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キン肉マンは「ウルトラ兄弟」の8番目だったって本当? 設定が消された理由

マグミクス / 2023年5月25日 7時25分

キン肉マンは「ウルトラ兄弟」の8番目だったって本当? 設定が消された理由

■「読切り」だけの設定?

『キン肉マン』がアニメ化40周年を迎える2023年、それを記念して新シリーズのスタートが決定しています。ところで今も主人公を張る超人・キン肉マンは、「ウルトラマンの8番目の弟」という設定だったことをご存じでしょうか?

 マンガ『キン肉マン』(作・ゆでたまご)は、1979年「週刊少年ジャンプ」第22号から約8年間連載され、その後『キン肉マンII世』の連載を経て、2011年から「週プレNEWS」にて『キン肉マン』としての続編を再開、2021年7月時点でシリーズ累計発行部数は7700万部以上を記録する大ヒット作品です。プロレス格闘マンガとして有名ですが、スタート当初は、怪獣と戦う弱い変身ヒーローが主人公のギャグ満載のドタバタコメディでした。

 それ自体は有名な「キン肉マントリビア」ですが、「ウルトラ8番目の弟」という設定だった事実を知る人は少ないかもしれません。というのも『キン肉マン』のはじまりは読切り作品だったからです。

『キン肉マン』は1978年に第9回赤塚賞に準入選し、作品は78年12月(79年2号)の「週刊少年ジャンプ」に掲載されます。題は「オカマラスの巻」でした。1ページ目、タイトルがドーンと乗った下にコマがふたつ。1コマ目はウルトラ兄弟の「ゾフィーからレオ」までの7人が立ち並び、「みなさん! ウルトラの兄弟は7人ではなく、本当は8人いたのです!」と言います。

 そして、2コマ目、絵は筋骨隆々の上半身、顔は暗くて見えません。「M78星雲から地球へやってきた8番目の弟! その名は…」そして、ページをめくるとキン肉マン登場! という形でスタートします。なんと冒頭で「M78星雲から地球へ着たウルトラ兄弟8番目の弟」と、堂々と言い切っているのです。

 内容は、まるでウルトラシリーズのパロディ番外編でした。兄たちがキン肉マンの顔が醜いことをいじると、衝撃的な事実が発覚します。なんとキン肉マンは、ウルトラの父が酒に酔って浮気した相手との間にできた子供だったのです。

 そんな酷い出自のため、兄やウルトラの母からの虐待に耐えられなくなったキン肉マンは、ウルトラの国を飛び出して地球へやってきます。怪獣をやっつけて家族を見返してやるつもりが、54戦54敗というどうしようもない戦績で、地球の人間たちからも笑い者にされるありさまでした。

 そんなキン肉マンはニンニクを食べてパワーアップし、変身します。額の「肉」文字はニンニクパワーの残量を示していて、パワーが切れそうになるとおならタイマーが「ブーブーブー!」と鳴り出すのです。怪獣オカマラス(ビキニを着たメスっぽい男怪獣)と対戦し、プロレス技のフロントスープレックスで投げるシーンもありますが、最後はスペシウム光線のような技(キン肉ビーム? キン肉フラッシュ?)で撃退します。

 ざっと内容を書くだけでは伝わりにくいですが、展開はもちろん、細かいギャグが全編にちりばめられていて、とても楽しく愉快な内容です。これが読者から高評価を獲得し、第14号には読切り第2作目「エラギラスの巻」が掲載されます。そのタイトルページには、片膝をついて身構えるキン肉マンの姿に、「わたしはなんとかウルトラ兄弟を追い越したい!」という文言があります。そしてこの2作目も読者から好評を得て、79年第22号から『キン肉マン』の連載がスタートするのでした。

■連載での設定は?

全員ではないが、ウルトラ兄弟が表紙に集結している「語れ! ウルトラマン 兄弟激闘編 (ベストムックシリーズ・23)」(ベストセラーズ)

 しかし連載では設定が変わります。キン肉マンことキン肉スグルは、「キン肉星の王子」というプロフィールになり、第1話では大量の宇宙怪獣が攻めてくるなかで、地球防衛軍がウルトラ兄弟やアメリカのスーパーヒーローらが不在のため、仕方なく呼ばれる存在として登場しました。防衛軍長官によると、「ウルトラマンにあこがれ 地球を怪獣の手から まもろうとするが いつも負けてばっかしのドジなヒーロー」とのことです。

 もともとはウルトラ兄弟の一員だったのが、「ただの憧れている人」にされてしまった理由は、コアなファンの定説によると、読切りの2作品に対してウルトラシリーズを手掛ける円谷プロからクレームが入ったからではないか、とされています。詳細は不明ですが、おそらく許可を取っていなかったのではないでしょうか。今となっては信じられませんが、昔は権利関係に少し緩いところがあったようです。

 とはいえ「週刊少年ジャンプ」側も、単発作品ならまだしも、連載でこの設定を続けるのは難しいと判断できたでしょう。このような経緯で、キン肉マンが「ウルトラ兄弟8番目の弟」という設定は消えてしまいました。とはいえ、連載は新作品としてのスタートになるわけで、過去の読切りは別の作品と考えるべきかもしれません。

 ウルトラ兄弟というビッグネームを借りての読切りは好評でしたが、後ろ盾を断ち切った連載は少々不安だったと思います。しかし、ドジでマヌケなヒーローのドタバタ劇とギャグセンスは痛快で読者の心をつかみました。ただ、このままでは限界がくるといった判断から物語性を持たせるため、第28話からプロレスを主体とした「第20回超人オリンピック編」をスタートさせ、バトルマンガとして人気に火が点いたのです。

 そして、読切りの「オカマラスの巻」と「エラギラスの巻」は、コミックスに収録されず幻となっていました。ところが、1999年8月発売の「キン肉マン特盛」というコミックで日の目を見ます。この本では、読切のウルトラ兄弟の設定は「TVシリーズとは全く異なるもの」という断り書きがあった上で、「円谷プロダクションのご厚意により、あえて手を加えず当時のまま、掲載をさせていただきました」という内容が描かれています。

 掲載当時、円谷プロからクレームがあったのかは不明ですが、今は一応「公認」のようです。ちなみに、「オカマラス」はゆでたまごの原作担当・嶋田先生が、小学5年生の時に考えた怪獣とのことでした。

 45年前、ウルトラ兄弟の8人目という幻の設定でスタートしたマンガ『キン肉マン』は、復活するアニメシリーズではどんな「白熱シーン」と「ずっこけシーン」が待っているのか、開始が待ち遠しい限りです。

(石原久稔)

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