「隠れた名作」なファミコンRPG・3選 今はまさかのプレ値?
マグミクス / 2023年4月22日 21時25分
![「隠れた名作」なファミコンRPG・3選 今はまさかのプレ値?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_151040_0-small.jpg)
■今や5桁のプレミア価格に!
コンピュータRPGが国内で一気に広がったのは、ファミコンの普及と『ドラゴンクエスト』シリーズなどの人気作が続々と登場したおかげです。その前からPC向けにはいくつもの名作RPGがリリースされていましたが、一般ユーザーへの広がりはファミコンの存在なくしては難しかったことでしょう。
そこから一大ブームを迎え、しばらくRPG黄金期と呼ばれるほどの盛り上がりが続きます。数多くのRPGが世に放たれたため、人気作もあれば認知されずひっそりと消えていった作品もあり、明暗がはっきりと分かれた時代だったとも言えます。
しかし、認知度の高低と作品の価値は、必ずしも一致しません。むしろゲーム業界の場合、広く知られてなかったゲームが中古市場だと高値がつく、といったケースが多々あります。
筆者はRPGが好きでしたが、子供だったため自由に使えるお金はごくわずか。しかし、より多くの作品を遊びたかったので、リサイクルショップで安くなったRPGをよく購入したものです。人気がないと安くなりやすいので、当時は2~3千円台のファミコンRPGを買い漁っていました。
人気がなくて安いRPGはマイナーなものが多く、当時のファミコン仲間たちは遊んでいないどころか、タイトルすら知らない場合も珍しくありません。そのため、面白さを誰とも分かち合えず、寂しい思いをしたものです。
ですが、当時お手頃価格で購入したRPGのいくつかは、今や定価を余裕で超える中古相場になることも多々(完品かつ傷なしの場合含む)。コレクター向けの価値とはいえ、あの時は友達相手の話題にすら上らなかったマイナーRPGたちが、時を超えて関心と注目を集めており、なんだか嬉しく感じるばかり。
現役のファミコン少年たちにもあまり知られず、しかし今や定価超えの価値を見出されたマイナーなRPGたち。そんなマニアックな世界の一部を、皆様にお届けします。
●『AD&D プール オブ レイディアンス』
「RPG」とはロールプレイングゲームのことで、元々は「役割を演じる」という遊びを指す言葉でした。この遊びをルール化した世界最初のアナログゲームが「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以下、D&D)。この作品から派生した流れのひとつが、コンピュータRPGに繋がっています。
そんな「D&D」から発展した「アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ」を原作とし、コンピュータRPGに落とし込んだのが、1991年に発売されたファミコンソフト『AD&D プール オブ レイディアンス』です。
当時、ファミコンなどで流行っていたコンピュータRPGは、『ドラゴンクエスト』のような平面のフィールド探索型がメインでした。そのフィールドを移動して町やダンジョンを訪れ、世界の隅々まで冒険できる魅力がありました。
しかし本作は、3D視点で移動する町を拠点とし、クエストを受諾して冒険に挑むスタイル。世界の片隅で、狭い分だけより深く冒険へと関わります。
またバトルも個性的で、まず敵の多さに驚かされます。当時のRPGだと敵が群れを成して襲い掛かるにも限度がありました。『ウィザードリィ』では複数の敵が大挙する場合もありますが、「(6)」といった数字で表現。ファミコンの性能上、多数の敵を表示するのは難しかったのです。
しかし『AD&D プール オブ レイディアンス』では、優に10体を超す敵の群れを相手にすることもしばしば。集団で襲い掛かるザコが多く、戦士が複数の敵を薙ぎ払ったり、魔法使いが「かきゅう(ファイアーボール)」で一定範囲を焼き尽くしたりと、大規模な戦闘を繰り広げる楽しさがありました。
ただしその代償として、戦闘中のグラフィックは簡素。一見するとユニット単位で戦うシミュレーションゲームのような装いですが、それにしてもやはりシンプル過ぎます。
元々はアメリカで作られ、しかもオリジナル版はPC向けのタイトルでした。そのため、日本のファミコン少年たちの心をくすぐるようなグラフィックではなかったのが、認知されにくかった理由なのかもしれません。
そんなマイナー作品も、現在の中古市場だと1万円を超える場合がほとんど。フリマアプリなどで安く出ている時もありますが、そうした例外を除くと基本的に定価よりも高い相場で売り買いされています。
■ファミコン時代のマイナーRPGに栄光あれ!
5人パーティと複数の敵が入り乱れるアクションバトルを、ファミコン時代に成し遂げた意欲作『ラディア戦記 黎明篇』
●『ダークロード』
続いて紹介する『ダークロード』も一般的な広がりのあるフィールドマップがなく、拠点とする街とクエストを行き来するタイプのRPGです。ただしこちらは、原作のない完全オリジナル。そのため、知名度という点では『AD&D プールオブレイディアンス』よりも低いかもしれません。
『ダークロード』のパーティの構成は、最大で3人。本作はファミコン後期の1991年に発売されており、ファミコンでも4人パーティが珍しくない時代でした。ひとつの町に根を下ろし、フィールドもなく、『AD&D プールオブレイディアンス』のような多人数対多人数といった派手さも『ダークロード』にはありません。
そのため、『ダークロード』があまり目立たず、地味な存在だったのは、一ファンとしても受け入れざるを得ないところ。ですが、知名度とゲームの面白さは必ずしも一致せず、本作も絶妙なゲーム性で筆者を虜(とりこ)としました。
パーティの人数こそ少な目ですが、ステータスの伸びに影響する職業の数が多く、しかも転職も可能。また、一部の職業を続けると特殊なスキルを身につけることがあり、スキルはいずれも冒険に役立つため、自分好みのキャラクターを育成するための試行錯誤が悩ましくも楽しいひとときでした。
また、本作に用意されたクエストは12個あり、いずれもクリアすると同じキャラクターでは再チャレンジできません。この限られた状況で、どのように仲間を強くし、ラスボスに立ち向かうのか。道中の試行錯誤が自分だけの冒険を形作り、この感覚を求めて何度クリアしても繰り返し遊んでしまいました。
当時のファミコン仲間には全くの無名だった『ダークロード』は、現在の中古相場だとおおむね1万円代後半。箱なしのソフト単品ですら1万円を上回ることもあり、「Nintendo Switch Lite」の中古品も買える程度の額です。30年以上経った今、これだけの価値を持つとは、当時遊んでいたユーザーとしても驚くほかありません。
●『ラディア戦記 黎明篇』
最後に紹介するのは、『ラディア戦記 黎明篇』。前述した2作品とはジャンルが少々異なり、こちらはアクションRPGです。また、フィールドもありストーリーも濃厚と、ゲーム性自体もかなり違いがあります。
完全オリジナルの作品で、しかも夜明けや明け方を意味する「黎明」をタイトルに冠しながら、続編などはなく一作限りで終わった『ラディア戦記 黎明篇』。他の2作品と比べても、知名度はさらに低いかもしれません。
ですが、本作は意欲的かつ刺激的で、プレイヤーを虜とする魅力に溢れていました。まず、ファミコン時代のアクションRPGながら、パーティ5人が入り乱れるリアルタイムアクションを実現。もちろんそこに敵も加わるので、多数対多数の乱戦を幾度となく繰り広げます。
自由に動かせるのは主人公だけで、仲間たちはオートで行動。その動きに合わせて戦況を見極めつつ立ち回るバトルは、ファミコン時代には珍しく、その面白さには目から鱗が落ちた思いでした。
また、プレイ意欲を高めてくれるストーリーも秀逸で、特に目を引いたのは盛り上がる場面に挿入されるムービーシーンです。もちろんムービーといっても、ファミコンなので映像が流れるわけではなく、キャラクターや乗り物、背景などはすべてドット絵で描写されています。
ですが、オープニングで描かれる飛行体同士のチョイスに始まり、緻密に描かれた飛空艇の離陸とそれを追いかける主人公の疾走、封印の解除に挑む主人公やヒロインの端正なビジュアルなど、頻度こそ多くありませんが、重要な場面をさらに印象深くする演出に驚かされたものです。
多人数が入り乱れるアクションバトルと、ストーリーを盛り上げるムービーシーンにより、ファミコンソフトでは唯一無二と言ってもいいほどの独自性を打ち立てた『ラディア戦記 黎明篇』。本作も、当時の知名度は推して知るべしですが、現在の中古相場は安くとも1万円代前半のプレミア価格です。
なお、『ラディア戦記 黎明篇』を制作したテクモは、アクションゲームの『忍者龍剣伝』なども手がけています。気合いの入ったムービーシーンがあったのも、頷ける話です。ちなみにテクモは後に合併し、現在はコーエーテクモゲームスとして活躍しています。
* * *
中古相場だけで見れば、今回挙げた3作品よりも高値のファミコンソフトはいくらでもあります。ですが桁違いに高いものは、希少性が高く評価されている場合が多く、ゲームの面白さは問われていないケースがほとんどです。
今回のような1万円前後のプレミア価格帯は、当時あまり評価されず販売本数が少なかったものの、後に再評価されて価値が認められたものが多く、改めて関心を寄せる甲斐があります。今回紹介した3作品だけでなく、他のプレミアソフトも調べてみると、意外な作品の再評価に驚かされるかもしれませんよ。
(臥待)
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