原作ファンもドン引き？ 過激なトラウマ漫画を忠実に再現した「R指定」実写版

■原作を知っていても衝撃的なシーンはまさにトラウマ級！

　実写で描くのは難しい過激な展開やグロ、エロ、ゴアシーンはマンガならではの醍醐味ともいえます。そんな過激なマンガの実写化にあたっては、直接的な表現を避ける場合もありますが、衝撃のシーンを忠実に再現し、原作ファンを唸らせた作品もありました。そんな、当然ながら「R指定」となった実写化作品をご紹介します。

●『アイアムアヒーロー』

　謎のウイルスに感染した人々が、「ZQN」と呼ばれるゾンビと化してしまう世界を描いた『アイアムアヒーロー』（原作：花沢健吾　R15指定）は、全編を通して「ZQN」の姿がリアルに表現されています。特殊メイク・特殊造形統括を務めた藤原カクセイさんの、こだわりの詰まった「ZQN」の描写が話題を呼びました。

　特に、主人公・鈴木英雄の恋人・黒川徹子が「ZQN」として襲い掛かってくるシーンは原作同様、衝撃的です。主人公にとって身近な存在が感染し変貌する、物語としても重要なポイントであり、「本当に誰でも異形の怪物になってしまう」ことを観ている側に分かりやすく、そして恐ろしく伝えるシーンとなっていました。徹子を演じた片瀬那奈さんの熱演もあり、白く濁った瞳や人間離れした動きは狂気的で、日常が非日常へと激変する原作の臨場感をも再現しています。

　かなりグロテスクな人体損壊表現も含むため、R指定は避けられませんが、「ZQN」との戦闘シーンなどにアクション要素、ゴア描写を上手く入れ込み、コメディ要素も多くエンターテイメントとして楽しめる作品となりました。

●『ミスミソウ』

　中学生の壮絶ないじめが予想もできない復讐劇へと発展する『ミスミソウ』（原作：押切蓮介　R15指定）では、物語序盤から過激な暴力表現が繰り広げられます。

　原作には「精神破壊（メンチサイド）ホラー」というキャッチフレーズが付いていましたが、いじめの被害者である主人公の自宅が放火され、家族が燃やされていく様子はまさに精神崩壊しそうなトラウマ級の描写で、ガツンと殴られるような衝撃を受けた人が多いのではないでしょうか。

　さらに、実写化されたことで色彩の表現が加わり、主人公の復讐で死んでいく中学生たちの血の赤と雪の白とのコントラストが、脳裏に焼きつく「美しくて怖い」場面も多数生まれました。容赦ないスプラッター描写は思わず目を背けたくなるようなものばかりですが、「思い切った実写化」「なぜかもう一度観たくなる」といった感想も多い、カルト的人気を誇る作品となりました。

●『ヒメアノ～ル』

　冴えない主人公・岡田のラブコメと、サイコパスの快楽殺人犯・森田の凶行を描く『ヒメアノ～ル』（原作：古谷実　R15指定）では、不穏な空気が流れつつもコミカルなシーンのある前半からは想像のつかない、猟奇的な後半パートに絶句した人が多いことでしょう。容赦ない殺害シーンが多く、ある登場人物が殺される前に「失禁」するという生々しい描写も話題を呼びました。

　物語の構成やラストの展開など原作と違う部分があり、賛否がある一方、性的な描写やグロテスクな暴力表現を逃げずに描いた点には、「原作へのリスペクトを感じる」という声も上がっています。また、森田役を演じた森田剛さんは、原作はビジュアルがだいぶ違うものの、人生を捨てている男の陰鬱な雰囲気や絶望感を醸し出しており、「原作以上に怖い」とも評される独自の殺人鬼像を作り出していました。

●『ガンニバル』

　カニバリズム（人間が人間を食べる行為）の慣習がある集落を舞台にした「Disney+」限定配信のドラマ『ガンニバル』（原作：二宮正明）は、おおむね原作の流れそのままにシナリオが展開していき、ゴア描写の再現だけでなく、キャラクターのビジュアルや、人間の恐ろしさ、村社会の閉塞感や、村人からの監視されているような視線、宗教観の強い儀式など、原作の世界観を壊さず忠実に実写化されているため、原作ファンも注目の作品となりました。

　同作は「Disney+」のサイト上では、「15歳以上のみ視聴可能」の「15+」の制限があります。　「カニバリズム」がテーマのため、グロテスクな描写も当然多いです。高杉真宙さん演じる「顏を喰われた」男・寺山京介の特殊メイクや、「バチェロレッテ・ジャパン」にも出ていた俳優・澤井一希さんが演じる「後藤家のあの人」のビジュアルも話題を呼びました。

　ドラマのシーズン1ではまだ、原作で特に衝撃的な「過去編」や終盤の怒涛の展開は描かれていないため、今後に期待が集まっています。

（椎崎麗）