「8文字以内」ナゼ? 『ガンダム』も…昭和アニメにあった「タイトルの縛り」とは
マグミクス / 2023年6月16日 6時25分
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■アニメの「タイトル」にまつわる裏話
『鉄腕アトム』『マジンガーZ』『宇宙戦艦ヤマト』 『機動戦士ガンダム』『となりのトトロ』『ドラゴンボール』『新世紀エヴァンゲリオン』『ワンピース』『鬼滅の刃』……日本の人気アニメーションには印象深いタイトルがさまざまあります。
こうしたタイトルは、物語の主人公の名前であることもあれば、作品内容を反映したものもあり、古今東西、はるか昔から創作物には当然のようにつけられていますよね。『ハムレット』しかり『徒然草』しかり、小説、マンガ、映画、絵画にだってタイトルはあります。
さて、この「タイトル」ですが、制作側も一所懸命考えているんだろうことくらいはご想像いただけるかとも思います。特に昭和時代の商業用TVアニメーションには、色々な制約がありました。
●8文字縛り
ある程度の年齢の方ならご存じでしょうが、新聞には、通称「ラテ欄」と呼ぶ、その日放送されるテレビ番組とラジオ番組のスケジュール表の掲載があります。この「ラテ欄」は、ひと目で一日分が把握できるよう、1ページに収まっているのですが、ということは、どうしたって掲載できる文字数は限られる、ということでもあります。
ラテ欄では時間帯によって使える行数に差があります。ゴールデンタイムの2時間ドラマなどとは違い、夕方に多かった30分番組のアニメは基本的に一行。その中で番組として使える文字数は9文字なのです。チャンネル数の多い首都圏などのラテ欄では、内容どころか当日放映の話数タイトルすら掲載がないことも当たり前でした。
そこで生まれたのが「タイトルの8文字以下縛り」です。9文字入るのに何故8文字かというと、新番組や最終回などでは「新」「終」という文字を入れる場所が必要だからです。もちろん、すべてのTVアニメーションが8文字だったわけではありませんが、改めて当時の作品を思い浮かべていただくと、この「8文字縛り」に当てはまるタイトルが多いことに気が付かれることと思います。
私が所属していた当時のサンライズ関連作品を考えても『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『聖戦士ダンバイン』『装甲騎兵ボトムズ』『重戦機エルガイム』『巨神ゴーグ』『機甲界ガリアン』『魔神英雄伝ワタル』……
「アレもアレも違うじゃないか!」と仰りたいあなた。お気持ちはよくわかります。当然、当時のサンライズ作品の中にも、この「しばり」には入らないものは複数あります。しかし、ラテ欄の狭い一行に全部スパッと入るタイトルは、その短さも相まってひと目で子供にも覚えてもらいやすいという利点があり、特に「まさゆき」とか「ゆうじ」「けんいち」なんていう、当時の視聴者の名前同様“カタマリ”の音としても認知しやすいので、企画段階ではつねに意識されていたはずです。
しかし時代が移り、特に英語圏から入ってくる「音」に耳慣れてくると様相も違ってきます。同時にTV番組の情報をラテ欄だけに頼る必要もなくなります。番組紹介雑誌やアニメ情報誌などの登場です。これで新聞とは比べものにならない情報が得られるようになり、文字数に対する感覚も緩くなればタイトルも変わってきます。
『銀河漂流 バイファム』『勇者エクスカイザー』『絶対無敵ライジンオー』『機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ)』『天空のエスカフローネ』『カウボーイビバップ』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』『TIGER & BUNNY』……時代はポンポン飛びますが、すべて英字のタイトルさえOKなのが今です。
●「ウ」に点々はダメ
今じゃあたりまえの「ヴ」。英文字の「V」の発音を表すカタカナとして使います。
以前「エヴァンゲリオン」を「エバ」と書いて友人に笑われたことがありますが、この「ヴ」も日本語表記として使えませんでした。だからこそ『バイファム』は「ヴァイファム」ではないのです。30年前にエヴァがあったら多分「エバンゲリオン」になっていたということです。
●ロボットには濁点
マジンガーもガンダムもボトムズもダンバインも、その名前には濁点「゛」がついています。
どんなに制作側がハイティーンや社会人にもと考えようが、アニメのメインターゲットは子供。スポンサーは玩具メーカーであり、菓子メーカー。だからロボットは「強い」でなくてはダメなのです。
濁点のつく音を日本人は生理的に「強さ」に結びつけます。そのため、あのころのロボット名には「ガ・ダ・ザ・グ・ゼ・ド」などの音が必須でした。ガンダムもザクもグフもドムもアッガイもゲルググもみぃんな濁音入りです (当然例外もあります) 。
●肩タイトル必須
「肩タイトル」とは『機動戦士ガンダム』の「機動戦士」の部分です。そのガンダムなるものが、何なのかをおぼろ気に知らせて興味を持ってもらうという誘いのようなもの。
「機って字があるから、多分メカだぞ」「戦士っていうんだから戦うんだよな」
この「チラリ情報」も大事なアピールになるのです。さらに、これをつけて一連にすると商標も取りやすくなります。
タイトルもけっこう苦労して考えていたということが解っていただけたかと思います。このほかにも大人の事情で、本当はコレにしたかったのにこっちになっちゃいました、なんて名前もそこそこあったりします。そんな話もできたら面白いでしょうかね。
※本文の一部を修正しました。(2023.6.16 21:40)
(風間洋(河原よしえ))
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