実は「闇が深い」子供向け番組・3選 激重エピソードに「後味悪すぎ」

■実はハードなSF作品だった『がんこちゃん』

　子供向けアニメや教育番組といえば、ほのぼのとした世界観を描いているイメージが強いでしょう。ですが大人の目線で見返してみると、その設定やテーマが重すぎることに驚かされてしまうかもしれません。意外に闇が深かったり、社会問題に切り込んだりと、子供向けらしからぬ側面を秘めていることがあるのです。

●ざわざわ森のがんこちゃん

　まずご紹介したいのは、1996年に放送がスタートした小学校低学年向けの道徳番組『ざわざわ森のがんこちゃん』です。

　同作をひと言で説明すると、恐竜の女の子・がんこちゃんと仲間たちが珍騒動を繰り広げていく人形劇。浮かれた曲調のオープニングも印象的で、底抜けに明るい作風に見えるかもしれませんが、ショッキングな世界観が隠されていました。

　というのも、がんこちゃんたちのいる世界は、実は人類滅亡後の超未来。物語の舞台となる「ざわざわ森」の周りには砂漠地帯が広がっており、なんとその砂は人間のなれの果てだったのです。

　この設定を暗に示したのが、『ざわざわ森のがんこちゃん エピソード0』。がんこちゃんがひょんなことから過去へタイムスリップし、その先で人間の兄妹と友達になるという話でした。

　しかしタイムスリップした世界は人間が砂化する謎の現象に脅かされており、物語終盤ではとうとうお兄ちゃんまでもが砂化してしまいます。そうとも知らず、がんこちゃんは妹を残して現代に帰還することに……。

　なんとも後味の悪いエピソードに、放送当時ネット上が「普通にハードなSF展開じゃねーか！」「虚淵玄みたいなストーリー」「本当にコレ、がんこちゃんか？」とザワついたことは言うまでもありません。

■ただの魔女っ子ファンタジーかと思ったら……

「何のために生きるのか」を自覚しないと「いのちの星」の炎は失われる？　画像はDVD『それいけ！アンパンマン いのちの星のドーリ』（VAP）

●おジャ魔女どれみ

　1999年に朝日放送・テレビ朝日系列で始まった「おジャ魔女どれみ」シリーズは、小学生の春風どれみたちが、魔女見習いとしてさまざまな試練を乗り越えていく物語です。心躍る魔法の世界だけでなく、子供たちのリアルな悩みにも焦点を当てており、暗くて重い人間ドラマを見せつけてくることもありました。

　たとえばアニメ3期『も～っと！おジャ魔女どれみ』第20話は、5年生になってから一度も学校へ来ていないクラスメイト・長門かよこにスポットを当てたエピソードです。「不登校」というテーマに真っ正面から切り込んだだけでなく、通学路の途中で吐き気をもよおす心理描写などはリアリティたっぷり。

　さらにこの問題が1話で解決に至らないところも、女児アニメらしからぬ妙なリアルさを漂わせています。

　またOVA作品『おジャ魔女どれみ ナ・イ・ショ』では、友達の病死が描かれたこともありました。病気やケガは治せない、魔法でも解決できないことがある――。『おジャ魔女どれみ』で描かれているのは、何も魔法を使う楽しさばかりではありません。

●それいけ！アンパンマン

　やなせたかし先生原作のアニメ『それいけ！アンパンマン』も、子供向けとは思えないエピソードが数多く存在することで有名です。

ですが、そもそもアンパンマンたちのいる世界からして、背景には深い設定がありました。アンパンマンワールドには時折、「いのちの星」が降り注ぐことがあり、アンパンマンはそれをパンの種に宿して生まれた生命体なのです。

　さらに「何のために生きるのか」を自覚していない生物は、自身に宿る「いのちの星」の炎が小さくなり、やがて消えてしまう……という設定も。いのちの秘密については2006年7月に公開された映画『それいけ！アンパンマン いのちの星のドーリィ』で言及されており、人形のドーリィが自身の生きがいを見出せず、「いのちの星」の炎が少しずつ消えていく様子が描かれていました。

　ちなみにアンパンマンの生きがいは、困っている人を助けること。生きがいを見つけたおかげか、今やアンパンマンの「いのちの星」は光となり、体に溶け込んで見えなくなっているそうです。

　作品の裏に隠された設定やテーマの面白さを理解できるようになるのも、大人になった証。思い出のアニメを見返してみると、新たな発見に出会えるかもしれませんね。

（ハララ書房）