アシタカもサンも登場しない絵本版『もののけ姫』 違いが「混乱」を生んだ?
マグミクス / 2023年7月25日 7時10分
![アシタカもサンも登場しない絵本版『もののけ姫』 違いが「混乱」を生んだ?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_171699_0-small.jpg)
■糸井重里さんがキャッチコピーに4か月も費やした理由とは
2023年7月7日から『金曜ロードショー』では、最新作『君たちはどう生きるか』の公開を記念してスタジオジブリ作品を3週連続で放送されました。第1夜は『風の谷のナウシカ』、第2夜は『コクリコ坂から』、そして第3夜となる7月21日には、1997年に公開された大ヒット映画『もののけ姫』が放送され、SNSなどで再び盛り上がりを見せました。
同作といえば、死の呪いをかけられた少年・アシタカや、犬神に育てられた少女・サンを中心に、人間と森の神々による戦いを描いた物語です。宮崎駿監督が構想に16年、制作に3年をかけた渾身の大作であり、その裏には映画版の初期プロットとなった1冊の絵本が存在したことをご存じでしょうか。
ただ、映画版とはまったく異なる内容で、絵本版に描かれたのは、悪霊に取りつかれた武士の娘と「もののけ」が冒険を繰り広げていく物語でした。父を元の人格に戻すためにもののけと三の姫が旅立ち、やがてふたりの間に愛が芽生えていくストーリーとなっています。
アシタカやサンといった映画おなじみのキャラクターは一切登場しないばかりか、 別作品かと思われるほど設定が異なっているため、両作品を見比べると、その差に驚かされることでしょう。
そもそも『もののけ姫』は1980年に宮崎監督がアニメ企画案として構想したもので、そのまま絵本の内容が描かれる予定でした。しかし、売り込みが失敗に終わってしまったため基本設定を破棄し、十数年の時を経て我々の知る映画版が作りあげられたのです。
ちなみに絵本版のあとがきには、「1980年は、自分のその後の十年間を決定づける年になりました。当時所属していたスタジオ(テレコム・アニメーションフィルム)の仕事がなくて、手あき時間にまかせて種々描きためました」「その時はひとつも実らなかったのですが、結局それ以降の作品の源は、みなその時に書き散らした絵の中にあります」とつづられています。
たしかに絵本版の作中には、ほかのジブリ作品を連想させる描写がいくつか見受けられます。たとえば「もののけ」は大山猫という設定で、デザインは『となりのトトロ』のネコバスにそっくりです。さらに終盤の舞台となる城の外観と内部は、『千と千尋の神隠し』で描かれた湯屋「油屋」を彷彿とさせる構造になっていました。
ちなみに作中に登場する「三の姫」(三番目の姫)と呼ばれる娘は、姿こそ似ていませんが、映画版に登場したサンの由来になっているそうです。
かくして『もののけ姫』は宮崎監督が悩みに悩みぬいた末に生まれ変わりました。しかし、映画版と異なる内容の絵本版が存在したことで、ある人物を困らせることになります。それは、映画のキャッチコピーを担当した糸井重里さんです。
2001年に発売されたドキュメンタリー作品『「もののけ姫」はこうして生まれた。』によると、糸井さんは「おそろしいか。愛しいか。」「おまえには、オレがいる。」「惚れたぞ。」「ひたむきとけなげのスペクタクル。」を始めとした初期案を50本ほど考えたといいます。
しかし、ことごとくボツにされてしまい、正式なキャッチコピーである「生きろ。」へたどり着くまでに約4カ月もの時間を費やしました。ここまで時間がかかってしまった原因は 、糸井さんがキャッチコピーを考える段階で『もののけ姫』が完成に至っておらず、物語の結末も伝えられていなかったことにありました。
手がかりが少ないなかで糸井さんが参考にしたものが、絵本版『もののけ姫』だったのです。 しかし、まったく別のストーリーに生まれ変わっているわけですから、糸井さんが苦戦を強いられてしまうのも無理はありません。
ちなみに「ひたむきとけなげのスペクタクル。」という初期案は絵本の帯コピーをいじって作ったもので、実際の帯コピーには「ひたむきで、一生懸命なもののけとけなげで一途な姫の愛の物語」とつづられていました。 そうした背景を知ったうえで改めて『もののけ姫』を観ると、ひと味もふた味も違って見えてくるのではないでしょうか。
(ハララ書房)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「ユーフォニアム / オーボエ スタジオジブリ作品集「君たちはどう生きるか」まで」 2ヶ月連続発売!
@Press / 2024年7月9日 12時0分
-
「R指定じゃなくて大丈夫?」 24年上半期の「トラウマ級」アニメ映画たち
マグミクス / 2024年7月8日 19時5分
-
広島で初お披露目!「金曜ロードショーとジブリ展」大型タペストリー
広島テレビ ニュース / 2024年7月1日 19時31分
-
【ネタバレ】ほぼ原作通りの映画『ルックバック』が独自に描いた「その先」とは
マグミクス / 2024年6月30日 20時25分
-
声が魅力的だと思う「50代女性俳優」ランキング! 3位「松嶋菜々子」を抑えたTOP2は?
オールアバウト / 2024年6月29日 8時5分
ランキング
-
1山口達也さんのイケメン長男 所属グループが活動休止「手に負えない状況…辞めるしかなくなってしまった」
スポニチアネックス / 2024年7月23日 12時42分
-
2声優・小原乃梨子さん死去 テレ朝、NHKなど各局が追悼 「ドラえもん」「未来少年コナン」名作多数
スポニチアネックス / 2024年7月23日 16時14分
-
3皆藤愛子 さんまからプロポーズ受けた人数聞かれ苦笑い「真剣だったかは分からないです」
スポニチアネックス / 2024年7月23日 20時44分
-
4「酒だよ、酒!」中森明菜が叫んだ、復活ライブの“お土産”が10万円で転売される大荒れ模様
週刊女性PRIME / 2024年7月23日 19時0分
-
5片岡愛之助「最近飲みに行った芸能人」が凄すぎた! 超人気女優が「うちの旦那も行っていいですか?」
スポニチアネックス / 2024年7月23日 20時47分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)