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「マンガ選び」の道しるべ、4つの「漫画賞」の歩き方 「違い」を知れば見つけやすくなる?

マグミクス / 2023年7月9日 19時10分

「マンガ選び」の道しるべ、4つの「漫画賞」の歩き方 「違い」を知れば見つけやすくなる?

■読者が投票する漫画賞は、トレンドを反映

 一般読者の投票で受賞作品が決まる「次にくるマンガ大賞2023」の投票締切が2023年7月10日(月)に迫っています。いまや漫画はかつてない全盛の時代で、紙と電子を合わせた2022年のコミック市場(推定販売金額)は、4年連続で過去最高額更新の6,770 億円(出版科学研究所「出版月報」2023.2.24)です。媒体も、雑誌のほかにマンガサイトやアプリ、SNSなど多岐にわたり、もはや把握できない数の作品が日々発表されています。

 情報量が多すぎるゆえに、注目作品をランキング形式で審査する漫画賞を参考に、読むマンガを決める方も多いと思います。しかし、ひと口に漫画賞と言っても、対象とする作品や選考者、審査基準は賞によって異なります。そこで今回は、比較的最近創設された4つの漫画賞、「電子コミック大賞」「次に来るマンガ大賞」「このマンガがすごい!」、そして「マンガ大賞」について、それぞれの選考過程や選考者、最近の受賞作を紹介します。

●出版社推しの作品がわかる「電子コミック大賞」

 最初に紹介するのは、2018年に創設された「電子コミック大賞」、正確には「コミックシーモア みんなが選ぶ電子コミック大賞」です。

 電子書店「コミックシーモア」が主催し「出版社の想いと読者の皆さまとの出会いの奇跡」と銘打たれたこの賞は、まず出版社側が推薦する作品を、「男性部門」「女性部門」「異世界コミック部門」「ラノベ部門」「BL部門」「TL部門」の全6部門のどれかにエントリーします。
そして一般読者がそれぞれの部門のエントリー作品のなかから「次にヒットする」と思った作品に投票します(ひとりあたり1部門につき1回、最大6部門)。その票数で各部門賞と部門をこえた大賞を決めるシステムです。ちなみに2023年2月に発表された同賞では、出版社56社から110の作品がエントリーしていました。

 投票は特設サイトを通じて行われ、コミックシーモアの会員以外も参加できます。賞の候補となるのが、すでに話題になっていたり、ヒットしている作品ではなく、出版社側が「もっと読んで欲しい」と推薦する作品ということで、いち早く未来のヒット作を見つけたい人にお薦めの賞と言えるかもしれません。

 また細かなジャンル分けも同賞の特徴で、「異世界部門」や「BL部門」「TL部門」など、他の賞で触れられることの少ないジャンルのお薦め作品を探すのに役立ちそうです。人気作がマンガされるケースが多く、読者層がマンガと近接している「ライトノベル」をフォローしているのも大きな特徴です。

※「電子コミック大賞」過去の受賞作
電子コミック大賞2023『鬼の花嫁』(原作:クレハ 作画:富樫じゅん スターツ出版)
電子コミック大賞2022『只野工業高校の日常』(小賀ちさと 集英社)
電子コミック大賞2021『十億のアレ。?吉原いちの花魁?』(宇月あい ソルマーレ編集部)

●読者が候補作をエントリーし投票する「次にくるマンガ大賞」

 次に紹介するのは、2014年に創設されたWebマンガサービス「ニコニコ漫画」と情報誌「ダ・ヴィンチ」共催の「次にくるマンガ大賞」です。紙媒体をメインに連載している「コミックス部門」と、Web媒体をメインにしている「Webマンガ部門」の2部門で、対象となるのは候補作のエントリー(登録)開始時点で、その前年1月1日以降に連載開始した作品、もしくは紙媒体のコミックス既刊が5巻以内の作品で、R18作品は対象外です。

 選考方法ですが、まず一般読者が「次にくる」と思う作品を同賞の公式サイトにエントリーします。コミックス部門、Webマンガ部門、それぞれ最大5作品のエントリーが可能で、今年5月に「次にくるマンガ大賞2023」にエントリーされた作品は5,170を数えます。

 そのなかから特に人気の高かったコミックス部門40作品、Webマンガ部門60作品を公式サイト上でノミネート作品として発表し、さらに一般読者の投票によって各部門の大賞を決めていきます。「すべてのマンガファンによる推薦と投票を通して“次にブレイクしそうなマンガ”を発掘し紹介することを目的」として創設されただけあって、エントリー作品から大賞決定まで基本的に一般読者が主体となって選考が進み、候補作も投票者も多い一般的な好みが反映されやすい賞といえます。

 そのためか授賞作、ノミネート作品ともにメジャーなマンガ雑誌やWebサービス・アプリで展開し、まさにブレイク寸前の空気を漂わせている作品が多く、実際にアニメ化された受賞作品も多いです。その一方で、昨年はSNSが初出となった『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』がWebマンガ部門で大賞を受賞したように、時流に聡(さと)い点も大きな特徴です。

※過去の受賞作
次にくるマンガ大賞2022コミックス部門『メダリスト』(つるまいかだ 講談社)
次にくるマンガ大賞2022Webマンガ部門『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』(地主)
次にくるマンガ大賞2021コミックス部門『【推しの子】』(原作:赤坂アカ 作画:横槍メンゴ 集英社)
次にくるマンガ大賞2021Webマンガ部門『怪獣8号』(松本直也 集英社)
次にくるマンガ大賞2020コミックス部門『アンデッドアンラック』(戸塚慶文 集英社)
次にくるマンガ大賞2020Webマンガ部門『僕の心のヤバイやつ』(桜井のりお 秋田書店)

■「選考員」を知ることにもメリットが?

2023年3月に発表された「マンガ大賞2023」

●選考者の「好み」に注目したい「このマンガがすごい!」

「このマンガがすごい!」は、宝島社が発刊している同名の書籍で行われているマンガランキングです。2005年より毎年12月、同書の発売をもって「オトコ編」「オンナ編」、それぞれのランキングが発表されています。

ランキングの対象となる作品は、同書発売の前年10月1日から発行年9月30日までに単行本が発売されたマンガで、選考するのは書店員、編集者、評論家や大学のマンガ研究会、各界におけるマンガの識者などで、投票は「オトコ編」「オンナ編」のどちらか(選考者が得意な分野)に限られています。

 選考方法は、選考者が対象作品のなかから最もお薦めしたい5作品をランク付けし、1位10点、2位9点、3位8点、4位7点、5位6点として投票します(選考者によって持ち得点が変わることもあります)。その集計によって「オトコ編」「オンナ編」の順位を決定します(補完的なランキングとして「書店員が選ぶ~」「雑誌編集者が選ぶ~」など、選考者別のランキングもあり)。

 マンガに接することの多い職種の選考員が多いためか、読者が主体の「電子コミック大賞」「次にくるマンガ大賞」に比べて、青年誌や女性誌など年長者向けの作品もランキングに多く見られるのが特徴です。また連載期間や既刊の巻数に制限がないため『ONE PIECE』や『ゴールデンカムイ』などの定番ヒット作のランクインも見られます。

 何よりこのランキングの大きな特徴は、元来マンガの紹介本であることから、ノミネートしている作品についての解説や、選考者によるコメントといった周辺情報が充実していることです。

 特に、選考者のコメントやプロフィールに注目すると、自分のマンガ選びの道しるべが見つかるかも知れません。たとえば、自分と好みが似ている選考者がいれば、その選考者が他におすすめしている作品を読んでみるのもいいでしょう。「このマンガがすごい!」は、作品の順位だけでなく、マンガ選びの「ガイド役」を探すこともできる、お得なランキングです。

※過去の受賞作
このマンガがすごい!2023オトコ編 第1位『光が死んだ夏』(モクモクれんKADOKAWA)
このマンガがすごい!2023オンナ編 第1位『天幕のジャードゥーガル』(トマトスープ、秋田書店)
このマンガがすごい!2022オトコ編 第1位『ルックバック』(藤本タツキ 集英社)
このマンガがすごい!2022オンナ編 第1位『海が走るエンドロール』(たらちねジョン 秋田書店)
このマンガがすごい!2021オトコ編 第1位『チェーンソーマン』(藤本タツキ 集英社)
このマンガがすごい!2021オンナ編 第1位『女の園の星』(和山やま 祥伝社)

●愛読書探しに適した「マンガ大賞」

 最後に紹介する「マンガ大賞」は、「面白いと思ったマンガを、その時、誰かに薦めたい!」と銘打ち、ニッポン放送のアナウンサー吉田尚記氏を発起人として、2008年に創設された漫画賞です。

 運営するマンガ大賞実行委員会は、書店員をはじめとするマンガ好きの有志の団体で、同賞の選考員は、実行委員がマンガに対する熱を感じた人に直接声をかけて選定しているそうです。

 興味深いのは、その選考員の選定にあたり、漫画家や編集者など、賞の選考によって直接利害関係が発生する人を除外しているという点です。実行委員会の活動をはじめ、同賞の運営は、すべて無報酬の持ち出しで行なわれているとのことで、選考における公正性を重んじる賞といえるでしょう。

 選考対象は、賞開催の前年1月1日から12月31日に出版された単行本のうち、最大巻数が8巻までの作品(電子書籍含む)です。

 まず一次選考として各選考員が人にぜひ薦めたいと思う5作品をコメントを付けて選出します。それを集計した得票数10位までの作品が、二次選考のノミネート作品として選出されます。

 選考員は二次選考の10作品をすべて読んだ上で、上位3作品を選んで投票。1位3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイントとして、全選考員の結果を集計して1位になったものが「マンガ大賞」受賞となります。

 賞の傾向としては、厳選されたマンガ好きが選考員となっているからか、大賞、ノミネート作品ともに青年誌や月刊誌など年長のマンガファン向けの作品や、作り込まれた作品、読み応えのある作品が多く見られます。

 巻数制限はありますが、発表が月刊ペースのため複数年にわたり同賞にエントリーされる作品が散見され、かつてエントリーされた作品の作者の新作が取り上げられるなど、その年度の流行を追いかけるというよりも、地力のある作品や漫画家さんを長く応援している賞……といった印象です。

 今年3月に「マンガ大賞2023」を受賞した『これ描いて死ね』の作者・とよ田みのる先生も、前作の『金剛寺さんは面倒臭い』が2019年にノミネートされています。じっくりと愛読できる作品や漫画家さんを探すのに適している賞ではないでしょうか。

※過去の受賞作
マンガ大賞2023『これ描いて死ね』(とよ田みのる 小学館)
マンガ大賞2022『ダーウィン事変』(うめざわしゅん 講談社)
マンガ大賞2021『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人 作画:アベツカサ 小学館)

(倉田雅弘)

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