そもそも過激なマンガの「アニメ化」された衝撃回 もちろんTV放送は無理?
マグミクス / 2023年6月14日 18時55分
■さすがにTV放送は無理だった「別格の変態」
TVアニメでは、内容の過激さや諸事情で放送が打ち切りになることもありますが、最初からTV放送を考えていないような、過激な原作マンガのアニメ化も存在します。今回は、そんな過激なマンガのなかでも、特にアニメ化されて衝撃だったエピソードを紹介します。
●姉畑支遁先生のウコチャヌプコロ『ゴールデンカムイ』
北海道を舞台に、アイヌの隠した埋蔵金を巡る争いを描いたマンガ『ゴールデンカムイ』には、TVアニメではカットされ、OAD(単行本の限定版に付属する新作オリジナルアニメ)としてリリースされたエピソードがいくつか存在します。そして、そのなかでも、単行本第23巻に同梱された刺青囚人・姉畑支遁(あねはた・しとん)のエピソード「支遁動物記」は、「放送しないとはいえ、映像化していいのか?」と話題になりました。
数多くの変態が登場する『ゴールデンカムイ』においても、姉畑は「トップクラスの変態」で、自称動物学者ですが、動植物を「性的な意味」で愛しており、動物と「ウコチャヌプコロ」(プとロは小文字)にまで及ぶ、性的倒錯者でした。さらに、行為を終えた後は自己嫌悪から、対象となった動物を殺害する凶行に及んでいます。
そんな姉畑の最終目標は、北海道最強の猛獣・ヒグマとのウコチャヌプコロでした。OADでは、ヒグマの糞にまみれて接近した姉畑が、念願のヒグマとのウコチャヌプコロに至り、衝撃の最期を遂げる場面までしっかりとアニメ化されています。さらに、ヒグマとウコチャヌプコロするべく奮闘する姉畑に、「ガンバレ支遁!」という迫真のナレーションが加えられており、過激さ、シュールさがより際立っていました。
●刃牙と梢江の初めての交わり『バキ 特別編 SAGA[性]』
格闘マンガ『刃牙』シリーズの2部『バキ』のTVアニメが2018年に放送された際、一部のファンが注目していたのが「『SAGA』はアニメ化するのか?」という点です。2002年に発表された『バキ 特別編 SAGA[性]』のエピソードは、「週刊少年チャンピオン」ではなく、「ヤングチャンピオン」に掲載され、刃牙と梢江の「初体験」を最初から最後まで丁寧に描き切っています。
そして、上記のエピソードは配信やソフトで見ることができる『バキ』「放送コードぶっちぎり版」の第20話「SAGA」で、本格的にアニメ化されました。さすがに原作ほどの密度ではなかったものの、梢江の裸体も描かれ、性知識が全くなかった刃牙が「性行為と格闘の近似性」に気付き、梢江を「攻める」様子までしっかりと描かれています。刃牙が格闘家としてパワーアップする理由付けとしても、重要な場面です。
『バキ』20話は地上波で放送されていますが、刃牙たちの「初体験」に関しては、キスや行為後の場面はあるものの、さすがに行為中の描写はカットされました。当時のSNSでは、「残念だった」「深夜の放送帯でも無理か」「いや、あの『キスの断面図』のシーンや、首筋を舐める描写が放送されただけで凄い」「TVつけて刃牙と梢江の絡み見た時は衝撃だった」など、さまざまな意見が出ています。
■配信限定だからできた? 昭和の名作マンガの伝説のラスト
●外道ヤクザ・鮫島との戦い『いぬやしき』
『DEVILMAN crybaby』キービジュアル (C)Go Nagai-Devilman Crybaby Project
宇宙人が起こした事故によって「機械の身体」となってしまった、初老のサラリーマン・犬屋敷壱郎と、高校生・獅子神皓の活躍と苦悩、戦いが描かれた人気マンガ『いぬやしき』は、2017年にアニメ化されました。
獅子神による連続一家惨殺事件など、過激なエピソードが多い同作ですが、カットされたエピソードはあるものの、大部分は原作通りにアニメ化されています。なかでも、暴力団員・鮫島のエピソードが描かれたアニメ第4話「鮫島」は、深夜放送とはいえTVアニメとしてはギリギリの表現でした。
冒頭から鮫島は女性を薬漬けにして強姦し死亡させたり、サウナで反抗的な態度をとった男に口淫を強制させたりと、やりたい放題です。そして、たまたま街で見かけた女性・井上ふみのに目を付け、部下に車で拉致させて覚せい剤を投与。さらに、逃げ出したふみののアパートに押しかけ、恋人の悟を殺害する(後に犬屋敷が蘇生させる)など、凶行を重ねました。
この非道ぶりに、犬屋敷の怒りは爆発します。最終的に鮫島を含む暴力団員たちは、「自動モード」に入った犬屋敷の攻撃で眼球と頸椎を破壊され、これまでの悪事を悔いながら生きるよう宣告されていました。覚せい剤を使った強姦や車を使った拉致など、現実でも起きうるリアルな犯罪が描かれた衝撃的なエピソードでしたが、最後は勧善懲悪ものとして、スッキリする結末となっています。
●ヒロインが暴徒に惨殺される『DEVILMAN crybaby』
永井豪先生が1970年代に描いたマンガ『デビルマン』は、悪魔と人間、その中間に位置するデビルマンの戦いを通して、人間の醜さに踏み込んだ内容や衝撃的な展開でも知られる名作です。
しかし、『デビルマン』には、残虐な描写や性的な展開が多く、完全アニメ化は不可能だと思われていました。マンガの連載時、TVアニメが平行して放送されていますが、こちらは脚本家の辻真先さんが主に話を考えた「同一の基本設定の別の作品」のような位置づけで、1話完結でデビルマンの戦いを描いた「ヒーローもの」です。その後のOVA作品でも、原作の衝撃のラストはアニメ化されていません。
しかし、40年以上の時を経て2018年に湯浅政明監督、Netflix制作でアニメ化された『DEVILMAN crybaby』では、近代的にアレンジされキャラの設定変更もあったものの、多くのエピソードで原作を踏襲したうえ、モザイクなどもなく原作の結末までの物語が描かれたのです。
『DEVILMAN crybaby』は序盤の「サバト」の場面から、暴力描写や性描写が過激で、話題を呼びました。特に、主人公・不動明の幼馴染みで想い人だった牧村美樹および、彼女の家族に訪れる悲劇は「原作よりもエグイかも」とまで言われています。
そして、美樹が悪魔に煽動され暴徒と化した民衆に惨殺されるエピソードでは、彼女が陸上競技をやっているというオリジナル設定が活かされた改変があったのち、原作通り「燃やされる牧村家の前で美樹の生首や、明の仲間たちのバラバラにされた身体が串刺しにされて晒される」という、目を背けそうになるほどの描写が描かれました。同作は、その後の「人類滅亡」展開までしっかりと描いており、名作の新解釈のアニメ化作品として高い評価を受けています。
(SU_BU)
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