昭和スポーツ漫画の「トンデモ描写」がありえないレベル 生死かけた球場バトルも
マグミクス / 2019年8月9日 18時10分
■『巨人の星』ですら「トンデモ度」は控えめ?
現実世界ではありえない表現に対して「あまりにマンガ的な」といわれることがありますが、マンガの世界では昔から「トンデモない表現」が少なからず見られます。なかでも昭和のスポーツマンガは「トンデモ描写」の宝庫といえるでしょう。
その代表的な作品といえば、1966年より「週刊少年マガジン」(講談社)で連載開始した『巨人の星』(梶原一騎原作/川崎のぼる画)がまず挙げられるのでしょうが、実は同作は、数ある昭和のスポーツマンガのなかでは比較的おとなしい表現といえます。
有名な「大リーグボール」にしても、魔送球を応用し、打者のバットに球を当てる「1号」、「足を高く上げると青い虫が飛び、青い葉にとまる」と言われた消える魔球の「2号」、強打者のスイングが起こす風圧でボールがバットをよける「3号」も、一応理屈としては通っています。
『巨人の星』以前の野球マンガでは、1961年の『ちかいの魔球』(福本和也原作/ちばてつや画)や、1963年の『黒い秘密兵器』(福本和也原作/一峰大ニ作画)ではさまざまな「魔球」が登場する「トンデモ描写」がみられます。
『ジャイアント台風 人間発電所編―ジャイアント馬場物語 』(松文館)
野球マンガ以外では、梶原一騎氏の漫画原作者としてのデビュー作であるプロレスマンガ『チャンピオン太(ふとし)』(梶原一騎原作/吉田竜夫画)や、ジャイアント馬場を主人公にした、『ジャイアント台風』(高森朝雄原作/辻なおき画)も、「トンデモ描写」のオンパレードです。実在の人物をマンガに登場させるという梶原の手法は『巨人の星』などでも見られますが、『ジャイアント台風』は、あくまで馬場本人が主役。それゆえ視覚的に感じる「トンデモ度」は、かなり高く感じられます。
例えば、力道山道場の「新人歓迎パーティー」では、ハチの巣が道場に投げ込まれ、馬場は全身をハチに刺されてしまうのですが、犯人の力道山は「その程度なら血液にハチのホルモンがまじって、からだにいいだろう」と豪快に笑うありさまです。
またフィリッツ・フォン・エリック戦を前にした馬場が、アイアンクロー対策として自らのアタマを地中に埋め、ジープで轢かせる特訓などは、まさに「トンデモ描写」です。
■後世に影響残す『アストロ球団』 野球の試合なのに死者も
『アストロ球団』第1巻(太田出版)
また、身体の限界を超えた「トンデモ描写」といえば、アラフォー、アラフィフ世代の方々が思い出すであろう『侍ジャイアンツ』(梶原一騎原作/井上コウ画)でしょう。主人公の番場蛮が繰り出す「ハイジャンプ魔球」や「エビゾリ・ハイジャンプ魔球」、「大回転魔球」や「分身魔球」は、もはや超人の域です。
そして「超人」といえば、1972年から「週刊少年ジャンプ」で連載された『アストロ球団』(遠崎史朗原作/中島徳博画)です。かの沢村栄治の魂を受け継いだ9人のアストロ超人(ラストのラストまで7人しか超人は集まりません)が「打倒アメリカ大リーグ」を掲げて、野球というよりもハチャメチャなバトルを繰り広げる同作品は、一度見ると忘れることのできないものです。
主人公の宇野球児(後の宇野球一)を中心に、まずはチームメイトとなる『アストロ超人』を集めることからこの物語はスタートしますが、阪急に入団済みだった明智球七、球八兄弟に至っては、巨漢の弟の球八が兄・球七をブン投げ、どんなホームランボールでもアウトにしてしまうという離れ業を見せます。
また、ヒットを打った打者が一塁へ行くことを阻止する、ビクトリー球団の「人間ナイアガラ」(ただの走塁妨害)も、なかなかインパクトのある「トンデモ描写」です。この『アストロ球団』の壮大すぎるバトル展開(野球の試合なのに死者が出ます)は、後に同じ「少年ジャンプ」連載の『リングにかけろ』(車田正美作)などへ受け継げれていくことになります。
現代のスポーツバトルマンガにもひけを取らない、昭和スポーツマンガの「トンデモ描写」ですが、何よりこの時代の作品には破天荒でハチャメチャな「熱さ」が多くの読者を楽しませていました。不可能を可能にする。そんな昭和のマンガならではの楽しさを、一度堪能してみてはいかがでしょうか?
(渡辺まこと)
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