『ガンダム』随一の苦労人、ブライト・ノア 殴られ、戦い、主人公を導いた先にあるものは?
マグミクス / 2023年5月24日 6時10分
![『ガンダム』随一の苦労人、ブライト・ノア 殴られ、戦い、主人公を導いた先にあるものは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_157314_0-small.jpg)
■ガンダムシリーズの苦労人
『機動戦士ガンダム』から登場し、その後のガンダムシリーズ作にも登場しているキャラクターのなかで、ブライト・ノアは屈指の苦労人です。
『機動戦士ガンダム』では地球連邦軍の士官候補生として乗り込んだホワイトベースがシャア・アズナブル率いるジオン軍の攻撃を受け、艦長のパオロ・カシアス中佐が負傷、後に死亡したため、19歳の若さで2代目艦長に就任することになります。
このときのブライトはまだ軍歴6カ月で、しかも宇宙に出るのは初めての状態でした。先輩士官は誰もおらず、頼りになるのはリュウ・ホセイらわずかな軍人たちくらい。大量の避難民を抱え、シャアに追われ、素人たちのなかから有能そうな人間を見つけて急場をしのぎ続けましたが、ようやくたどり着いたルナツーでは「機密兵器の無断使用」という理由で拘禁されるなど、物語序盤から苦難の連続でした。
そんなブライトと切っても切り離せないのが、主人公のアムロ・レイです。最初のころは余裕のないブライトと慣れない戦闘に苦心しているアムロとの間で感情的な対立が何度も起こり、アムロが脱走する事態も招きました。しかしブライトはアムロを当初から頼りにしており、「シャアを超えるパイロット」とも認めていたのもまた事実です。
リュウの死後はブライトも周囲に気を遣うようになり、アムロの精神的な成長もあって衝突も減っています。最終的には互いの存在を認め合い、一年戦争を戦い抜きました。滅茶苦茶な状況に放り込まれ、やり場のない苛立ちや怒りをぶつけあっていた人間同士でも、ともに戦うなかで成長し、関係が良好になる。現実でもこのようなことはあるのではないでしょうか。(逆の結果になる可能性も否定できませんが)。
続編となる『機動戦士Zガンダム』でも、ブライトの苦労は続きます。ミライ・ヤシマと結婚し、ハサウェイとチェーミンのふたりの子宝に恵まれたものの、ニュータイプを恐れる連邦軍上層部の意向で連絡船テンプテーションの船長へと左遷されてしまったのです。
一般人からの人気はありますが、ティターンズの一部からは反感を持たれており、暴行を受ける場面もありました。いらない苦労を押し付けられているという印象を視聴者に強く抱かせました。
■多くのニュータイプを導いた
アムロたちとともにホワイトベースで旅を続けるブライトが描き直された、映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』本ビジュアル (C)創通・サンライズ
※これより後の記事内容には、小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の結末に関する記述が含まれていますのでご注意下さい。
反地球連邦組織「エゥーゴ」に参加してからも、さまざまな困難がブライトを待ち受けていました。
クワトロ・バジーナことシャア・アズナブルは部下として頼りになるものの、政治的には不穏な存在であることに間違いはありません。新たなニュータイプ、カミーユ・ビダンも戦力としては強力ですが精神的に不安定。エゥーゴのスポンサーであるアナハイム・エレクトロニクスの幹部であるウォン・リーからはたびたび無茶を言われるなど、中間管理職としての立場で苦労を重ねる日々が続きました。
コロニーレーザー「グリプス2」をめぐる最終決戦では多くの戦友や部下が命を散らしましたが、ブライトはかろうじて任務を果たして生き残りました。しかし、残った正規パイロットはファ・ユイリィひとりという絶望的な状況で、ネオ・ジオンとの戦いに突入する羽目になりました。
『機動戦士ガンダムZZ』では、立ち寄ったコロニー、シャングリラでZガンダムを盗もうとしたジュドー・アーシタにニュータイプの可能性を見い出します。……といえば聞こえはいいですが、絶望的な人員不足に見舞われた際には、子供でも使うしかないことをブライトは良く知っています。
指揮を執るアーガマはすでに戦える状態ではないのは明らかで、半ばやけくそ気味でもあります。近年、さまざまな業界で発生している「人手不足」を補うために苦労している方にとっては、身につまされる話ではないでしょうか。
『ZZ』では途中で一時離脱したものの、ジュドーがハマーン・カーンを倒して決着がついた後に再登場。何もできなかった情けない大人たちの代表として、ジュドーの怒りの鉄拳を甘んじて受けることとなりました。
その後も『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』ではロンド・ベル指揮官としてアムロとともにシャアと戦い生き残り、『機動戦士ガンダムUC』では引き続きロンド・ベル指揮官として主人公のバナージ・リンクスを導いています。苦労を重ねながらも多くのニュータイプとともに戦い、導き手となったブライトですが、彼の苦難はまだ終わってはいません。
息子であるハサウェイ・ノアが主人公を務める『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の小説版では、マフティー・ナビーユ・エリン討伐部隊であるキルケー部隊の指令に着任し、地球に降り立ったものの、到着した際には既にマフティーことハサウェイは捕らえられていました。
ブライトが屋敷で待機するなか、その庭ではブライトに子殺しをさせないため、前任のケネス・スレッグ准将によりハサウェイは射殺されていたのです。その後、連邦軍将官の策略により、ハサウェイを殺したのはブライトであるという偽情報が流され、そのとき初めてブライトはマフティーの正体を知ることになりました。果たして、今後上映される劇場アニメでは、どのような展開となるのでしょうか。苦難に満ちたブライトの人生に、わずかでも光が灯ることを祈るほかありません。
(ゆうむら)
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