『マジンガーZ』「ジェットスクランダー」TV初登場から半世紀 紅の翼はロボットアニメに影響
マグミクス / 2023年7月22日 12時10分
![『マジンガーZ』「ジェットスクランダー」TV初登場から半世紀 紅の翼はロボットアニメに影響](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_171395_0-small.jpg)
■登場までの物語展開も秀逸だった
本日7月22日は、半世紀前の1973年に『マジンガーZ』第34話「紅い稲妻 空とぶマジンガー」で、新兵器「ジェットスクランダー」がTVで初登場した日です。後続のロボットアニメ作品にも大きな影響を与えた新兵器登場について振り返ってみましょう。
スクランダーは空を飛べないマジンガーZのために開発された追加装備です。このスクランダーと合体することでマジンガーZは大空を自在に飛ぶことができるようになりました。合体するときの掛け声「スクランダークロス」は、ドッキングした時にマジンガーZとスクランダーのシルエットが十字架を思わせるところからつけられたそうです。
マジンガーZが空を飛べないという弱点は、たびたび作中でもクローズアップされていました。スクランダー登場まで「空飛ぶ機械獣」との苦戦を何度か描き、ついにマジンガーZが空を飛ぶというカタルシスにつなげたわけです。
ゆえにこの間のドラマは秀逸でした。空を飛べないマジンガーZがどうやって空飛ぶ機械獣に勝利するのか……? それを見守る当時の子供たちは毎週TVの前でハラハラすることになるわけです。時にはアフロダイAから発射されたロケットを両腕でつかんで飛ぶという荒業も見せてくれました。
このマジンガーZが空を飛ぶというイベントは、作品最初の大きなイベントだったと思います。それまでにもマジンガーZに水中移動用のロケットが取り付けられる、あしゅら男爵が機械獣に乗り込む……といった展開がありましたが、それらと比べるとスクランダー登場の盛り上がりは大きなものでした。
同時期に劇場用作品『マジンガーZ対デビルマン』(1973年7月18日公開)でもTVに先駆けてスクランダーが披露されています。あえて劇場とTVのふたつの作品で取り上げている点を踏まえれば、スクランダー登場はこの夏の『マジンガーZ』最大のイベントだったと言えるでしょう。
当時を振り返ってみればこの夏が『マジンガーZ』という作品の人気を決定づけることになった時期だとも言えるかもしれません。なぜなら『マジンガーZ』二大人気玩具のひとつ「ジャンボマシンダー」が発売されたのもこの時期でした。ちなみに「超合金」は、開発の遅れから冬まで待つことになります。
そういった点でもスクランダー登場は『マジンガーZ』のヒットを決定づけたイベントでした。そして、その影響力は後の作品たちに多大な影響を与えることになります。
■後の作品群にも大きな影響
発進するジェットスクランダーのシーンは大いに盛り上がった。画像は「DX超合金魂マジンガーZ対応 ジェットスクランダーセット」(バンダイ)
ジェットスクランダーと聞くと、筆者はまず専用歌「空飛ぶマジンガーZ」が真っ先に思い浮かびます。水木一郎さんの「3,2,1,ゼロ!発射!!」というカウントダウンを思わせるイントロがワクワクする曲でした。その知名度の高さは、劇場版のエンディング曲やオープニング曲にも使われたことで立証されています。
このスクランダーの先駆的なところは、マジンガーZのシルエット自体を大きく変えた点にあるかもしれません。たとえば同じように後付けで飛行能力を持った鉄人28号はロケットを背中に取り付けただけで大きくデザインを変えませんでした。マジンガーZは背中に飛行機のような翼を付けてシルエットを変え、腹部に菱形状の装甲を加えた点が大きく異なります。
マジンガーZのスクランダーのパターンは、後のロボットアニメなどでも物語途中に現れた強敵への対抗策として取り入れられることになりました。しかし多くは内蔵火器の強化にとどまり、パワーアップパーツという点で受け継がれた作品はそれほど多くありません。
あえて言うならば、後の追加装甲によるフルアーマー化の先駆的な部分があります。このコンセプトがいわゆる2号ロボとの「グレート合体」につながるわけですから、スクランダーがどれだけ画期的な発明で、後発の巨大ロボット作品に影響を与えたかがわかるでしょう。
さらに、このスクランダーが現在のように、オモチャメーカーから出されたアイデアでないことも特筆する点です。あくまでも作品内のドラマを盛り上げるための小道具でした。ところがスクランダーの人気は絶大で、通常の姿のマジンガーZよりもスクランダー装備の方がカッコいいと思う子供の方が多かったと思います。
そういったところから、前述のジャンボマシンダーでも追加商品としてスクランダーが発売されました。超合金も同様で、初期はスクランダーなしの状態で販売されたものを、すぐにスクランダーを付属して販売します。
このスクランダーのような作品途中から登場した装備のオモチャ化というのが当たり前になっていくのは、玩具メーカーが商品展開によって作品のストーリーに口を挟むようになって以降の話です。この当時は、ようやく玩具メーカーがスポンサーの中心になっていく過渡期でした。
もっともそういった点ではオモチャ先行で販売されたジャンボマシンダー用装備「重戦車Z」が、スポンサーのポピーからの要請でアニメに登場したことがあります。当時はスポンサーと製作の連携はこの程度のものでした。
そういった点では、現在のように玩具メーカーからの作品への影響力はそれほど強くなく、作品製作スタッフの自由度が高かった時代ゆえに生まれたのがスクランダーだったのでしょう。そして、何よりも子供心にカッコいいと思わせるデザインだったことが最大のポイントだったと思います。
(加々美利治)
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