任天堂、新作『ゼルダ』大ヒットも先行きに不安? マリオ新作ラッシュの背景は
マグミクス / 2023年7月21日 6時10分
■大作の成功と引き換えに生まれる、数年のブランク
時代ごとにユニークな提案を繰り返し、ユーザーに愛されるゲーム機とゲームソフトを作り続けてきた任天堂。ここ数年はNintendo Switch(以下、Switch)が好調に推移し、業界の最前線で譲らぬ活躍を見せています。
直近の決算(2023年3月期)では減収減益となりましたが、これはSwitchの展開が安定期に入った影響も無視できません。買い替えや2台目といった需要を別にすれば、ゲーム機は普及すればするほど、未所持の人が少なくなります。つまり潜在的な新規ユーザーが減るため、どこかで減少に転じるのは当たり前。普及が広まったと考えれば、決して悪い話ばかりではありません。
ハード売上高比率は前年比で下がっているものの、任天堂が発売元となる自社ソフトの売上高比率やデジタル売上高比率は増加しています。また自社ソフトウェアの販売本数は、Switch発売以来3番目という高水準を保っています。発売から6年が経過したゲーム機とは思えないほどの躍進ぶりです。
任天堂が好調な理由は、ユーザーに支持される人気作が数多くあるため。特に、任天堂が手がけるゲームはSwitchでしか遊べないため、ここが非常に大きな強みになります。
例えば、2023年5月にリリースされた『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、発売からわずか3日間で1000万本(世界累計販売本数)もの大ヒットを記録しました。これだけでも、任天堂がどれだけ順調か、想像に難くありません。
任天堂は、『ゼルダの伝説』などの自社IPをふんだんに活用し、素晴らしい成果を遂げました。ですが、現在の好調を支えているIPの逐次投入は、今後の展開に不安を感じさせる一面があることも否定しきれません。
●人気シリーズの完全新作は、年単位の開発がもはや必然
ゲームの開発にかかる時間は、その内容や開発の規模、工数などによって大きく異なり、一概にどれくらいかかるとは言えません。しかし、ゲーム機の性能向上に合わせて開発規模も増加の一途を辿(たど)っており、人気ゲームの完全新作だと数年がかりのプロジェクトになることもしばしば。
注力した分だけ売れるとは限りませんが、世界的な大ヒットを遂げたゲームを振り返ると、時間や労力をかけた大作が多いのも事実です。『グランド・セフト・オートV』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』などはゲーム史に残るほどの大ヒット作ですし、先ほど名前を挙げた『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』もまさにそのひとつです。
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は発売直後から早くも見事な成果を遂げましたが、この成功に辿(たど)り着くために費やした期間は計り知れません。
本作が「『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編」として初めて発表されたのは、2019年6月のこと。この時点から数えても約4年後の発売となりましたが、開発自体はそれ以前から始まっていたはず。それだけの年月をかけ、ようやく「3日間で1000万本」に漕ぎつけられたのです。
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』から『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』までの間、『ゼルダの伝説』シリーズからはいくつものゲームが出ました。しかし、過去作のSwitch版や他社IPとのコラボ作品など、いずれもメイン級の完全新作ではありません。
開発者にせよ開発費にせよリソースの上限は決まっており、メイン級の完全新作をいくつも並行して制作するのは稀です。むしろ開発規模の増大から、注力してひとつの作品を作り上げる傾向は強まっているとも言えます。
こうした事情から、人気IPにおけるメイン級の新作は、一度リリースしたらしばらく間が空くのを避けられません。こうした通例に則って考えると、メイン級の『ゼルダの伝説』完全新作は早くても数年後、もしかしたらSwitchの後継機向けに出るのかもしれません。
●IP投入による好調ぶりが、空白期への懸念も生む
売りとなるゲームが『ゼルダの伝説』しかなければ、数年間の空白は大打撃でしょう。しかし任天堂は、人気の高いIPをいくつも抱えています。それぞれでメインとなる新作のリリース時期を見計らい、発売日を被らせないことで、常に話題作を提供する状況を維持。そして年間を通して安定した業績を成し遂げ、現在の好調を支える一因としてきました。
ですが、近年における任天堂IPの動きを見ると、華々しい活躍が特に続いたため、その反動から多くのIPが空白期に入る恐れがあります。果たしてどんな人気シリーズが、いつ頃活躍し、空白期が訪れる可能性を持つのか。ここからは、任天堂の各IPを振り返ります。
■完全新作ラッシュにより、弾切れが近づく?
要望は大きいものの、新たな『スマブラ』の動きは全くの不明
●『ゼルダの伝説』以外の人気IPも、近年活躍を見せたものばかり
Switchの人気対戦ゲームとしてまず名前が上がるのは、『スプラトゥーン3』でしょう。シリーズのデビューはWii Uですが、『2』と『3』はいずれもSwitchに登場しました。今も多くの人が『3』で対戦に興じていますが、だからこそ続編の話はまだ早計でしょう。そもそも、『3』の発売は2022年9月。まだ1年も経っていないので、完全新作はかなり先になりそうです。
ジャンルは異なりますが、対戦ゲームならば『大乱闘スマッシュブラザーズ』(以下、スマブラ)シリーズも負けていません。最新作の『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』は3109万本も売り上げており、Switchを代表する1本として存在感を放っています。
『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』は2018年12月発売なので、ここだけを見ればそろそろ続編の話が出てもおかしくはありません。しかし、有料追加コンテンツを2021年10月まで作り続けており、実質的にはここまでを開発期間と捉える方が適切でしょう。
また『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』は、過去作のプレイアブルキャラが全員参戦し、ファン待望の新ファイターも多数登場しています。完成度も含めて「集大成」とも呼べる作品に仕上がっており、ここで区切りがついたとしても納得できるほどの出来栄えです。
そして『スマブラ』は、ソラの桜井政博さんの指揮で作られてきたシリーズです。桜井さん抜きで完全新作を作るのは、まず考えられません。この点については、任天堂元社長の故・岩田聡さんも、対談「社長が訊く『大乱闘スマッシュブラザーズX』」のなかで触れています。
『スマブラ』の完全新作を作るには、まず任天堂がGOサインを出し、さらに桜井さんがディレクションを担当しなければ、現実的ではありません。桜井さんは任天堂の社員ではないため、都合や見通しが立たなければ断ることも十分あり得ます。不確定要素が多いだけに、近いうちに新たな発表があるとは考えにくいのが現状です。
一方で『ポケットモンスター』は、比較的コンスタントにゲームがリリースされているシリーズです。しかしリメイクや関連作を除いたメインシリーズとなると、近年は『ポケモン ソード・シールド』(2019年11月発売)と『ポケモン スカーレット・バイオレット』(2022年11月)に絞られます。
最新作の『ポケモン スカーレット・バイオレット』の発売からはまだ1年も経っておらず、DLC「ゼロの秘宝」の配信はこれから。少なくともこのDLC展開が終わるまでは、メインシリーズの完全新作は出ないものと思われます。また、近年の作品ではロード時間の長さや処理落ちなどに不満が集まっており、「次の新作は次世代機で」と望む声も多々あります。この願いが叶うとすれば、次作はさらに先となることでしょう。
『ファイアーエムブレム』や『ゼノブレイド』は近年動きが活発ですが、『ファイアーエムブレム』は『エンゲージ』が今年の1月に出たばかり。前作『風花雪月』からの発売間隔を踏まえると、次の完全新作は4年後になるかもしれません。また『ゼノブレイド』も、昨年7月に最新作の『3』を出したばかり。こちらも、近々での動きは望み薄です。
また、今月下旬には『ピクミン4』が発売されますし、『メトロイドプライム4』は開発が仕切り直しされて以降、音沙汰のない状態が続いています。
●人気IPの攻勢が続いた任天堂、しかしその手札はまだ続く
人気のある任天堂IPの多くが、ここ1年ほどでメイン級の新作を出しており、次回作までしばらく間隔が空くものと思われます。そして『スマブラ』など一部タイトルの次回作については、現在何の材料もありません。ここまで好調が続いたからこそ、これからの任天堂に空白期が訪れてしまう可能性があります。
ですが、メイン級のタイトルが相次いだのは事実とはいえ、空白に怯えるのはまだ早計です。まずは、任天堂の顔とも言うべく『マリオ』が当面のラインナップを力強く支えます。10月20日に発売される『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』は、横スクロールアクションとしては11年ぶりのシリーズ最新作です。常に新たな体験を提供するメインシリーズなので、今回のどんな進化を見せてくれるのか楽しみです。
加えて、往年の名作『スーパーマリオRPG』がリメイクされ、11月17日にリリースされます。当時はドット絵だったあの世界を3Dで再現し、懐かしくも新たな装いで登場します。当時遊んだ人はもちろん、気になっていたけど手を出し損ねた若年層にもピッタリな作品になることでしょう。
そして、ピーチ姫が主役の完全新作タイトルや、装いを新たとする『ルイージマンション2』も開発中です。この2作品はいずれも、2024年に発売予定です。
また、Switchの現役期間は平均より長く続いていますが、だからこそ遠くないうちに次世代機が発表される可能性も決して低くありません。その際、ナンバリングの動きがしばらく止まっている『マリオカート』の最新作が次世代機と同時に出れば、ユーザー移行の導線も十分です。
このほかにも、最新作発売から3年が経過した『どうぶつの森』や、シリーズ展開が今も活発な『星のカービィ』、逆にしばらく音沙汰のない『スターフォックス』など、ファンの期待が集まるタイトルを任天堂はまだいくつも抱えています。
順調な任天堂に空白期が訪れてしまうのか。それとも『マリオ』などが力強く支えて乗り越えるのか。はたまた、次世代機の電撃発表が訪れるのか。2023年後期~2024年における任天堂の動きに、どうぞご注目ください。
(臥待)
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