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【漫画】戦士を夢見るギリシャ娘 力と勇気を見せるも、父から「恥さらし」と怒られて?【作者インタビュー】

マグミクス / 2023年4月25日 11時10分

【漫画】戦士を夢見るギリシャ娘 力と勇気を見せるも、父から「恥さらし」と怒られて?【作者インタビュー】

■唯一認めてくれた女性が素敵!

 古代ギリシャでは、女性にとって「結婚して家庭から出ないのが当然」という風潮がありました。しかし、男兄弟の末っ子として育ったイオは、「そんなものどうでもいい」と全く関心を持てませんでした。そればかりか、父と肩を並べられるような立派な戦士になることが夢で……。

 尾羊英さん(@a_aries06)が「結婚するより戦いたい女の子、家出して女主人の護衛になる」としてTwitterに公開された、創作マンガが話題です。本作は2023年4月7日に発売された『落ちぶれゼウスと奴隷の子』第2巻に収録されている第5話で、細やかな描写がとても魅力的な作品です。

 投稿されたツイートには、3.4万件以上のいいね、7000件以上のリツイートが付いています。読者からは「たまらん!!」「尊い」「自分の意志を強く持って戦える姫様かっこいい」「世界観にぐっと引き込まれた」などの声があがっています。

 作者の尾羊英さんにお話を聞きました。

ーー尾羊英さんがマンガを描き始めたきっかけや、漫画家としてのデビューの経緯を教えて下さい。

 小学校に入って、マンガ好きの父から『火の鳥』、『ポーの一族』や『ナウシカ』などの本をもらって夢中になり、真似してコマを割ったりしました。その後も受験で忙しい時期以外はマンガらしいものを描いていました。

 自然と漫画家になりたいと思うようになりましたが、医師になりたい夢もあり、医学部卒業が必須条件なので進路はそちらを選びました。入ってみると忙しくてほかの仕事を目指す余裕はなく、働き始めてからも趣味で描くことは続けていたものの、キャリアのことを考える頃にはマンガの夢は意識の後方に行っていました。

 でもあるとき、新年会で酔った上司に「君は医者で終わるつもりはないんだろう」と言われて「はっ!」としたというか……。どうして言われたのか分わからないのですが、「まだ漫画家の夢を諦められてないんだ」と思い知りました。その年の4月に「一年後の4月から二年間、漫画家を目指すために休職させてほしい、それで無理なら諦める」と人事担当の先生に相談し、許可を得て休職しました。件の上司には「残念だよ」と言われましたが感謝しています。

 読み切りを4本描きましたがデビューにはつながらず、そんななかで高校まで好きだったギリシャ神話と再び出会い、子供の頃は知らなかった逸話に触れることで情熱が再燃しました。「商業を目指すのはもうつらい、心赴くままに神々を描きたい」という思いからTwitterに神話創作用のアカウントを作り小ネタを投稿していたところ、マンガ雑誌の編集者様が声をかけてくださいました。最初は尻込みしていましたが、休職終了期限まであと半年、最後の挑戦だと思って奮起しました。

 結果、一年半のグダグダが嘘のようにエジプト神話の作品でデビューが決まりました。期限まであと1ヶ月だったので本当にギリギリでした……。

ーー本作が収録されている『落ちぶれゼウスと奴隷の子』は、全知全能の神ゼウスを自らの肉体に封印されていた少年の物語です。このお話はどのようにして生まれたのでしょうか?

「もしギリシャ神話で連載するなら」主役はゼウスしかいないと決めていました。ゼウスあってのギリシャ神話ですから。そんななかで「流刑の神々(ハインリヒ・ハイネ)」と出会いました。キリスト教の広まりと共に信仰を失った古代の神々がどこへ行ったのかを語ったエッセイですが、かつて栄華を極めたゼウスの悲惨な末路に胸を打たれました。「落ちぶれるゼウス」はここから着想を得ました。

 繁栄していた古代ギリシャ世界がペロポネソス戦争及びアテナイの疫病で傾いていく歴史と落ちぶれるゼウスが重なり、時代設定も決まりました。

 当時の社会の最底辺である異国人の奴隷、しかも無力な子どもに宿るというのがゼウスにとって一番の屈辱ではないかと思い、チェトの設定も固まりました。なぜエジプト人なのかについては今後作中で明かしていきたいですが、私自身エジプト神話も好きで、神話のクロスオーバーも好きなのでそちらの神々ともからめたい、という思いがあります。作中より後のヘレニズム期にはギリシャとエジプトの神々が同一視されたり合体して新しい神様ができたりと交わる部分が多いことも後押ししています。

著:尾羊英『落ちぶれゼウスと奴隷の子』第2巻(朝日新聞出版)

ーーストーリーだけでなく、背景や小物、衣装などの細やかな描写が読者も心をとりこにしています。この作品を描くうえで特に意識した点はありますか?

 ギリシャ神話世界と古代ギリシャ世界の両軸のため、ふたつの世界の区別を明確にしなければいけません。古代ギリシャの描写は古代ギリシャ研究家の藤村シシン先生に毎話取材させていただき、歴史上あった世界としてのリアリティを追求しています。ですが、あまり忠実にやろうとするとどうしても地味になってしまうので、画面の映えはいつも意識し、現代人が思う「古代ギリシャ」のイメージも適宜入れ込むようにしています。

 神々の世界はあまりギリシャっぽくしすぎないようにしています。そのかわりエピソードや神同士の関係性は常に神話に根拠があるように、ストーリーのために元ネタを無視するようなことがないよう常に意識しています。

ーーたくさんの感想が寄せられていますが、特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。

 社会や親から求められる女性の役割に馴染めないイオが、それでも自分の道を通そうとする様子に「勇気をもらった」「応援したい」など共感のお言葉をいただけたことが本当にうれしいです。現代日本とは一見何の関係もなさそうな古代ギリシャですが、今にも通じる問題が確かに存在します。イオの今後に想いをはせて下さり、ありがとうございます。

 もうひとつ、同時並行で連載しているコミカライズ「ふつつかな悪女ではございますが」の作画の人だ!と気付いてくださる方が多くてうれしいです。絵で覚えていただくのってかなり難しいことだと思うので……。本当にありがたいです。

ーー4月7日より発売された『落ちぶれゼウスと奴隷の子』第2巻について、改めて見どころをご紹介いただけますか?

 物語の舞台はアテナイからライバル都市国家スパルタへ移ります。「スパルタ教育」という言葉で日本にも名称が浸透しているスパルタですが、1巻から2巻途中にかけて描いてきたアテナイとは文化が大きく異なります。その違いの描写は力を入れたポイントのひとつです。アテナイとスパルタにおける女性の振る舞い方にも注目していただけたらと思います。

 神々の世界では、封印を解くために次に立ち向かわなければならない軍神アレスが新たに登場します。神話のなかでゼウスから「嫌い」と明言された息子神で、軍神なのに負けてばかりです。そんな彼がゼウスとどう戦っていくか見守っていただけたら幸いです。

ーー今後、発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 今は『落ちぶれゼウスと奴隷の子』とコミカライズ『ふつつかな悪女ではございますが』のふたつを連載しています。どちらも読者様に楽しんでいただけるクオリティを追求しながら無理なく続けていけるよう、体調やスケジュール管理をしっかりやっていきたいです。それとは別に、Twitter上で趣味の神話小ネタも引き続きアップしていきたいです。息抜きでもマンガが描きたい……!

(マグミクス編集部)

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