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【金ロー】『サマーウォーズ』に細田監督が込めた『ハウルの動く城』への「返歌」とは

マグミクス / 2019年7月19日 19時40分

【金ロー】『サマーウォーズ』に細田監督が込めた『ハウルの動く城』への「返歌」とは

■細田監督とスタジオジブリの、因縁深い関係

 細田守監督の長編アニメ『サマーウォーズ』(2009年)が、7月19日(金)21:00から日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で放送されます。高校生の健二や夏希たちのいる現実世界と、バーチャル世界とを連動させた脚本家・奥寺佐渡子さんの巧みなストーリー展開、多彩なアバターたちが行き交う仮想空間「OZ」のポップなデザイン設定もあり、何度見直しても楽しめる作品となっています。

 細田監督は『サマーウォーズ』に続いて、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)、『バケモノの子』(2015年)も大ヒットさせ、“ポスト宮崎駿”と呼ばれるようになります。すでに多くの人が論じている細田監督の人気作『サマーウォーズ』ですが、そこには、宮崎駿監督作として2004年に公開された『ハウルの動く城』との関係性が見てとれるのです。

 英国のファンタジー作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を原作にしたスタジオジブリ製作の『ハウルの動く城』と、バーチャルの世界をモチーフにした細田監督のオリジナル作品『サマーウォーズ』は、テイストのまったく異なる作品です。しかし、両作品にはいくつかの共通点を見つけることができます。

 いちばん大きな共通点は、どちらの作品も“家族”をテーマにしているということです。ファンの間では有名なエピソードですが、細田監督は大学卒業時にスタジオジブリの研修生採用試験を受け、宮崎監督からその才能を評価されながらも採用は見送られました。その後、細田監督は東映アニメーション在籍時にジブリ製作の『ハウルの動く城』に初の外部監督として呼ばれますが、「途中降板」という苦渋を味わうはめになります。

 大きな挫折を体験した細田監督ですが、豊かな才能と誠実な人柄を人々は放っておきませんでした。『時をかける少女』(2006年)でブレイクを果たした細田監督は、次回作『サマーウォーズ』の企画時に夫人との結婚を控え、夫人の実家のある信州へあいさつに向かったそうです。新しい家族に温かく迎え入れられた細田監督の感動が、『サマーウォーズ』には投影されていたのです。

■戦国武将・武田信玄も強調した、「つながり」の大切さ

細田守監督が降板したのちに完成し公開された『ハウルの動く城』 DVD (ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント)

 細田監督の降板後、宮崎監督が引き継いだ『ハウルの動く城』も、呪いによって老女となった少女ソフィーが、魔法使いのハウル、その弟子であるマルクル、火の悪魔カルシファーたちと新しい家族になっていく物語です。

『サマーウォーズ』は89歳になる陣内栄(声:冨司純子)、『ハウルの動く城』は90歳になったソフィー(声:倍賞千恵子)が家族の要となっています。少しのことでは動じない、肝っ玉おばあちゃんが家族を束ねていることでも共通しています。

『ハウルの動く城』では、かわいいマルクルの声を担当した神木隆之介さんが、5年後に公開された『サマーウォーズ』では「よろしくお願いしまぁぁぁす!」の台詞でおなじみ、高校2年生の健二を演じることになります。また、『ハウルの動く城』の美術監督を務めた武重洋二氏が、『サマーウォーズ』にも美術監督として呼ばれ、陣内家の日本家屋を情緒豊かに描いてみせている点も見逃せません。

 もうひとつ、両作品には共通しているのは“お城”のモチーフです。『ハウルの動く城』では荒野をさまようように動く城を、ソフィーたちは必死で守ろうとします。『サマーウォーズ』にもOZ内に日本風の城郭が姿を見せます。

 さらに注目したいのは、陣内家が戦国武将・武田信玄の家臣だったという設定です。

 戦国時代の最強武将と称される武田信玄ですが、意外なことに織田信長や豊臣秀吉のように立派なお城は築いていません。その代わりに武田家には「人は城、人は石垣、人は堀」という格言が伝わっています。立派な城を築くと、逆に人は城に守られていることに過信して弱体化してしまう……という戒めの言葉です。信玄はあえて堅固な城を築かず、家臣団との信頼関係を強固なものにすることで戦国時代をサバイバルしたのです。

『サマーウォーズ』でも、陣内栄の指揮のもと、個性豊かな一族や栄の教え子たちがそれこそ“動く城”となって大活躍します。人と人とのつながりこそが、動く城であり、最強の武器にもなるのです。

 細田監督がどこまで『ハウルの動く城』を意識したのかは、本人にしか分かりませんが、肉体的にも精神的にもハードなアニメ業界を生きながらえてきた細田監督が見つけたひとつの答えが、『サマーウォーズ』という新しい家族の誕生物語だったのではないでしょうか。

(長野辰次)

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