を縮めていきます。性格も料理の腕も全く違う千石と晴海ですが、それぞれ一生懸命子どもに愛情を注ぎ、本人なりに向き合っているのです。
この2つの家族の生活が同時に描かれる『パパと親父のウチご飯』は、比較的アップテンポでドタバタ色が強く、子育てのリアルが伝わってくる作品ですが、一方ゆったりとした親子のひとときを見ることができるのが、『甘々と稲妻』です。
『甘々と稲妻』は、死別によってシングルファーザーになってしまった数学教師・犬塚公平と、その娘・犬塚つむぎ、そして公平の教え子・飯田小鳥の、「食」で繋がる日常を描いた作品です。
公平は料理の経験がなく、仕事もあるため外食やお弁当、冷凍食品やパンなどで日々の食事をつないでいました。しかしある日、つむぎが料理番組にくぎ付けになっているところを見てしまいます。公平はそこで初めて「食」の大切さに気付き、自分で料理を作る決意をするのです。
同作品では、料理をする工程がとても丁寧に描かれます。ご飯を炊き、野菜を切り、出汁をとり、こむぎと一緒にこんにゃくをちぎる。丁寧にあくをとって、味見をして、できたごはんを一緒にを食べる。そのひとつひとつが、そして料理の間の待ち時間までもが、ある種のコミュニケーションであり、大切な時間なのだと伝わってきます。『甘々と稲妻』は、忙しい毎日を送っている私たちにとっても、心のオアシスになってくれる作品なのです。
今回紹介した3作品に共通して言えることは、人にはいろいろな愛の形があり、いろいろな幸せの形がある、ということではないでしょうか。誰もが経験している「食事」の描写が、作品と読者との共感の橋渡しをしているように思います。
日々を忙しく生きていると忘れがちなことが、これら3作品にはめいっぱい詰まっています。食を通して、グルメマンガを通して、“今ある幸せ”を改めて感じてみてはいかがでしょうか。
(きこなび 月乃雫)
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