「一度観たら終わり」じゃないよ! 最終回迎えた『さらざんまい』の中毒性
マグミクス / 2019年7月1日 19時40分
■独特な世界観だからこそ見える「欲望」と「つながり」の力
先日最終回を迎えた春アニメ『さらざんまい』は、『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』を手掛けた幾原邦彦監督らしい、現実世界とは切り離された独特の世界観や演出がいたるところに散りばめられており、難解な展開でファンに衝撃を与えました。
東京・浅草を舞台に、尻子玉が持つ「欲望エネルギー」をめぐる、カッパ王国第一王位継承者・ケッピとカワウソ帝国の戦いと、それに巻き込まれた、中学生男子3人を中心とする人間関係の物語です。
巻き込まれた同級生の矢逆一稀(やさかかずき)、久慈悠(くじとおい)、陣内燕太(じんないえんた)には、それぞれ触れられたくない、知られたくない秘密がありました。しかしこの戦いで必要となる「さらざんまい」は、身も心もつながり秘密が“漏えい”してしまうワザ。
これにより、一稀、悠、燕太は、それぞれの「秘密」を共有してしまい、そこから彼らが抱える「闇」、そして大切な「思い出」や「つながり」が次々と漏えいしていきます。
本作のキャッチコピーとして「つながっても、見失っても。手放すな、欲望は君の命だ。」が掲げられているように、彼らはこの「欲望」と「つながり」に翻弄され、振り回され、目をそらそうとしつつも、心のどこかで追い求めていきます。
独特の世界観や非現実的な事件の数々に驚き、呆然としてしまうシーンも多々ありますが、「欲望」も「つながり」も、根本的には私たち誰もが持っている、きちんと向き合わなくてはいけない根っこの部分。「欲望」という言葉はあまりいい意味で使われることはありませんが、この作品は、人が隠そうとしがちな「欲望」にあえて焦点を当て、それが持つ重大さ、危うさ、深さを描いた作品であるように思います。
■自らの「欲望」と「闇」に向き合う主人公たち
人の「欲望」の持つ力を、テンポよくドロッとさせすぎず、抽象的でありながら真っ正面からテーマとして掲げていく本作品の展開、手法はさすがの一言です。最終話「第十一皿」では、彼らが持っていた「欲望」と「闇」のひとつひとつを彼ら自身がしっかりと認識し、消化していきます。
そうして踏み出す一歩は、地に足がついたもの。エンディングで描かれる場面チョイスには驚かされましたが、しかしそれさえも、彼にとってはきっと希望に満ちたものなのです。
また、本作品の魅力のひとつとして、唐突に行われる一稀たちのお決まりポーズ「さらっと」や、警察官として登場する新星玲央と阿久津真武の歌と踊り、そして「さらざんまい」の技の流れなど、作中で繰り返し描かれる決まり事の中毒性も挙げられます。
観れば観るほど新しい発見があり、作中に散りばめられた秘密がつながっていく『さらざんまい』は、一度観て終わりではなく、自分の納得のいく答えが見つかるまで繰り返し観てみたい作品です。ハマってしまえば、自分でも気づいていない、自らの心に潜んでいる「欲望」が漏えいするかも?
(きこなび 月乃雫)
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