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「幻の大作」と呼ばれた実写版『火の鳥』 若山富三郎、草刈正雄ら豪華俳優が共演

マグミクス / 2023年5月3日 20時10分

「幻の大作」と呼ばれた実写版『火の鳥』 若山富三郎、草刈正雄ら豪華俳優が共演

■市川崑監督が撮ったファンタジー大作

 GWは自宅でゆっくりと、見逃していた映画や懐かしいマンガを楽しみたい。そんな人におすすめの一本があります。手塚治虫先生の名作マンガを実写映画化した、市川崑監督の『火の鳥』(1978年)です。

 若山富三郎、草刈正雄、林隆三、大原麗子、由美かおる、高峰三枝子、草笛光子、江守徹、仲代達矢ら、そうそうたる豪華キャストを配し、東宝系で全国公開されたファンタジー大作です。『犬神家の一族』(1976年)を大ヒットさせた市川崑監督の意欲作でしたが、長年にわたってパッケージ化されなかったため、「幻の超大作」とも呼ばれていました。

 2021年12月にようやくBlu-ray&DVD化され、現在はAmazon Prime ビデオでも配信されており、気軽に視聴することができます。マンガ史に残る名作の初めての映画化となった、市川崑監督による実写版『火の鳥』の見どころを紹介します。

実写版『火の鳥』が不評だった理由

 永遠の命を持つ不思議な生命体・火の鳥をめぐる、人類と宇宙の歴史を俯瞰して描く壮大なスケールの物語『火の鳥』は、「黎明編」「未来編」「ヤマト編」「宇宙編」……と、過去と未来を往復する形でマンガ連載が続きました。市川崑監督は第1部となる「黎明編」を映画化しています。女王・ヒミコが治める古代の日本が舞台です。

 手塚治虫作品でおなじみ、鼻の大きな猿田彦は若山富三郎さんが特殊メイクで扮しています。猿田彦と不思議な縁で結ばれる少年・ナギは、『転校生』(1982年)や『時をかける少女』(1983年)で注目を集めることになる、尾美としのりさんです。尾美さんは当時13歳。大物俳優たちを前に、堂々とした演技を披露しています。ナギと仲良くなるオロは、風吹ジュンさん。若き日の風吹さんのワイルドな美しさも要チェックです。

 映画はオープニングクレジットから目が離せません。「脚本・谷川俊太郎、テーマ音楽・ミッシェル・ルグラン、衣装デザイン・コシノジュンコ」といった大物スタッフや豪華キャストが、シャレた意匠でクレジットされています。庵野秀明監督の人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を思わせますが、もちろん市川崑監督が本家です、念のため。

 熊本県阿蘇山で撮影された雄大なロケーションを背景に、永遠の命を求める人たちの愛憎劇が繰り広げられます。山犬の襲来シーンや火の鳥は、アニメーションで描かれています。

 ちなみに本作が公開された1978年8月は、ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』(1977年)が7月に日本で公開されたばかりでした。米国の最新SFXの前では、実写とアニメの合成は、見劣りして感じた人も少なくなかったようです。公開のタイミングの悪さもあって、興収は期待されたほどは伸びませんでした。

 長らくソフト化されなかったのは、公開当時の評判が著しくなかったことも要因だったと思われます。今なら、もっと優しい目で鑑賞できるのではないでしょうか。

■永遠の命よりも大切なもの

 実写版『火の鳥』の主軸となるのは、少年・ナギ(尾美としのり)とナギの一族を滅ぼしてしまった猿田彦(若山富三郎)が、ともにサバイバルを重ねていくうちに、擬似親子のような関係になっていくストーリーです。猿田彦はナギにとって憎むべき相手ですが、猿田彦によってナギは何度も命を救われます。血よりも濃い絆で、ナギと猿田彦は結ばれていきます。

 一方、永遠の命を求める女王・ヒミコ(高峰三枝子)は、弓の名人である弓彦(草刈正雄)に命じて、火の鳥を捕らえ、その生き血を飲むという願望に取り憑かれます。そのために、多くの部族は滅ぼされ、またヒミコに異議を唱える者たちも罰せられるのでした。『犬神家の一族』では佐清の母・犬神松子を演じた高峰三枝子さんの、貫禄たっぷりな女王ぶりに圧倒されます。

 ヒミコと同様に、永遠の命を得ようと火の鳥を求めた者たちは、次々と自分の命を縮めることになります。人間の価値や生きる喜びは、どうやら生命の長さとは関係ないようです。ナギから「父さん」と呼ばれた猿田彦が大喜びするシーンが、ひときわ印象に残ります。戦うことしか知らなかった猿田彦ですが、愛される喜びを知って、命を燃やし尽くすのでした。

続編として企画された『愛のコスモゾーン』

『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』DVD(東宝)

 時間のある方には、手塚治虫総監督による劇場アニメ『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』(1980年)もおすすめします。こちらもAmazon Primeビデオで配信中です。「黎明編」を原作にした実写版『火の鳥』の続編として企画された、オリジナルストーリーとなっています。

 そう遠くない未来の地球人類は滅亡の危機に陥り、宇宙ハンターのゴドー(CV:塩沢兼人)は、女性型ロボットのオルガ(CV:三輪勝恵)、サルタ博士(CV:熊倉一雄)らと、「宇宙生命体2772」こと火の鳥を捕獲する旅に向かいます。

 ゴドーのピンチを、変身能力のあるオルガは何度も救います。でも、オルガのそんな世話焼きぶりが、筆者は公開当時にはどうも好きになれませんでした。なぜか、万能ロボットのオルガのことが、ひどく野暮ったく感じられたのです。

 ずいぶんと歳月が流れ、オルガを野暮ったく感じた理由が分かりました。育児用ロボットでもあったオルガと、自分の母親とを重ねて見ていたのです。

 田舎に帰省しても、もう母親はいません。以前は野暮ったく思えたオルガのことが、今ではとても愛おしく感じられます。時間とは何か、命とは、愛とは何か。そんな根源的なことを思い出させてくれるのが、『火の鳥』という「永遠の物語」なのかもしれません。

(長野辰次)

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