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『ガンダム』宇宙世紀に「名家」が存在するのはナゼ? ザビ家ほか特権階級が生まれた背景

マグミクス / 2023年7月16日 7時10分

『ガンダム』宇宙世紀に「名家」が存在するのはナゼ? ザビ家ほか特権階級が生まれた背景

■宇宙移民の「ハードルの高さ」がカギ?

 アニメ『機動戦士ガンダム』には「名家」と呼ばれる「特別な権力を持っている家」が存在します。

 サイド3を統治しているジオン公国はデギン・ソド・ザビ「公王」によって統治されていますし、デギンが権力を奪ったダイクン家の令嬢アルテイシア(セイラ)は、ランバ・ラルに「姫様」と呼ばれています。

 ザビ家で一年戦争を唯一生き残ったミネバも「姫様」と呼ばれていました。他にも『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場したアイナは、サハリン家に仕えるノリスから「アイナ様」と敬意を向けられていました。

 他にも、ハマーン・カーンのカーン家、グレミー・トトのトト家、リュース・クランゲルのクランゲル家、セシリー・フェアチャイルド(ベラ・ロナ)のロナ家など、明らかに家柄への敬意を向けられている登場人物が登場します。

 つまり、宇宙世紀には明確な身分制度が存在するということです。宇宙世紀0058年のジオン共和国独立まで、民主主義国家の地球連邦が単独統治していたはずの宇宙世紀で、どうしてこのような特権階級が存在するのでしょうか。

 筆者は「宇宙移民が始まった理由」ではないかと思います。人口爆発で地球環境が悪化した結果、増えすぎた人類を強制的に宇宙移民させるために成立したのが「地球連邦」です。

 さて、いかに地球の危機とは言え、「最新テクノロジーで作られたスペースコロニーに移住してくれ」と言われて、喜ぶ人はどれほどいたでしょうか。

 想像するに、故郷や自国への愛着、これまでしてきた生業の継続、コロニー生活への安全性への不安など、どう考えても、前向きになれない人だらけでしょう。

 少し考えても、側壁の向こうは宇宙で、隕石でもぶつかったらどうなるのか。テロでもあれば、コロニーは皆殺しではないのか、コロニーのインフラが故障したら、人工重力や食糧プラントが維持できなくなり、大変なことになるのではないか、といった疑問が想定できます。

 こうした疑問がよせられる中では、よほど強力なプロパガンダや、宇宙移民するメリットの提示が必要だったと思われます。地球連邦は当然、社会的影響力が大きい人物からの宇宙移民を働きかけたことでしょう。

 例えば、IT企業経営者のような「最新の社会を提示している人物」、著名YouTuberのような「インフルエンサー」、教祖の指示で信者が動いてくれることを期待できる宗教団体、宇宙開発で利益が期待できる巨大企業と、その従業員一家、コロニーを維持するための宇宙軍(隕石やテロ対策のために存在したはず)、上記の人口を地盤とした政治家などです。

 こうした「宇宙移民のリーダーになり得る人物」を、連邦政府は持ち上げ、かつコロニー統治が進めやすいように、税制や政治制度での便宜も図ったのでしょう。それが「名家」と呼ばれる特権階級の構築につながったと考えられます。

 また宇宙世紀は「新たなコロニー建設や、月面開発、外惑星探査など、新しい活躍場所が続々と増えて行った新時代」ですから、その中で「時代を開拓した英雄」と持ち上げられる人物も多く出たはずです。そうした人物が、新たに建設したコロニーの「名家」となったのでしょう。

 なお、コロニーは1基に1000万人以上が住む施設ですが、それぞれ独立して存在するので、適正な宇宙移民に対する社会実験にも適しています。コロニーを統治する層は、宇宙移民で生じた問題に対してリーダーシップを発揮し、社会環境の向上を進めていくわけですが「最初の条件が同じ」だけに「誰が有能な統治者なのか」「どの方法論が優れていたのか」が明白になりやすく、個人への評価(賛美)が行われやすいという素地があります。

 また、いつの時期までかは不明ですが、地球連邦は宇宙移民者に対して、連邦議会への参政権を認めていなかったという資料もあります。これが本当なら、宇宙移民者に参政権を与えて「宇宙移民をやめて、地球に戻る決議」などの、宇宙移民に反する政策を可決されては困るからでしょう。

 そうなると、宇宙移民者の政治参加は「個別のコロニー内」「コロニーが所属するサイド内」が重視されるようになりますから、ますます「連邦政府に特権を与えられた層」の意向・権限で左右される部分が大きくなります。年数を経るほどコロニー内に「独自文化」も生まれてくるでしょうし、それも「名家の支配」と結びつくべきものと考えられます。

 極端な例としては、ヒッピーが住みついて、個人をリーダーとして近代文明を否定する独自文化を築いた、『機動戦士ムーンガンダム』の舞台・「ムーンムーン」ですが、ジオン・ズム・ダイクンの「ジオニズム」なども「偉大なダイクンが」という文脈で語られることが多く、大なり小なり「名家による支配」は行われていたと考える次第です。

 だからこそ「名家」であるダイクン家やザビ家の統治を前提とした、サイド3の支配体制を「後から入れ替える」のは難しいことであり、ダイクンが独立宣言をしても「軍事力ですぐに潰す」などがしづらい社会になっていたものと考えられるわけです(また、宇宙移民は「棄民政策」と言われることもあり、連邦政府が一段下に見ていた可能性もあります)。

 中立を宣言したサイド6を舞台とした『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』を見ても、コロニー内の「自治」は独立国に近いものです。マンガ『機動戦士ガンダム MS BOYS―ボクたちのジオン独立戦争―』に、サイド6大統領ランク・キプロードンの娘である、アストリッドが登場しますが、その扱われ方は「一国の姫」のようでした。

 社会を動かす「特権階級」やヒロイン属性としての「お姫様」は、作品を理解しやすいものとしてくれますが、SFであるガンダムが『スター・ウォーズ』と同様に、こうした要素を取り入れたことは、作品の魅力を大きく向上させるガジェットになったと考える次第です。

(安藤昌季)

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