ジャンプアニメの凄すぎた「引き伸ばし」の工夫 「ゴールまでの旅路長すぎ」
マグミクス / 2023年6月15日 12時15分
![ジャンプアニメの凄すぎた「引き伸ばし」の工夫 「ゴールまでの旅路長すぎ」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_163387_0-small.jpg)
■もはや伝説と化した『ドラゴンボールZ』の引き延ばし演出
自由に制作できるオリジナルアニメに対して、「原作つき」アニメの抱える問題といえば、なんといっても「原作ストック問題」です。長期クールでの放送が主流だった往年の名作アニメでは、原作の話のストックが補充されるまでの時間しのぎに、独特の「引き延ばし工作」を行うことが一般的でした。
その「妙技」からは制作者たちの血のにじむような努力と、苦労がうかがい知れます。今回は「週刊少年ジャンプ」の大ヒット作から、代表的な例を振り返ります。
たとえば有名なのが、1989年4月から1996年1月にかけて放送された『ドラゴンボールZ』の引き延ばし演出です。まず同作は前回のあらすじから各話の物語が始まるのですが、あらすじだけで数分の尺を使うこともざらにありました。なかでも第67話「赤と青の光球! ジースとバータが悟空を襲う」では、3分近くも前回のあらすじを振り返っており、当時原作マンガも読みながらリアルタイムで見ていた世代は、かなりヤキモキさせられたのではないでしょうか。
他にも第95話で悟空が超サイヤ人化するために気を溜めるシーンは、マンガなら1コマで済むところをたっぷりと時間を使って描写されていました。「少しでも尺を稼げるならば稼がせてもらおう」という、制作側の涙ぐましい努力が伝わってきます。
また特に印象的だったのが、「フリーザ編」におけるいわゆる「伝説の5分間」です。アニメ第97話で、ナメック星の核を破壊したフリーザが「あと5分だ。あと5分もすればこのナメック星は大爆発を起こし、宇宙のチリとなる」と宣言するものの、実際に爆発したのはそれから9話先の第106話「ナメック星大爆発!! 宇宙に消えた悟空」でのことでした。
一連の場面は、原作で読んでも「5分以上経ってるな」と思ってしまいますが、アニメではより顕著です。フリーザの宣言から爆発までの間、回想シーンを頻繁に登場させたり、悟飯VSフリーザというアニメオリジナルの展開を加えたり……。さらには戦いの形勢が変わるたびにリアクションのカットを入れるなど、こうした努力の結果、実に3カ月ものエピソード延長に成功したそうです。
1983年よりアニメが放送された『キャプテン翼』もまた、『ドラゴンボールZ』に負けず劣らずの引き延ばし演出が見受けられます。ボールをパスされてから相手ゴールに辿り着くまでにドリブルを10分近く続ける場面も少なくなく、ようやくシュート体制に入ったかと思いきや、いきなり回想シーンへ突入したこともありました。
たとえば第35話「淳死なないで」では、フィールドの貴公子こと三杉淳が3分近くドリブルをしていましたが、相手ゴールは「地平線の向こう」にあるかのように遠く、三杉からは見えていませんでした。
また第81話「羽をもがれたフィールドの鷹」では「南葛中vs比良戸中」の激闘が描かれ、前半戦の中盤で比良戸中に3点目を決めるチャンスが舞い込みます。比良戸中の選手がひたすらドリブルやパスを重ね、ようやく相手ゴールにたどり着いたのは、ボールを手にしてからおよそ6分後のこと。さらにシュートを放ってからボールがゴールに入るまでも紆余曲折あり、トータル約10分にわたって比良戸中の攻撃が描かれていました。
こうした『キャプテン翼』の引き延ばし演出について、ネット上では「キャプ翼は地平線ができる広大なグラウンドで試合してるからしょうがない」「アニメのキャプテン翼は地平線からゴールが上がってくるからなぁ……」といった声が上がっています。
エピソードを膨らませるという意味でいえば、1984年から放送されたアニメ『北斗の拳』も負けてはいません。同作における最初の物語「サザンクロス編」は、原作だと第1話~第10話にあたるエピソードです。しかしこれがアニメ版になると、オリジナルの悪役などを大量に投下して全22話までにエピソードを膨らませています。
ちなみにそれでも原作に追いついてしまったのか、アニメ『北斗の拳』は5週連続で総集編を流したこともありました。第78話から第82話まで、ユリア以外の南斗六聖拳の5人をそれぞれ振り返る放送をした後、最終章にあたるラオウとの戦いの第4部(その後『北斗の拳2』がスタート)が始まっています。
当時はなかなか話が進まず、子供たちはヤキモキしていましたが、アニメが1期、2期と分割して放送されることが主流の今となっては、好きな作品を長く楽しめる「最大のファンサービス」だったと言えるかもしれません。
(ハララ書房)
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