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『ガンダム』打ち切り後に原点回帰…サンライズを支えた「王道」スーパーロボットアニメ2作

マグミクス / 2023年7月17日 6時10分

『ガンダム』打ち切り後に原点回帰…サンライズを支えた「王道」スーパーロボットアニメ2作

■『ガンダム』とはある意味真逆?

 最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が盛況だった「ガンダム」シリーズですが、1979年放送の第1作『機動戦士ガンダム』は視聴率に苦戦して打ち切りとなったのは有名な話でしょう。再放送でガンダムがブレイクし映画化されるまで、同作品の制作会社・株式会社サンライズ(当時の日本サンライズ)を支えた2作品をご存知でしょうか。リアル路線の『ガンダム』とは違い、子供からの人気を集めた『無敵ロボ トライダーG7』と『最強ロボ ダイオージャ』です。

●おもちゃの売上が何より重要だった、昭和ロボットアニメの制作事情

 誤解のないように前置きしておきますが、第1作『機動戦士ガンダム』は株式会社日本サンライズのオリジナル作品第1作1978年『無敵超人ザンボット3』の続編的作品としてファンの間では放送前から評判になっており、放送後はさらに評価が上がりました。

 ところが、視聴者層は中高生以上と年齢層が高いうえに、スポンサーや放送局サイドの評価は低く、制作側には逆風が吹いていたのです。

 1979年頃、ビデオデッキがまだ普及していない時代は、コンテンツそのものが売上になりません。アニメの制作会社が利益を出すには『宇宙戦艦ヤマト』のように映画化できるくらいの大ヒット作を作り出す必要がありました。しかし、ハイエンドな作品を作れば年齢層が高くなります。

 スポンサーのおもちゃ会社は、おもちゃの売上に貢献しない『ガンダム』を打ち切り、おもちゃの売上につながる低年齢層向けの作品を望んでいたようです。そのため、次の作品は難しいガンダムとは真逆路線で、子供が喜ぶロボットアニメの王道路線が作られることになりました。

■主人公は社長で小学生?

勇ましい風貌で立つトライダーG7を立体化した『超合金魂 GX-66R 無敵ロボ トライダーG7 約240mm ABS&PVC&ダイキャスト製 塗装済み可動フィギュア』 (バンダイスピリッツ)

『トライダーG7』は『ガンダム』や『ザンボット3』のような過酷な現実を描くのとは真逆の、子供がロボットに対して描く憧れを具現化した作品ともいえるでしょう。

 主人公竹尾ワッ太は野球が好きで勉強が苦手な小学生です。しかし、父から受け継いだ宇宙の何でも屋「竹尾ゼネラルカンパニー」の二代目社長として、社員の雇用を守るためと宇宙征服を目論むガバール星が送り込むメカロボットを倒すために、トライダーG7に乗り込んで宇宙に飛び出します。

 他の社員たちは基本的にトライダーを格納するトライダー・シャトルで後方支援をします。命がけでメカロボットと対峙するのはトライダーにいるワッ太のみです。今なら完全に児童虐待ですが、どんな危機にあっても、無敵ロボの名前の通りトライダーG7が最後には完全勝利をおさめます。地球の運命はワッ太ひとりとトライダーG7に委ねられているという子供の万能感を満たしながら、ガンダムとは真逆の明るく楽しい作品でした。

 任務のために授業中に抜け出せるワッ太を、番組を見ていた全国の小学生がうらやましがりました。また、敵ロボットと戦いながら、会社の売上や利益を気にしなければなりません。ロボットアニメでありながらリアルな経済的な部分を描いており、ある意味ガンダム以上にリアルな作品でした。創業して数年の日本サンライズの厳しい経済事情も重ねられていたのかもしれません。この系統の作品がシリーズ化されていたら、また違った作品群が生まれていたことでしょう。

■水戸黄門モチーフのロボットアニメ

ダイオージャを立体化した『MODEROID 最強ロボ ダイオージャ ダイオージャ ノンスケール 組み立て式プラスチックモデル』(グッドスマイルカンパニー)

『トライダーG7』の成功を受けて制作された王道路線の第2弾『最強ロボ ダイオージャ』は、勧善懲悪で予定調和の権化とも言える時代劇『水戸黄門』をそのままロボットアニメにトレースしたものでした。

「江戸」をモチーフとしたイプロン星系エドン国に、老人の水戸黄門はミト王子、黄門様は副将軍(実際には副将軍という役職は存在しません)でしたが、ミト王子は次代国王候補の直系王族という設定です。お供の家来の名前はなんとスケさん(スケード)、カクさん(カークス)と本家と同じでした。

 トライダーG7は1体だけで戦いますが、ミト王子・エースレッダー、スケさん・アオイダー、カクさん・コバルターの3体のロボットが合体してダイオージャになります。1体のときには、胸にクローバーマークがついていますが、これはメインスポンサーがおもちゃ会社のクローバーだったからでしょう。合体すると胸のマークが御紋の三つ葉葵風の三つ葉のクローバーになります。

 本家と違うのはミト王子が正体を明かした後です。本家では御紋を見ると、悪人はひれ伏していたのに、ダイオージャでは敵は居直って攻撃してきます。そこをダイオージャが武器・雷鳴剣を使った「電光雷鳴崩し」で倒すのです。最後の立ち回りは1978年に始まった『暴れん坊将軍』の要素が少し入っていました。

 女忍者風の家来シノブがいることも『暴れん坊将軍』の要素が入っています。本家『水戸黄門』で由美かおる演じるくノ一かげろうお銀が登場するのは1986年から。本家を先取りする要素もあったのです。

 ちなみに2021年に放送されたアニメ『月が導く異世界道中』も水戸黄門をモチーフにしており、エンディングテーマも水戸黄門の主題歌「ああ人生に涙あり」でした。その40年も前に水戸黄門をモチーフにしたアニメがあったということです。

●予定調和路線は2作品だけ、サンライズロボットアニメはリアル路線に舵を切った

 好評だった2作品ですが、1982年の『戦闘メカ ザブングル』では、再び富野由悠季監督作品のリアル路線に戻ります。ガンダムは再評価され1981年から映画3部作が公開。続いて、1980年テレビ東京で放送された『伝説巨神イデオン』も同じように打ち切りになったものの、映画化が決定しています。

 2作が放送されている2年の間に、リアルロボットアニメの評価はすっかり逆転していました。そこからは1981年『太陽の牙ダグラム』、1983年『聖戦士ダンバイン』など、リアルロボットアニメが続々と制作されるようになります。

『トライダーG7』と『ダイオージャ』は、リアル路線が潮流になる手前の過渡期に生まれた希有な作品でした。曲を聴いただけで、瞬時にアニメの設定がわかってしまうアニメ主題歌史上最高にわかりやすい主題歌と共に、リアルタイムで見ていた子供達の記憶にいつまでも残る作品です。

※本文の一部を修正しました。(2023.7.21 17:05)

(LUIS FIELD)

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