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「翔べ!ガンダム」の歌詞、本編と微妙に合っていないのはナゼ? 「実は連邦軍視点ではなかった」説

マグミクス / 2023年7月7日 6時25分

「翔べ!ガンダム」の歌詞、本編と微妙に合っていないのはナゼ? 「実は連邦軍視点ではなかった」説

■複雑な事情があって生まれた主題歌

『機動戦士ガンダム』は、初めての「リアルロボットアニメ」と呼ばれることもあり、作りこまれた設定と、数多く発表された作品群がお互いを補完する、大河ドラマ的な重厚さを持つ作品です。

 それだけに、放映当時から1970年代ロボットアニメらしい、主役ロボット名を連呼する主題歌「翔べ!ガンダム」はギャップを感じました。「銀河へ向って 翔べよ ガンダム」と、銀河系をバックにガンダムとホワイトベースが飛行したり、「蘇るガンダム」と、まるでスーパーロボットのようなフレーズが使われたりと、作品内容と微妙に合っていない歌詞なのです。

「翔べ!ガンダム」を作詞されたのは、井荻麟氏ですが、これは監督を務めた富野由悠季氏のペンネームですから「作詞家が作品内容を理解していない」ことは考えられません。

 こうなったのは、富野監督によるスポンサー企業との攻防戦が理由のようです。「ガンダム」がSF路線の今までにない作品になるということは、スポンサーに対してすらも明かされていませんでした。ですから当時の児童向け書籍では「悪のジオン星人」などと書かれたものが存在したり、シャアが遊園地をザクで攻撃する絵本があったりもします。

 この流れで、主題歌も「既存のロボットアニメ的」な内容にしたということでしょう。

 そうした歌詞なので「連邦軍のプロパガンダとして作られた歌詞」などとネットで評されることもあります。でも筆者は、ある時、この歌詞「連邦軍の白い悪魔・ガンダムを恐れるジオン軍の兵士」視点で読むと、かなり納得できるのでは? と気づきました。

 曲の冒頭で「燃え上がれ」を3回連呼し、ガンダム、と続きますが、ジオン軍兵士からすれば、ガンダムは間違いなく爆発炎上してほしい存在でしょう。

 そして「君よ 走れ」「まだ 怒りに燃える 闘志があるなら 巨大な敵を 討てよ」と続きます。戦友がガンダムに倒されて、怒りに燃えている兵士に対して「君よ走れ! 巨大な敵であるガンダムを討つんだ」と激励している歌詞と考えれば、これも理解できます。

 そして「正義の怒りを ぶつけろ ガンダム」ですが、ジオン軍の戦争目的が正義だということは、ジオン軍を率いるギレン総帥自らが発言しています。これは「正義の怒りをぶつける対象がガンダム」なのだと、総帥が訴えている歌詞だと考えられます。

 2番の「立ち上がれ ガンダム」とは「ガンダムに向かって立ち上がれ」と、ジオン軍兵士を鼓舞しているという意味にとれます。「君よ 叫べ」「まだ 絶望に沈む 悲しみあるなら 恐怖をはらって 行けよ」とは、どうやっても撃墜できない「白い悪魔」への根深い恐怖と、戦友を失った悲しみの叫び、そして、それでも戦う勇気を説いているのでしょう。

 ジオン兵にとって、続く歌詞の「渦巻く血潮を燃や」すに相応しい強敵がガンダムですから、ここまで(筆者の主観的意見としては)納得しかありません。

 3番の冒頭「蘇える ガンダム」ですが、後発作品で次々に「新しいガンダム」が追加されている現在の視点から見れば理解できます。奇蹟的にガンダムを撃破できたとしても、後発作品の新しいガンダムが投入されてくる、悪夢の心境を描いているということです。

 続く「君よ 掴め」とは「勝利の栄光を、君に」という意味でしょう。そして「まだ 愛にふるえる 心があるなら」「平和を求めて 翔べよ」というのは、故郷で自分を待つ家族のために、戦争を終わらせたい兵士が、強敵ガンダムを倒せば講和に近づくとして、奮起しようとする、切なる誓いを込めているのだと考えられます。

 さらに「銀河へ向って 翔べよ ガンダム」というのは、どうやっても倒せないガンダムが「どこか銀河の果てにでも行ってくれよ!」という強い願いが込められていると考えるなら、ジオン軍兵士の心を歌いきっているように思えるのです。

 というわけで、筆者はこの歌を歌うとき、ジオン兵士の脳内解釈となり、変なテンションになっています。

 えぇ、もちろん「そんな意味の歌詞である訳がない!」とおっしゃる方も多いでしょう。ですが、こうした解釈も出来うる世界観の厚みが、『ガンダム』という作品の魅力だと思うのです。読者の皆さんはこのOP主題歌歌詞をどう感じておられますか?

(安藤昌季)

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