『ちびまる子ちゃん』作中唯一の流血事件とは まる子の優しさが「心に刺さる」

■まる子の身近で起きた、いじめとは？

　国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』は、フジテレビ系列のアニメでは後枠の『サザエさん』に次ぐ長寿アニメです。『ちびまる子ちゃん』は作者・さくらももこ先生の小学生時代の実話をもとにした、主人公・さくらももこ（まる子）の笑いあり涙ありの楽しい日常が描かれています。

　しかし、『ちびまる子ちゃん』には「楽しい日常」以外のエピソードも登場しています。実は、第40話「『たかしくん』の巻」は、いじめを題材にしたエピソードで、まる子が「流血」するほどの衝撃展開が描かれています。

　注目の「『たかしくん』の巻」は、まる子と同じ小学校の3年生で大人しくて優しい西村たかしという男の子を中心に物語が展開します。たかし君はとにかく朝が苦手で、遅刻が多い生徒でした。

　ある日、遅刻してきたたかし君をいじめっ子の関口と佐々木が難癖を付け、暴行を加えます。その様子を見かねたまる子は、ふたりを止めようとしますが相手にされず、たかし君はいじめられ続けてしまいます。

　翌日、たかし君は転んだことで再び遅刻してしまい、関口と佐々木からいじめを受けました。転倒を目撃していたまる子はたかし君が転んで遅刻してしまったことを説明しますが、ふたりは聞く耳を持ちません。たかし君への乱暴を止めようとしないばかりか、泣くたかし君を楽しそうに笑いながらいじめていました。

　この光景を見ていたほかのクラスメイトは、顔をしかめながらもながめるばかりでまる子以外、誰も止めようとしません。止めようとしないことがかえってリアルすぎて現実世界でも、あり得そうなシーンです。

　まる子は、たかし君へのいじめについて家族に話すと祖父・友蔵は「いやじゃ?」「まる子がぶたれたらおじいちゃん泣いちゃう」という反応を見せました。その近くで母・すみれも「……おかあさんも泣いちゃう」と悲しそうにつぶやきます。悲しむ家族の様子を目の当たりにしたことで、まる子はたかし君の家族も悲しむだろうと察したのかもしれません。

　その翌日、たかし君は遅刻せずに登校したため、遅刻のことでからまれることはありませんでした。しかし、給食中にたかし君が牛乳を残したことに、関口と佐々木が難癖を付けはじめます。たかし君に無理に牛乳を飲ませようと暴力を振るうだけでなく、給食袋を踏みつけるなど、行動はエスカレートしていくばかりです。

　この状況を見たまる子は激怒し、「たかし君に謝罪しろ」とふたりに詰め寄りますが、関口はまる子の頭を叩き、その勢いでまる子はロッカーに激突してしまいます。

　この衝撃でまる子は頭から大量の血を流し、関口と佐々木も青ざめた顔を浮かべていました。このとき、まる子は「…学校でぶたれてケガをしたなんて言ったら…」「おかあさんないちゃうよ」と、自らの痛みよりも母の悲しい顔を思い出し、号泣していました。

　たかし君を助けようとしてケガを負いながらも、自分の痛みより家族が悲しむことを心配するまる子に「勇気に感動した」「まる子の優しさが沁みる」などの声があがっていました。

　ほかにも「やるせなさが込みあげてくる」「この回がトラウマでしばらく『ちびまる子ちゃん』が見られなかった」などの声もあがっており、「『たかしくん』の巻」でいじめは誰も得をしないことをまる子が身をていして教えてくれたようにも感じられます。なお、このシーンは2007年放送のドラマ版『まるまるちびまる子ちゃん』でも再現されています。

（LUIS FIELD）