「第1部」の続きがない人気マンガ 作者の裏話を聞くと「無理かも?」
マグミクス / 2023年6月10日 17時25分
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■人気絶頂での「第1部完」
人気マンガの物語のラストが「第1部完」で締めくくられていた場合、多くの人が「第2部」を期待せずにはいられないでしょう。しかし、それから何年経っても音沙汰がないマンガもあり、読者たちをソワソワさせてきました。
後追いの世代にはあまり知られていませんが、「第1部完結」で衝撃を与えたマンガといえば、バスケマンガの金字塔『SLAM DUNK』が印象的です。同作といえば、2022年12月に映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開され、興行収入は140億円、観客動員は1000万人を突破し、再びブームを巻き起こしています。
原作マンガは「週刊少年ジャンプ」1990年42号から1996年27号まで連載され、最終回では同誌の表紙と巻頭カラーを飾りました。これは「ジャンプ」初となる「単独表紙」を飾っての最終話であり、当時の人気ぶりがうかがえます。
そして『SLAM DUNK』は、インターハイのトーナメント2回戦の強豪・山王工業高校との対戦の結末とその後のエピソードで、物語は幕を閉じました。すでに作中にも登場していた、3回戦以降でぶつかりそうだったライバル校と戦う描写はなく、山王戦に勝利した後の湘北高校バスケ部や、その関係者たちの集合写真に被せて、「山王工業との死闘に全てを出し尽くした湘北は 続く3回戦愛和学院にウソのようにボロ負けした」との説明があった後、登場人物たちの後日談が描かれています。
そして、主人公・桜木花道のセリフ「天才ですから」で終わる最終ページには、「ジャンプ本誌」掲載版のみ、「第1部完」の文字が載っていました。単行本ではこの表記はなく、普通の「完結」に見えるラストに変更されています。しかし、本誌の方の「煽り文」で「再会の日まで天才の勝負は終わらない…!!」と書かれていたこともあり、いずれは花道たちと「再会」できると思っていた読者も多いようです。
実は作者の井上雄彦先生は、2000年に放送された『トップランナー』(NHK)で、「続編」について語ったことがあります。その時の要約文として、井上先生の公式ウェブサイトには、「現在『スラムダンク』2及び続編の予定はございません」と前置きしつつ、「(井上先生は)描きたい欲求が自分の中に自然に出てくるのを待っている状態」「そういう気持ちでとりくめる時がきたら、第2部があるかもしれません」と綴られています。
映画が大ヒットし、ブームが再燃している今、井上先生の言葉を信じたいところです。しかし、井上先生は上記の『トップランナー』で「山王戦より面白い試合は描けないと思っていた」とも言っていました。
また、詩人・伊藤比呂美さんとの対談本『漫画がはじまる』では、「ある程度、支持を得られた作品であれば終わり方もちゃんとしなければならないという考えがありました」「やっぱりどんどんだめになっていってというのが絶対嫌だったんです。『もう何も出ません』で終わりたくなかったというか」と、人気絶頂期で終わらせた理由を語っています。続編も見たいですが、あの形の終わりが『SLAM DUNK』という作品にとっては一番いいのかもしれません。
■第2部のタイトルは公表されたのに……
巨匠・桂正和先生の代表作! 画像はDVD『ZETMAN』Vol.1(東宝)
また、10年以上もの長期連載だったにもかかわらず、「第1部完」を迎えた作品もあります。それが、「ビッグコミックスペリオール」で約14年間連載された『あずみ』です。同作は最強の女暗殺者・あずみと、彼女の仲間たちの闘いと苦悩を描いた時代劇マンガで、2008年に「第1部完」として連載を終えました。なお、その後に連載された『AZUMI』は正統な続編ではなく、『あずみ』のパラレルワールドという位置づけで描かれています。
作者の小山ゆう先生は、以前マンガ好きで知られる芸人・ケンドーコバヤシさんの冠番組『漫道コバヤシ』(フジテレビONE)に出演した際、上記の「第1部完」の理由について語っていました。主人公のあずみが江戸時代初期における主要な人物を暗殺し尽くしてしまったことや、あずみが若いまま物語を終えたかったことなど、さまざまな葛藤があったようです。
そして何より、暗殺者であるあずみの行き着く先は「絶望的な未来」しかないというのが、一番の理由だったとのこと。悲劇的な結末を描くよりは、「未完」で終わらせるべきとの判断のもと、あえて未完で物語が締めくくられました。
その他、桂正和先生の近未来日本のヒーローを描いた『ZETMAN』は、第2部の告知がありながら続報が年単位でありません。同作は「週刊ヤングジャンプ」で2002年から連載が始まったマンガで、2014年に「第1幕」が最終回を迎えましたが、物語は謎を多く残しています。
第1幕の最終巻となる20巻には、第2幕のタイトル「-ZET-暴きの光輪」が予告されているものの、10年近く音沙汰がない状態です。ちなみに、2022年に行われた桂先生の画業40周年を記念した展覧会「40th Anniversary 桂正和~キャラクターデザインの世界展~」では、桂先生がトークショーで『ZETMAN』について語る一幕もあり、「中途半端な感じになっている『ZETMAN』の続きをやりたい」と語っていました。
ただ、そこでは他の代表作『ウイングマン』と『電影少女』の続編への意気込みも語られており、漫画家として以外にもキャラクターデザインなどで多忙を極めていることなどを考えると、桂先生が『ZETMAN』に手をつけるのはまだまだ先になるかもしれません。
他にも第1部の終了をもって、「沈黙」し続けるマンガは数多くあります。しかし、逆の例を挙げると、『サイコメトラーEIJI』(原作:安童夕馬 作画:朝基まさし)は2000年に第1部を終えて以来、およそ10年の時を経て続編『サイコメトラー』の連載をスタートしました。また、1985年に衝撃の未完エンドを迎えた車田正美先生の『男坂』も、2014年に約30年越しに連載を再開しています。
そのような前例もある以上、愛するマンガの続編を諦めるのは、まだ早いのかもしれません。
(ハララ書房)
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