ロリコンブームの火付け役?『ルパン カリ城』クラリス人気の熱狂ぶり…宮崎駿監督「僕には無関係のこと」
マグミクス / 2023年5月5日 6時10分
![ロリコンブームの火付け役?『ルパン カリ城』クラリス人気の熱狂ぶり…宮崎駿監督「僕には無関係のこと」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_151670_0-small.jpg)
■「ロリコン」を多くの人に知らしめたルパンのセリフ
映画『ルパン三世 カリオストロの城』は、宮崎駿監督による初の劇場映画として知られています。宮崎ファン、『ルパン三世』ファンのみならず、多くの人に愛されている名画と言っても過言ではないでしょう。
後に続くスタジオジブリの宮崎作品の出発点としても知られる本作ですが、副産物としてもうひとつのブームを巻き起こしていました。それが「ロリコン」ブームです。「妬かない、妬かない、ロリコン伯爵!」というルパンのセリフで「ロリコン」というものを認識した人も多かったと思います。
『カリオストロの城』が公開されたのは79年12月のこと。公開当時、思ったほどの興行成績を上げられませんでした。しかし、テレビ放送や小規模な上映会などが繰り返されるうちに、徐々にカルトムービー的な人気を集めていきます。作品の出来が良いこともさることながら、人気を集めたのが清楚な美少女ヒロインのクラリスでした。
それまでにも同人誌や写真集などを中心に「ロリコン」ブームの下地は進行していました。ベストセラーになった少女ヌード写真集『LITTLE PRETENDERS』が発行されたのが79年1月、吾妻ひでおらが参加したロリコンマンガ同人誌『シベール』の刊行が始まったのが79年4月です。しかし、まだロリコンはマイナーな存在でした。
その後、『カリオストロの城』が公開され、クラリスが人気を博していきます。クラリスをテーマにした同人誌『クラリスMAGAZINE』が刊行されたのが80年9月のこと。
81年3月、アニメ専門誌『アニメック』が20ページを超える大特集「“ろ”は、ロリータの“ろ”」を組みます。クラリスをはじめとした美少女キャラクターの紹介や、それまでのロリコンに関するトピックを網羅的に集めた特集でした。編集したのは後に角川書店で社長を務めた井上伸一郎氏(現KADOKAWA上級顧問・エグゼクティブフェロー)。井上氏は「『正しいロリコンとはこういうものだ』ということを啓蒙したい」という思いを持っていたそうです(Gigazine 2022年12月13日)。
さまざまなロリコンに関する記事がラインナップされた特集の中で、5分の1をクラリスに関する記事が占めています。それだけクラリスの存在感が大きかったということでしょう。なお、表紙は『カリオストロの城』の「妬かない、妬かない、ロリコン伯爵!」とルパンが言うカットをそのまま使っていました。
■「ロリコン」人気に対する宮崎駿監督の反応は……?
『アニメック』81年17号(ラポート)
この特集を契機に、それまでマイナーだったロリコン同人誌が一気に数を増やしていきます。81年12月にはロリコンマンガ専門誌『レモンピープル』が創刊。雪崩を打ったように美少女を題材にしたコミック、同人誌、写真集などが大量に刊行されていきました。こうして80年代前半に怒涛のような「ロリコン」ブームが到来します。
並行してクラリスの人気も盛り上がっており、アニメ雑誌『アニメージュ』が主催する「アニメグランプリ」の「歴代ベストワンキャラクター部門」で83年、84年と続けて女性キャラクター1位を獲得しました。マンガ専門誌『ふゅーじょんぷろだくと』81年10月号のロリコン特集でもクラリスは取り上げられています。紹介文の書き出しは「いまやロリコンの代名詞」というものでした。当時は「クラリス・コンプレックス」「クラリス・シンドローム」という言葉もあったそうです。
クラリスの存在と前出の『アニメック』のロリコン特集が契機となり、それまでのアンダーグラウンドだった「ロリコン」と70年代後半からのアニメブーム(そのなかには美少女キャラクターを愛好するファンがすでに存在していた)が統合され、さらにコミックマーケットの膨張が重なって、「ロリコン」ブームにつながっていったと考えられます。
さて、このような世の中を当の宮崎駿監督はどう見ていたのでしょうか。『アニメージュ』82年6月号にはクラリス人気に関する宮崎監督のコメントが掲載されていました。
「クラリスに、“ロリコン”人気が集中しているということですが、ぼくには無関係のことだと思います。ただ、いまの若い人はロリコンを“あこがれ”の意味で使っているでしょう。思春期にはダレにも体験があることです。ぼくの場合も『白蛇伝』の白娘にあこがれた時期がありました。(中略)ぼくらはあこがれを“遊び”にはしなかったし、また、大っぴらに口にすることは恥ずかしかった。“恥じらい”があったんですよね。それがあったほうがいいかどうかは別問題ですけど、とにかくいまのぼくは“ロリコン”を口で言う男はきらいですね」
ここで宮崎監督が言う“あこがれ”とは、今でいうところの“萌え”に似た感情だったのかもしれません。また、そういう感情があったとしても、大っぴらに口にするものではない、とも語っています。ちなみに宮崎監督自身はクラリスのようなおしとやかな少女より、峰不二子のように素っ裸になっても機関銃を撃ちまくるようなさばけた女性が魅力を感じるのだそうです。
84年3月10日深夜に放送された『オールナイトニッポンスペシャル 風の谷のナウシカ』に出演した際は、「ひょっとしたら宮崎さんはロリコンなんじゃないでしょうか?」というリスナーからの質問に対して「ロリコンではありません」と断言。場内の笑いを誘っていました。
(大山くまお)
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