依存症だけでない「ゲーム障害」の怖さ 「幅広い連携で対処を」と専門家
マグミクス / 2019年7月29日 11時10分
■問題はゲームから離れられなくなる「社会的・心理的条件」
ゲームに依存し生活に支障をきたしてしまう「ゲーム障害」が、2019年5月にWHO(世界保健機関)によって国際疾病分類のひとつに加えられ、注目を集めています。日本国内でも、ゲーム障害は特に若い世代や子供の間に広がっていることから、その対策は緊急の課題となっています。
厚生労働省の調査では、ゲーム障害を含むインターネット依存症の疑いのある中高生は、2012年度では推計52万人だったのが、2017年度にはは93万人と倍増しています。ゲーム障害の研究や治療には、依存症の専門機関である国立病院機構・久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)などが中心となって取り組んでいますが、「幅広い連携で対処すべき」という指摘もあります。
そもそも、WHOが「ゲーム障害」を認定したことで、どのような影響があるでしょうか。幅広い連携が必要なのはなぜでしょうか。杏林大学名誉教授で精神科医の古賀良彦さんに聞きました。
ーーそもそも、WHOが新たな「疾患」を認定した場合、医療機関はどのような対応をするのでしょうか?
古賀良彦さん(以下敬称略) 日本の医療機関は、WHOの国際疾病分類に準拠した分類表にもとづいて診療の記録をしています。患者の病名も、その分類表に基づいてカルテに記載されているのです。今回「ゲーム障害」がこの中に加わり、きちんと病気として定義されました。いずれは保険適用の対象となっていくでしょう。
ーーWHOはゲーム障害について、「ゲームをしたい欲求を抑えられない」「ゲームをすることを他の日常生活の活動よりも優先してしまう」などの基準を盛り込んでいます。他の依存症とは、どのような点が異なるのでしょうか?
古賀 一般的に、他の依存症よりも「対処が難しい」といわれています。薬物やアルコールなどと違って、ゲームは社会的にその存在が認められているものですし、子供でも手に入れやすい。入り口の敷居が低いため、小学生でも依存してしまう可能性があります。「入りやすく、抜け出しにくい、そして本人も『抜けなくていい』と思ってしまう」という難しさを、治療の現場にいる関係者からよく聞きます。
■もはや無視できない、「不登校」と「ゲーム依存」の関係
「ゲーム障害」についてお話を伺った、古賀良彦・杏林大学名誉教授
ーー各地の医療機関などでゲーム障害の診療や対策に取り組まれていますが、どのような課題が考えられますか?
古賀 私自身、臨床の現場で体験していることですが、ゲーム障害は若い世代や子供の「不登校」と結びついて深刻化するケースが増えています。何らかの原因で不登校になり、昼も夜もゲームに依存して離れられなくなると、もはや不登校の原因とは関係なく、学校への復帰そのものが難しくなってしまうのです。
ーーゲーム障害が不登校を助長してしまうのですね。
古賀 最近では、「ブルーライト」に関する議論は落ち着いてきていますが、夜中にPCやスマートフォンのディスプレイを注視し続けていると、ブルーライトが脳に働きかけて眠気を促すホルモンの分泌を抑え、夜中に目が覚めてしまうことが明らかになっています。
「夜に眠れず、昼間に活動できなくなる」という睡眠リズムの乱れがゲーム障害によって助長されると、不登校から抜け出して再び学校に行くのはいっそう難しくなります。結果として、子供自身が教育の機会を失い、大人になっていく上での人柄形成にも深刻な影響を及ぼすことになります。
ーー不登校と結びつきやすいとなると、家族や学校関係者などもゲーム障害について知っておく必要がありそうです。
古賀 ゲーム自体が問題なのではなく、若者や子供がゲームから離れられなくなるような社会的・心理的条件のところに問題があるのです。個々のケースでその問題を明らかにして克服することが非常に大切です。ゲーム障害は、治療や研究の領域をこえて、教育や家庭など、もっと幅広い範囲で連携していくべき問題だと考えています。
* * *
前出の久里浜医療センターを訪れる未成年の患者は、ゲーム障害を家族など周りの人から心配されて来る(連れて来られる)ケースが多いといいます。今回のWHOの「ゲーム障害」認定は、日本の医療関係者だけでなく、若者や子供の周りにいるすべての人に向けた警鐘ともいえるでしょう。
●古賀良彦(こが・よしひこ)
杏林大学名誉教授。医学博士。1971年慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科学教室を経て、1976年杏林大学医学部精神神経科学教室に入室。
専門は睡眠障害と関係の深い統合失調症、うつ病の治療。日本催眠学会名誉理事長、NPO法人日本ブレインヘルス協会理事長、日本薬物脳波学会副理事長も務める。
(マグミクス編集部)
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