帰り道が特に怖かった? 80年代、小学生が『ドラクエ』をゲットするまでの冒険
マグミクス / 2023年5月11日 21時25分
■『ドラクエ』は手に入れるまでにもストーリーが!?
皆さんは『ドラクエ』のソフトを初めて手にしたときのことを憶えていますか? 現在のようにダウンロード購入などができない初期作品は、店舗で購入しなければなりませんでした。ゆえに当時は、筆者の住んでいた東北の片田舎のような地域では購入までに苦労があり、手にしたときの大きな感動があったのです。そこで今回は、『ドラクエ』シリーズの、個人的なファーストコンタクトを思い出したいと思います。
●ソフトを求めて国道を何度も越える冒険『ドラクエII』のファーストコンタクト
「RPG」という、プレイヤーを焦らせないゲーム性に衝撃を受けた無印『ドラゴンクエスト』を、当時小学生の筆者は最初は友達の家で遊び、後に購入し兄弟で夢中になっていた数か月後、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』が発売(1987年1月26日)されました。もちろん、発売日に手に入れたいと思いましたが、どこのおもちゃ店でも売り切れ。当時は予約というシステムに馴染みはなく、店頭に置いてあれば買えるという状況だったのです。
毎日のおもちゃ店巡りでは買えないことを悟った筆者は、とあるいかがわしいディスカウントショップへも足を伸ばすことにしました。このショップに行くには自転車で国道を渡るしか手段がなく、当然親には禁じられていましたが、『ドラクエ』欲には勝てず、一大決心をします。
小学校低学年の私にとってまさに大冒険で、国道を越えショップへ漕ぎだしました。そのショップのファミコンソフト売り場には、おびただしい本数のソフトがディスプレイされていましたが、目的の『ドラクエII』はなく、引っ込み思案だった私は「いつ入荷するのか?」を聞くこともできず、何度も訪れることになります。
そして数週間後、「今日もないだろうな……」と思いながら国道を越え、お店を訪問しディスプレイを眺めると、見慣れないけど雑誌で見知った青いパッケージが。「あった……」。子供ながらに信じられず何回も確認しましたが、やはり『ドラクエII』です。
緊張と感動で声を震わせ、店員にソフト購入を告げたのを憶えています。高価な宝物を手に入れた私は、自転車のカゴにソフトを入れては壊れてしまうと、リュックに大事にしまい、数十分後に始まるTV画面のなかの冒険を思い描き、国道を通って家へ戻りました。
■どうやって手に入れた? 『ドラクエIV』のミステリー
●怯えながら周囲を警戒『ドラクエIII』との出会い
夜中に父にプレゼントされた『IV』。酔っぱらいながらも照れくさそうにしていた父の表情は今でも忘れない。『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(スクウェア・エニックス)
そして『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』の発売(1988年2月10日)の頃には、歩いて行ける近所に大きなおもちゃ店ができ、そこで並べば買えるという情報が流布されました。しかし、小学生は平日(発売日は水曜日でした)に行くのは無理であり、あきらめたその夜のニュースで衝撃を受けます。
なんと東京で並んで『III』を購入した人が、強盗に奪われたという事件が報じられたのです。のちに「Gショック狩り」「たまごっち狩り」などの社会問題が発生しましたが、『III』強盗は「狩り」の走りだったのではないでしょうか。
そんな発売日から数週間後、近所のおもちゃ店に『ドラクエIII』が日曜日に入荷されるのとの情報を入手し、並ぶことを決意します。当日の朝、店舗の駐車場に到着すると、辺りに野良暴漢がいないかと、キョロキョロと警戒したものです。怯えながら、「この駐車場に高橋名人が営業に来たなぁ」「最前でふざけていたら名人に怒られたなぁ」などと思い出し、気を紛らしていると、店舗が営業開始します。列の先頭からソフトを購入できた人が去って行き、ついに自分の番が。店員さんは赤いパッケージを紙袋に包み、手渡してくれました。
私はついに手に入れた『III』をリュックの奥に詰め、胸で抱きしめるように帰路に着きます。ニュースが頭をよぎり、信号待ちで並ぶ他人の挙動をつぶさに警戒、信号が青になると足早に渡り、無事家にたどり着きました。
『III』とのファーストコンタクトは、ゲームの「ワクワク感」を夢想した『II』の購入時の道中とは違い、感動というよりも異常に厳戒心をまき散らし、わが身がどうなろうともソフトを死守するというミッションを遂げる戦闘員の気持ちでした。
●謎の入手方法。いまだに解明されていない『ドラクエIV』との邂逅
それぞれ初めて手にしたときの思い出がある『ドラクエ』シリーズですが、筆者の記憶のなかで最も不思議な体験をしたのが『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』でした。
多分に洩れず、発売日(1990年2月11日)に手に入れることができなかった『IV』。筆者はあきらめ半分、仕方ないという気持ち半分で床に就きました。しかし、夜中の1時頃、仕事から帰ってきた酔いどれの父が私の部屋に入ってくると、私を揺さぶり起こします。よくあることなので、狸寝入りを決め込んでいると、父が「ほれ」と紙袋を顔にグイグイと押し付けてくるので、迷惑だという雰囲気を醸しながら紙袋を開くと、なんと銀のパッケージの『IV』のソフトが入っていたのです。
筆者は飛び起き、嬉しさと驚きで「どうしたの?」と聞くと、父は「友達から買った」と言い残し、部屋を出ていきました。父は筆者がファミコン好きというのは知っていたでしょうが、どんなソフトが好きということは知らなかったと思いますし、家のなかで遊ぶということもあまり快く思っていなかったはずです。
そんな父から、誕生日でもクリスマスでもないのに唐突のプレゼント。その意外性と今一番欲しいものをもらえたという喜びと興奮で目が覚め、部屋の照明もつけずこっそりとファミコンのスイッチを入れました。
しかし、父におもちゃ店の友達がいたことなど聞いたことがありませんでしたし、『IV』の発売日を知っていたとは思えない父が、仕事を終えたあとどうやって手に入れたかも謎です。翌日、聞いてみましたが、「友達から買った」以外の情報をくれず、うやむやになっています。結局、現在までどうやって入手したのか、未解明のミステリーとなっています。
ゲーム内容は当然に面白いものですが、ソフト自体を手に入れるまでにもストーリーがあったのが、初期の『ドラクエ』シリーズでした。今回は筆者の一体験を語りましたが、皆さんはどんな思い出がありますか?
(南城与右衛門)
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