少年の心を打ち砕いた、ファミコン誌の「ウソ技」と『水晶の龍』の記憶
マグミクス / 2019年8月14日 18時10分
■時代は「裏技ブーム」、雑誌は貴重な情報源だった
ファミコン全盛時代に話題となった「裏技」という言葉をご存知でしょうか。これは説明書にはないコマンドや、バグを利用したさまざまな現象のことで、ゲームの楽しみ方のひとつとして当時の子供たちは大いに熱中しました。
有名な裏技としては、KOMAMIのシューティングゲーム『グラディウス』のパワーアップコマンド「上上下下左右左右BA」があり、「コナミコマンド」と名付けられてさまざまなゲームに実装されています。筆者がこのコマンドを知ってから35年ほど経ちますが、今でも裏技と言えば真っ先に思い出すほど、子供たちには浸透していました。
当時、裏技に関する情報はもっぱら雑誌や攻略本といった書籍や、友達同士の口コミによって広まっていました。今では信じられないかもしれませんが、ファミコンブームの際には多くのファミコン情報誌が創刊されていました。子供のお小遣いでは、何千円もする高価なカセットにはなかなか手が届きません。しかし雑誌ならどうにか手が届きます。インターネットが無い時代、ファミコン情報誌は子供たちにとって、貴重な情報源としてもてはやされたのです。
とはいえ子供たちも、全ての雑誌を購入することはできません。各誌はさまざまな特集を組んだり独自のコンテンツを掲載したりと知恵を絞っていましたが、なかでも裏技は子供たちの興味を引くための重要な要素となっていました。
裏技で特に有名だったのが、徳間書店から1985年に創刊された『ファミリーコンピュータMagazine』(以下、ファミマガ)です。ファミマガでは裏技は「ウル技(うるテク)」と呼ばれており、1号あたり50個、多い時には100個もの「ウル技」が掲載されていました。
たまたま筆者が持っているゲームのウル技が掲載されたときには、大喜びで再現していたのをよく覚えています。『ギャラクシアン』の隠し音楽モードで「シバの女王」という曲を初めて聞いたのは筆者だけではないでしょう。
■「ウル技」にひとつだけ混じっていた、問題の「ウソ技」
2016年、復刻小型ゲーム機「ニンテンドークラシックミニ」の発売を記念し、「ファミマガ」が当時の雰囲気のままムックとして復刻。「ウル技」の特集も掲載(徳間書店)
しかしながらこの「ウル技」、なぜか毎回嘘が仕込まれていて「ウソ技(ウソテク)」と呼ばれていました。技によっては子供たちの間で結構ウケていたものもありましたが、なかには筆者が今でも許せないウソ技もありました。
それが、今でも「ウソ技」の代名詞として語り継がれている、『水晶の龍』の「シンシアの野球拳」です。
筆者も引っかかりました。
本当に悔しかったです。
さて、『水晶の龍』とは、1986年にスクウェア(現・スクウェア・エニックス)から発売された、ファミリーコンピュータ・ディスクシステム用のアドベンチャーゲームです。
TVCMに当時のゲームとしては画期的なアニメーションを使用しており、ヒロインのシンシアが「助けてー!」と叫びながら彼方へと姿を消す印象的なものでした。
ある日、友達が妙にコソコソとしているのでどうしたのか聞いてみたところ、最新号のファミマガを見せてくれました。そこにはなんと、シンシアの服を脱がすという「ウル技」が掲載されていたのです!
当時の若く純情な少年は好奇心の赴くままにディスクの「書き換え」に向かい、速攻で『水晶の龍』を入手し、プレイを開始しました(編集部注:店頭の専用機器で手持ちのディスクを別のゲームに書き換えできるサービス。通常500円とカセットより安価にゲームを入手できた)。
しばらくゲームを続けて、どうにか該当のシーンに到達し、すぐに掲載されていた技を試し始めました。シンシアが出てきたシーンで「手を見る!」コマンドを選択すると、アイコンがグー・チョキ・パーになるはず!
しかし、何度も試しますがアイコンが出ません! あきらめずに試しましたが、いくらやってもアイコンが変化することがありませんでした。2~3日同じことを繰り返し、「もしかしたらこれはウソ技じゃ……」と思い諦めてからしばらく経って、次号のファミマガを見て……怒りに震えました。
やはり、「ウソ技」だったのです。
なんでも、この「ウソ技」が掲載された直後に、『水晶の龍』の売り上げは飛躍的に伸びたそうです。筆者と同じように純情を弄ばれた少年たちが、当時沢山いたのですね……。
(早川清一朗)
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