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特撮作品にも影響? 『ゲゲゲの鬼太郎』が定着させた「妖怪」たちのイメージ

マグミクス / 2019年8月25日 8時40分

特撮作品にも影響? 『ゲゲゲの鬼太郎』が定着させた「妖怪」たちのイメージ

■『ゲゲゲの鬼太郎』が定着させた「妖怪」のイメージ

 みなさんは「妖怪」と聞いてどのようなものをイメージしますか? 鬼や河童、天狗といったものでしょうか。それとも「一反もめん」や「ぬりかべ」など『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪たちでしょうか。

 日本人が現在抱いている「妖怪」のイメージは、漫画家・水木しげるさんの影響を大きく受けたものです。今回は特撮作品に登場する妖怪を手掛かりに、水木しげるさんから受けた影響の大きさを考えたいと思います。

 水木しげるさんは1965年頃に貸本漫画から少年漫画誌に活動の中心を移し、『墓場の鬼太郎』や『悪魔くん』を発表。『悪魔くん』(1966~1967)はテレビドラマ化され、『墓場の鬼太郎』は『ゲゲゲの鬼太郎』(1968~1969)の題でアニメ化され人気を博しました。

『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪は2つのパターンに大きく分けられます。1つは民俗学者・柳田國男さんの『妖怪談義』で紹介された妖怪に、水木しげるさんが姿を与えたものです。子泣きじじぃ、一反もめん、砂かけばばあ、ぬりかべといった鬼太郎の味方たちはこのパターンです。それまでは伝承が残るのみで、水木さんの手によってはじめて姿を与えられました。

 もうひとつは江戸時代に活躍した画家・鳥山石燕が描いた妖怪たちです。石燕は『画図百鬼夜行』から始まる4部作の画集で、200点以上の妖怪画を遺しています。ぬらりひょんや雲外鏡、おとろし(おどろおどろ)など、鬼太郎の敵として登場する妖怪の多くは石燕の画をベースとしているのです。

 1968年にアニメ化されて以来、『ゲゲゲの鬼太郎』は6度もアニメ化されています。第1作目(1968~1969)と第2作目(1971~1972)は継続した作品ですが、第3作目(1985~1988)からは作品ごとに世界観が一新され、過去に使用した原作もアレンジを加えながら再び映像化されています。

 つまり、登場する敵妖怪が各作品で重複しているのです。このように長年にわたる『ゲゲゲの鬼太郎』のメディア化によって「妖怪」のイメージが刷り込まれ、大衆に定着していったのはまず間違いないでしょう。

■『鬼太郎』から離れる努力や独自のアレンジも?

敵キャラが妖怪で統一されていた『忍者戦隊カクレンジャー』 Vol.1 [DVD](東映)

 特撮作品に登場する「妖怪」は、水木しげるさんが登場するまで鬼や河童、化け猫など民話などに登場する妖怪をベースにしたものがほとんどでした。例えば『ウルトラマン』(1966~1967)に登場する怪獣ウーは雪女、『ウルトラセブン』(1967~1968)に登場する怪獣テペトは河童をもとにしています。

『ゲゲゲの鬼太郎』が発表されて以降、民話や怪談でおなじみの妖怪の以外のものも増えていきました。例えば『超神ビビューン』(1976~1977)には「ぬりかべ」を基としたであろうカベヌリや、石燕の妖怪画を基にした震々(ぶるぶる)などが登場します。

 1990年代以降、スーパー戦隊シリーズでも敵を妖怪で統一した作品が3作品製作されています。その最初の作品が『忍者戦隊カクレンジャー』(1994~1995)です。

『カクレンジャー』に登場する妖怪は「ブロンクスの妖怪」というコンセプトでデザインされました。レンガ壁に落書きがされたぬりかべ、牛車ではなくイエローキャブの朧車(おぼろぐるま)など、アメリカンな妖怪たちが登場します。

 続いて『侍戦隊シンケンジャー』(2009~2010)に登場する妖怪、外道衆のアヤカシたちは、「妖怪の伝承の元となった存在」と設定されています。そのため子泣きじじぃやぬりかべなど既存の名称が用いられず、オリジナルの名称が与えられました。

 またスーパー戦隊シリーズではありませんが『仮面ライダー響鬼』(2005~2006)でも、敵キャラに妖怪が採用されています。妖怪の名称は「イッタンモメン」など従来のものを用いていますが、姿は複数の動物の特徴を合わせたキメラのようなものになっています。

『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015~2016)では従来のイメージに近い姿の妖怪たちが登場しています。『ニンニンジャー』の妖怪たちはヤカンや冷蔵庫など器物に取り憑いたという設定です。

 この設定は、器物が長い歳月を経て妖怪化した「付喪神(つくもがみ)」を思わせると同時に、無生物が敵のモチーフに選ばれることの多いスーパー戦隊シリーズらしいアレンジとも言えるでしょう。

 このように、各作品で水木しげるさんのイメージから離れる工夫や、独自のアレンジがなされています。しかし『カクレンジャー』以降の作品で敵モチーフに選ばれた妖怪は、やはり『ゲゲゲの鬼太郎』に登場したものがほとんどなのです。私たちが今日さまざまなメディアで目にする「妖怪」たちは、確実に水木しげるさんと『ゲゲゲの鬼太郎』から大きな影響を受けているのです。

(森谷秀)

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