『ドラクエ』「中世ファンタジー」なのに、何でスロットマシンある? 時代錯誤な設定たち
マグミクス / 2023年5月26日 17時55分
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■名作を振り返るとともに、ちょっとだけ歴史のお勉強!?
“中世(風)ファンタジー世界”の金字塔といって差し支えない名作RPG「ドラゴンクエスト」シリーズ。今日における多くの剣と魔法のファンタジー作品の土台には、本作の影響が何かしらあることでしょう。しかし、「ドラクエ」シリーズを彩ってきた施設や乗り物には、中世どころか近・現代発祥のものも多く見られたりします。そんな要素を少し振り返ってみましょう。
●スロットマシンのようでもあった「ふくびき」
記念すべきシリーズ1作目『ドラゴンクエスト』のヒットを受けて1987年に発売された『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』では、お遊び要素のひとつとして「ふくびき」が登場しました。
道具屋で買い物をしていると店主から「(日頃の)感謝の気持ちをこめて」ふくびきけんをもらえる様子は、ファンタジーというよりも「昭和当時の商店街の一風景」のようなものを感じさせます。肝心のふくびきは「回転する3つのリールを任意のタイミングで止め、絵柄がそろえば景品をもらえる」というもので、スロットマシンのようでした。
また、ペルポイの町では65000ゴールドという法外な価格設定の防具「ミンクのコート」が販売されており、こちらは中世どころか完全に現代ネタでした。「ふっかつのじゅもん」を入力してゲームを再開するたびに復活するじごくのつかいを倒していかずちの杖を何本も入手し、それを売って購入資金にあてた人も多いのではないでしょうか。
●バニーガールは高級クラブの衣装が元ネタ!
『II』の翌年となる1988年に発売された『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』では、主人公や仲間キャラクターに職業の概念が登場。ひと際目を引くのは「あそびにん」の姿でした。男性キャラはピエロ、女性キャラはバニーガールそのままのルックスだったのです。
道化師としてのピエロは現実の中世にも存在しましたが、問題(?)はバニーガール。現実ではアメリカの高級クラブ「プレイボーイクラブ」の給仕衣装として世に出たのが初とされており、それは1960年のことだそうです。中世どころか最近すぎる……! あそびにんという名前通りに、堀井氏の”遊び心”が存分に込められた職業でした。
また、本作には町や村に水をかけられるジョークアイテム「みずでっぽう」が登場しました。現実においては、伐採した竹を筒として水をピストン状に押し出して射出する水鉄砲が江戸時代からあったようで、1600年代の俳句に水鉄砲という単語が使われています。中世というには微妙な時代かもしれませんが「意外と歴史があるな…」という感じもしませんか?
■"ギャル"な新ヒロイン・デボラにびっくり!
一番右の女性がデボラ 画像はスマートフォン版『ドラゴンクエストV』より
●近代の要素「カジノ」と「気球」を巧みに取り入れた『ドラクエIV』
ファミコン時代のRPGにはしばしば「空を飛ぶ乗り物が手に入ったらいよいよゲームも終盤戦」という概念が見られましたが、『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』におけるそれは、のんびりと空をゆく気球でした。
では、現実における気球の歴史やいかに? と調べてみると、明確な記録が残っているのは1700年を過ぎてからのようです。
また、本作ではシリーズ恒例の要素「カジノ」が初登場を果たしました。現実におけるカジノは気球と同様に1700年を過ぎてから見られるようになったそうです。気球とカジノ、どちらも現実においては近代の概念といえそうです。
●主人公は”小魚”顔!? デボラの毒舌に驚いた『ドラクエV』
筆者がカジノで一番印象的だったのは、『IV』ではなく『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』でした。本作に登場するカジノは、なんと夜になると外観にきらびやかなネオンが輝くのです。現実で照明としてのネオンが誕生したのは1900年を過ぎてからのことですから、これもバニーガールに並ぶ近年のできごとといえるでしょう。
さらに、後年の移植版で追加されたビアンカ、フローラに続く第三の花嫁候補・デボラも盛った髪にバラのコサージュ、毛皮のストールに丈の短いワンピースなどという(中世風ファンタジーとしては)ぶっとんだファッションで登場し、ユーザーを驚かせました。
しかし、いざ彼女と結婚してみると毒舌の裏に主人公や子供たちへの愛情を感じ取ることができたり、ゲームとして見ても、花嫁の中で唯一「まじんのかなづち」を装備できるのではぐれメタルやメタルキングを倒すのに大活躍したりと、独自の魅力を持つキャラになっていました。
こうしてふり返ると、中世(風)とはいえないような描写や演出も見られる「ドラゴンクエスト」シリーズですが、もちろんそれを否定したいわけではありません。
むしろ、そうした要素を作中の世界にしっかりとなじませ、そんな作品に親しんだ人たちが成長して自らも小説やゲームなどのファンタジー作品を手がけるようになったことが、今日の日本におけるファンタジー作品の定着にひと役買っているように思えます。
現在制作中のシリーズ最新作『ドラゴンクエストXII』では、どのようなファンタジー世界を見せてくれるのでしょうか? 断言はできませんが、「ドラゴンクエストの日」として認定されている5月27日には何らかの続報があるかもしれませんね。
(蚩尤)
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