ゴジラの「噛ませ犬」じゃない! 平和の怪獣「モスラ」が映画史に残した影響
マグミクス / 2019年6月12日 19時40分
![ゴジラの「噛ませ犬」じゃない! 平和の怪獣「モスラ」が映画史に残した影響](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_15075_0-small.jpg)
■「ピースな怪獣」として愛されるモスラ
ハリウッド超大作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が2019年5月30日から日米同時公開されました。怪獣王ゴジラに加え、モスラ、ラドン、キングギドラといった、日本生まれの怪獣たちが続々と登場するので、日本の怪獣ファンには見逃せません。
しかも、今回の勝者は2020年公開予定の次回作で、『キングコング 髑髏島の巨神』(2017年)で髑髏島を制したキングコングと激突することでも話題を呼んでいます。
タイトルを見れば分かるように、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、ゴジラがメインキャラクターとなっています。では、モスラ、ラドン、キングギドラは、ゴジラの強さを際立たせるための「噛ませ犬」なのでしょうか?
そこで、ハリウッドではどうも脇役感のあるモスラ、ラドン、キングギドラたちのデビュー作を振り返り、東宝特撮映画の魅力を再発見してみたいと思います。
今回紹介するのは、優雅な造形から女性ファンも多いモスラです。初登場は、本多猪四郎監督の『モスラ』(1961年)。 『ゴジラ』(1954年)の公開から7年遅れてのスクリーンデビューとなりました。
モスラの原型となったのは、沖縄の八重山諸島に生息する世界最大の蛾・ヨナグニサン(与那国蚕)です。南国生まれの希少生物ヨナグニサンと同様に、モスラもどこかおっとりした平和的なイメージを漂わせています。ちなみに本多監督の出身地である山形県鶴岡市は、かつて養蚕業の盛んな土地でもありました。
映画『モスラ』の原作となったのは、幻想小説『発光妖精とモスラ』。戦後の人気作家である中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の3人によるリレー連作という、ユニークな手法から生まれたものでした。中村と福永は詩人としても活躍、堀田は後に「ベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)」の発起人になっています。1960年代に生まれたモスラのポエティックさ、平和を愛する怪獣という性質は、原作者たちの気質を強く受け継いだもののようです。
■宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』に影響も?
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』 (C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、中国の雲南省がモスラの出身地となっていますが、原作小説および東宝特撮映画では、南洋の孤島インファント島がモスラの故郷です。
インファント島で原住民たちから崇められる、巨大な卵から孵化した幼虫モスラは、まるでチョココロネのような愛らしい造形でした。
ちょこちょこと動くモスラは太平洋を泳ぎ、日本に上陸。高度経済成長のシンボルである東京タワー(原作では国会議事堂)に向かって糸を吐き、巨大な繭を作ってしまいます。都心に突如現われた巨大繭によって、首都機能は麻痺状態に。さらに繭からは極彩色の成虫モスラが飛び出すのです。
巨大怪獣が4段変身を遂げるというこのサプライズな設定は、『シン・ゴジラ』(2016年)のゴジラが第1形態(東京湾)、第2形態(蒲田)、第3形態(品川)、第4形態(鎌倉)と変態していく様子に受け継がれています。人知を越えた姿へと変容していく怪獣、それがモスラだったのです。
モスラのもうひとつの特徴は、コミュニケーション能力があるということです。インファント島で暮らす小美人(ザ・ピーナッツ)のテレパシーに感応し、小美人に危険が迫ると、体を張って守ろうとします。
宮崎駿監督は東映動画時代に『モスラ』を劇場で観たそうです。宮崎監督のブレイク作『風の谷のナウシカ』(1984年)では、主人公ナウシカと王蟲(オーム)と呼ばれる巨大生物が心の声で通じ合うシーンが感動的に描かれていましたが、どうやら宮崎監督は『モスラ』からかなり影響を受けていたようです。
インファント島の守り神である一方、東京を壊滅状態に陥れるという二面性を持つ怪獣モスラがいなければ、名作アニメ『風の谷のナウシカ』は誕生せず、怪獣と人類との共生を謳う『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』も、ずいぶん違った内容になっていたのではないでしょうか。
双子の女性デュオ、ザ・ピーナッツがインドネシア語で神秘的に歌う「モスラの歌」が流れる怪獣ミュージカル映画『モスラ』を、ぜひ一度ご覧になってみてください。
(長野辰次)
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